ギャリー・エイヴィスを迎えて行われたロイヤル・バレエ来日公演&『シンデレラ』公開記念トークショー・レポート

ワールドレポート/東京

香月 圭 text by Kei Kazuki

英国ロイヤル・バレエでは、カンパニーの創設振付家フレデリック・アシュトン振付の名作『シンデレラ』が初演75周年を迎え、それを記念しておよそ10年ぶりの上演が行われた。日本では「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23」で6月16日(金)〜6月22日(木)に公開され、歴代のシネマシーズンの中でも最大のヒットを記録。これを祝して、一夜限りのアンコール上映が6月26日、TOHOシネマズ 日本橋で行われた。英国ロイヤル・バレエ団の日本公演のため来日中のギャリー・エイヴィス(シニア・レペティトゥール 兼 プリンシパル・キャラクター・アーティスト)が登場し、トークショーが行われた。

ギャリー・エイヴィス、トークショーにて

ギャリー・エイヴィス、トークショーにて

笑顔で登場したエイヴィスは「日本に戻ってきたことは個人としても英国ロイヤル・バレエ団としても嬉しいことです。特にコロナ禍で4年間のブランクがあったので、バレエを愛してくださっているお客様の笑顔に会えることが本当に嬉しいです」と喜びを隠しきれない様子で挨拶した。
6月16日(金)に公開され、今シーズンで最大のヒットとなった『シンデレラ』について「イギリスらしいと誰もが口をそろえるほど、我が国を象徴するような作品といえます。特筆すべき点としては"音楽性"と"フットワーク"だと考えています」とアシュトン作品の特徴を説明しながら、見どころについて述べた。義理の姉役を以前も演じたことがあるエイヴィスは、今回初めて妹役を演じたアクリ瑠嘉との共演について「瑠嘉はすぐに役にはまっていました。イマジネーションをフル活用して役作りに励み、自身で研究もして資料を熟読していたようです。また、私が演じた姉役を彼の父親が演じていた経験があるということで、父親から教えられた部分が多くあったのも、彼にとって大きな強みになったと思います。姉妹役ということでチームワークが大変重要ですが、実際に演じてみると、自分自身が妹を育てている感覚になるほどの強い姉妹関係を結べたと思います」と語り、アクリの役作りにおける熱意が経験豊富なベテランのエイヴィスをも唸らせるものだったことが伺い知れた。

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『シンデレラ』左よりアクリ瑠嘉、ワディム・ムンタギロフ、ギャリー・エイヴィス、マリアネラ・ヌニェス The Royal Ballet © 2023 Tristram Kenton

『シンデレラ』が10年ぶりの再演となり、ダンサーの多くがこの作品を演じるのが初めてという状況の下、今回、自身が演技指導も行ったことについて「『シンデレラ』は英国ロイヤル・バレエ団に入団して初めて参加した作品のひとつで、いつも心の中にある大切な作品です。自分が受け継いできた、英国ロイヤル・バレエ団の遺伝子の一部を継承していくことが使命だと思いました。その結果、アシュトンらしさを確実に表現することができ、全く新しいプロダクションを作り上げることができたと自負しています」と自信を覗かせた。
現在、英国ロイヤル・バレエ団の来日公演が開催中で、19世紀に活躍したロシアの文豪ツルゲーネフによる戯曲をもとにアシュトンが振付た後期の傑作『田園の出来事』にて、裕福な地主の妻であるヒロインのナターリヤに思慕を寄せるラキーチン役で出演したことについて「私にとって、そして英国ロイヤル・バレエ団にとっても特別な作品で、この演目を踊ることは大変光栄なことです。今回3組の主演キャストで臨みましたが、それぞれが家族のような関係性を築いていました」と話した。さらに自身のファンを多数抱える日本での公演については「日本に帰ってきてお客さんにお会いできるのも嬉しく、日本に来ると地球の反対側にいる家族に会いに来たような気持ちになります。英国ロイヤル・バレエ団の一員としてこれまで何度も来日していますが、K バレエ カンパニーで過ごした経験もありますので、その時に出会った人たちとは強い絆があると思っています。外国を訪れているというよりは、自分が大切にしている人たちの元に帰ってきたという気持ちです」と日本に対する特別な思いを語った。
さらに、次の英国ロイヤル・オペラ・ハウスのシネマシーズンの日本公開が正式に決定したことが発表された。バレエは『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』『マノン』『白鳥の湖』の4作品のラインナップとなる。
エイヴィス自身が特に楽しみにしている演目については、富豪のムッシューG.M.役で久しぶりに出演する『マノン』と『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー役だと明かした。特に『くるみ割り人形』では、舞台上をまばゆい光で満たしてクリスマスの最上の瞬間を演出する重要な役だと抱負を寄せる。
最後に日本のファンに対して「私にとって大切な存在である英国ロイヤル・バレエ団を皆さまが待っていてくださって、宝物のように感じていただいていることは、かけがえのないことです。これからも皆様に愛していただきたいと思います」とメッセージを寄せると、場内からは大きな拍手が贈られた。

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『シンデレラ』The Royal Ballet © 2023 Tristram Kenton

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト

http://tohotowa.co.jp/roh/

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