舞台『未来少年コナン』出演、宮尾俊太郎インタビュー

ワールドレポート/東京

インタビュー=上村 奈巳恵

宮崎駿氏が監督に抜擢され1978年に放映されたテレビアニメーションシリーズ「未来少年コナン」が舞台化される。
(2024年5月28日~6月16日 東京芸術劇場 プレイハウス、6月28日~30日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)
躍動感あふれる描写や、世界観など、その後の宮崎駿作品へと受け継がれている要素がぎっしり詰まった名作として知られこの作品は、地震や津波などの自然災害や戦争、エネルギー問題などが物語に取り入れられており、現代を生きる人にも刺さるテーマを冒険活劇として表現し、長きにわたり多くのファンに支持されている。
舞台化を手がけるインバル・ピントはダンサーとしてバットシェバ舞踊団に在籍。90年から振付の活動を始め、93年にダンスカンパニーを創設し、数々の作品を創作。日本ではミュージカル『100万回生きたねこ』や村上春樹原作の『ねじまき鳥クロニクル』などを手掛け、その唯一無二の空間演出で観客を魅了し続けている。またマギー・マランの息子でパフォーマーであり多彩なクリエイターであるダビッド・マンブッフが共に演出を担う。
ゴールデンウィークには東京ミッドタウン日比谷の屋外スペースで日比谷フェスティバルの一環として舞台『未来少年コナン』出演キャストによるトークショーが開催され、そこへ登壇したバレエダンサー・俳優の宮尾俊太郎からイベント直前に話を伺うことができた。

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左より)加藤清史郎、成河、門脇 麦、宮尾俊太郎、今井朋彦、椎名桔平

──舞台『未来少年コナン』ですが、インバル・ピントさん、ダビッド・マンブッフさんのW演出でどの様なステージになるのかとても楽しみですが、アニメ作品はご覧になったことはありますか。

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© Chacott DANCE CUBE

宮尾 僕は子供の頃に再放送を見ていて、昔から大好きな作品です。

──この作品が舞台化され、宮尾さんご自身が出演されることが決まった時のお気持ちを教えてください。

宮尾 まずは宮崎駿さんという名前が大きかったです。宮崎さんの作品を見て育ってきて大好きだったので、宮崎さんの作品ということに喜びがありました。

──ダイス役は海の男・船長ということですが、今までミュージカルなどで演じられてきた役どころや宮尾さんご自身の印象とも違うイメージの役だと思いますが、この役の見どころや、役作りで何か工夫されている点などはありますか。

宮尾 無骨さもあり、なかなか難しいかなとは思いますが、人間味のあるキャラクターなのでやりがいがありますね。キャラクターがすごく立っている役をやる時って、雰囲気だけでなぞってしまうと中身のない人に見えてしまうので、それをいかに現実に存在する人物にできるか、というのが役作りのポイントになってくると思います。アニメ作品なのでなかなか現実離れした面もありますが、それを実際にいる人間にしていくということかな。

──インバル・ピントさんの作品は独特な世界観を持っていますが、振り付けや舞台の作り方はどの様に行われているのでしょうか。

宮尾 今までは音楽や美術、舞踊とお芝居などが結構同時に進行していったと聞いていたのですが、今回はまず全体から作っていて、結構早いペースなのではないかと思います。
というのも、この話は四年前から構想があったということですし、恐らくコロナ禍を挟んでいるのでその間にアイデアなども構築されていったのだと思います。今は演者もアイデアを出しながら作り上げていっています。

──ダンスのジャンルとしてはコンテンポラリー寄りになりますか。

宮尾 そうですね、古典的な形式のあるものではないです。

──クラシックの舞台に出演される時と、体づくりや稽古の仕方などに違いはありますか。

宮尾 バーレッスンはしていないのです(笑)。それよりもやっぱり、僕の場合は"声"。歌もあるので声にフォーカスしています。存在のあり方としては、やはり古典をやってきた人間だからこそ勝手に出てきてしまう"異常さ"というのがあるじゃないですか(笑)。そこは存在感としてうまく活かしつつやろうと思っています。

──ミュージカル「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」(2018年)で、初めて宮尾さんが歌われているのを聞いて驚きました。

宮尾 「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」は僕の歌のデビュー作ですね。

──その後もミュージカルに出演されて、声を出すお仕事はもう慣れましたか。

宮尾 まあ、少しずつではありますけれど慣れてきたと思います。

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© Chacott DANCE CUBE

──今回出演されるダンサーの方達は主にコンテンポラリーのダンサーで、自身で振り付けもされる方が多いと思いますが、ご一緒してみての感想は何かありますか。

宮尾 皆さん僕と近い世代で、ある程度のキャリアを過ごしてきているダンサー達なので、ある意味酸いも甘いも知っている。その中で、やっぱり身体の利くこの世代の内にできることに全力で向き合っていると思います。
良い世代なんじゃないですかね。経験もあって、アイデアもあって、身体もまだ動いてっていう一番良い時期で皆さん出演されているんじゃないかなと思います。

──バレエ団で作品を作るのとは全然違いますか。

宮尾 そうですね、ただインバルさんが舞踊団にいらした方なので、進行の仕方とかはバレエ団とか舞踊団っぽいな、と思います。

──ミュージカルなどの舞台を経験されてみて、バレエダンサーの可能性を感じたりということはありますか。

宮尾 クラシックの基礎をやっておいて損になることはないですが、海外などへ行くと既に高いレベルでストリートダンスからコンテやバレエも踊れて、芝居もできて歌も歌える人たちがいます。バレエは必要な要素として、訓練としてももちろん良いですが、ただ一つに特化してしまうとどうかな。僕も歌ったりセリフを言ったりする時に、声を出すためのポジションじゃないものがずっと構築されてきているから、最初はやっぱり出なかったです。全く出すということができない、という状態に陥るので、根付いた意識を変えるのは大変な作業でした。

──今年の「ビリー・エリオット」は4人全員バレエ少年ですね。

宮尾 K Ballet の後輩の子供が出演する時代ですよ!感慨深いですよね。

──宮尾さんは今も「ハリー・ポッター」に出演されていますし、これまでにもミュージカルや映像作品にも数多く出演されてきました。
様々なジャンルに次々挑戦されている印象がありますが、その活力の源は何なのでしょうか。

宮尾 いや、基本的に社会不適合者なので(笑)、何かそういうものが救いなんです。そういうものでなければ取り組めないし、生きるためには何かしないといけないじゃないですか。

──色々なことをやってみて良かった、大変だったことなどお聞かせください。

宮尾 役一つの出会いとか、何か新しいことを学べたという感覚にすごく喜びがあります。

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日比谷フェスティバルより 加藤清史郎、宮尾俊太郎、成河 © Chacott DANCE CUBE

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宮尾俊太郎、成河 © Chacott DANCE CUBE

──今後チャレンジしていきたいことや、なりたい自分像といったものがあれば教えてください。

宮尾 うーん・・・。農家かな。

──農家ですか!?

宮尾 うん、やってみたい。農業というか、何かを育ててということとか。あとは家族を持つとか、やったことがないことというとその辺になってくるんですよね。やっぱり色んなことをやってきて40代に入ってくると、一人で自分のためにだけ頑張るのだとモチベーションが苦しくなってくる時がありますね、感じる孤独感があるので。もちろんお客様のためというのはあるので、そこは大切に演じていきたいですね。

──最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

宮尾 世界で活躍するインバル・ピントさんと、そこにフランス人のダビッド・マンブッフさんが一緒に入られて、今回の舞台を作っています。彼女の持つ感性や、ちょっと違うかもしれませんが誤解を恐れずに言うなら「星の王子様」の絵本のようなといいますか、彼女の持つデザインや美術が非常に美しくて。インバルさんの空間作りというのも僕は哲学的なものも感じるのですが、狭い中に奥行きを作るんですね。そういう日本ではなかなか見られない様な色使いというものに対して、これだけ違う畑出身の演者や音楽の方が集まってきて何か面白いものをやろうとしている。その骨格になるストーリーが、宮崎駿さんがまさかの47年前に書いた物語がどんぴしゃで、地震が来て地面が割れて天変地異があって、人間が人間らしくいきいきと生きるってどういうこと、というのが現代にまさにぴったりですごく考えさせられます。考えさせられながらエンターテイメントも味わいつつ、インバルさんの美術や雰囲気、阿部海太郎さんの音楽で想像力をかきたてられる。そういったものが詰まっている作品になると思うので、僕たちもまだどう仕上がるの分からないですが、それをぜひ目撃しに来ていただきたいです。

──舞台『未来少年コナン』でのご活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

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左より)宮尾俊太郎、加藤清史郎、成河 © Chacott DANCE CUBE

舞台『未来少年コナン』

<東京公演>
期間:2024年5月28日(火)~6月16日(日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
<大阪公演>
期間:2024年6月28日(金)~30日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

詳細 https://www.chacott-jp.com/news/stage/information/detail035785.html

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