令和4年度(第73回)芸術選奨大臣賞を唐津絵理、福岡雄大が受賞した

ワールドレポート/東京

すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna

3月9日(木)の夕刻、東京・新宿で令和4年度(第73回)芸術選奨贈呈式及び祝賀会が開催された。今回、バレエ、ダンス関係の受賞は、舞踊部門の大臣賞に新国立バレエ団プリンシパルの福岡雄大さん、新人賞に舞踏家の田村一行さん、そして、芸術振興部門の大臣賞にこの「DANCE CUBE」でもお馴染みの舞台芸術プロデューサー・唐津絵理さんが選ばれた。

福岡さんは「自分は賞に無縁かと思っていた」とはにかみながら。確かに、新国立劇場バレエ団で、もう何年もトッププリンシパルと言える活躍重ねていることを思うと、もっと早くこの大臣賞を受賞していてもおかしくないように思える(ちなみに5年前に新人賞を受賞している)。
贈賞理由は、以下の通り。
「福岡雄大氏は、数々の国際コンクールで受賞後、平成21年新国立劇場バレエ団に入団、以後華麗なテクニックと豊かな表現力で古典バレエから近代バレエ、コンテンポラリー作品まで、主演を続け成果を上げてきた。令和4年も古典バレエで の成功のみならず、平山素子、柳本雅寛版『春の祭典』では2台のピアノと男女二 人のダンサーという小人数の空間構成で、ストラヴィンスキーの難曲に拮(きっ)抗し、二つの肉体と精神が交差し、人間の根源的かつ壮大な世界観を描ききったことは大いに評価できる。」(文化庁ホームページ)
日本のトップですねと話を向けると「僕、日本一じゃないですよ。いろんなダンサー、みんなそれぞれ日本一」。とはいえ、「今回の受賞を子供の頃から教わった(大阪の)K☆バレエスタジオの方々や、新国立劇場のスタッフの方々がみなさんとても喜んでくださっている。それが一番嬉しいです。これはみんなの成果ですから」。

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福岡雄大

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唐津絵理

そして唐津さんへの贈賞理由は、以下の通り。
「唐津絵理氏は、公共劇場でプロデューサーとして活動を行い、さらに令和2年に民間支援による新しいダンスハウス「Dance Base Yokohama」の立ち上げに参画、これらの連携の成果として令和4年は「愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama パフォーミングアーツ・セレクション2022」の全国ツアーを行い、ダンスの多様性を示し高く評価された。氏は、アーティストの自立的な活動を支援し、可能性を引き出すために、安全安心な制作環境を整えようと活動を始めた。また創客の視点から、舞台芸術の批評眼を持った新たな観客を生み出すことにも力を入れてきた。これらの活動は芸術振興の意味や方法を改めて問い直す契機ともなった。ダンスに止まらない芸術の創造と振興・支援施策のあり方両面に影響を与える重要な取り組みを牽引してきた存在である。」(文化庁ホームページ)

唐津さんには、少し落ち着いて話を聞くことが出来たので紹介したい。

──ご受賞、おめでとううございます! 唐津さんのご活躍に本当に相応しい賞ですね。一報を聞かれた時は、どんなお気持ちでしたか。

唐津:まだ、今も信じられない思いです。芸術選奨の存在はもちろん知っていましたが、舞台の上の人が受賞するイメージが強く、サポートしている人間に光を当てていただけたことが本当にありがたいです。私のようにアーティストではないけれど、芸術に関わりたい、サポートをしたいと活動されている若い方々も増えて来ています。こうして評価されることが、そういった方々の希望にもなったらと思います。

──日本で舞踊のプロデューサーというと、私の頭の中には、唐津さんと、先輩にあたられる佐藤まいみさんと......と、まだ、ほとんど思い当たりません。そんな状況の中、ご苦労も多かったのではないかと思うのですが......。

唐津:私が愛知芸術文化センターで仕事を始めた30年前には、日本で、劇場にダンスの専門家がいるということ自体がとても特殊なことでした。何をするべきかから考えて走り続けてきたという感じです。正解がないし、常に探してきた。苦労と言えば苦労かも知れませんが、自分なりに創りだしていけるというやりやすさもあったかもしれません。ヨーロッパの真似をしてもしょうがない、日本でのやり方を見つけていかないと。日本におけるプロデューサー像をつくるような。

──今回、民間支援による新しいクリエイションが出来るダンスハウス「Dance Base Yokohama」の立ち上げ、愛知県芸術劇場での成果上演、加えて全国ツアーが評価されましたね。

唐津:日本は特に制作環境が恵まれていない。30年前から課題だと感じていたことです。そこを「Dance Base Yokohama」で整えて、愛知で成果上演、全国に回っていくという形を作っていきました。ヨーロッパの劇場では、ひとつの劇場で作品創造と上演ができる。日本ではそれが難しいのが現状なので、分担して実現するという日本独自の形を作ろうと、ようやくスタートしたばかりです。

──今後の展望も聞かせていただけますか。

唐津:今回やれなかった地域での上演を実現したい。そして、海外にも持って行きたいと思っています。

──まだまだ、膨らみそうですね、楽しみです。本当にありがとうございました。

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