選考から舞台までが体感できる「ローザンヌ国際バレエコンクールの50年」展が好評開催中!

ワールドレポート/東京

香月 圭 text by Kei Kazuki

Bunkamuraとローザンヌ歴史博物館主催による「ローザンヌ国際バレエコンクールの50年」展が2月3日〜2月15日、Bunkamura Galleryで開催中だ。昨年2月から5月までローザンヌ歴史博物館にて「Envol(飛翔)」と題して開催されていた展覧会の日本巡回展となる。初日にはオープニング・セレモニーが行われ、冒頭に主催者の東急文化村 代表取締役社長の中野哲夫が挨拶した。
「Bunkamuraオーチャードホールの芸術監督は1989年ローザンヌ国際バレエコンクールのゴールド・メダルを受賞された熊川哲也さんにお願いしております。彼は1月29日から始まった今年の大会の審査員の一人として参加しておりますが、ちょうど今頃はファイナリストを選ぶ選考が行われている最中です。明日2月4日にはファイナルの審査が行われ、入賞者が決定します。」
駐日スイス大使 アンドレアス・バオムはこの展覧会の後援について
「今回の『ローザンヌ国際バレエコンクールの50年』展は文化村とローザンヌ歴史博物館が共催し、スイス大使館の〈バイタリティ・スイス〉というサステナビリティと健康をテーマとした新しいコミュニケーション・プログラムの協力のもと行われ、まさにスイスと日本のコラボレーションの好例と言える展覧会です。デザインにおいても、両国の友情を見事に体現しています。
ローザンヌ国際バレエコンクール入賞者(1999年)の小㞍健太さんには2025年の大阪・関西万博に向けて、〈バイタリティ・スイス〉のアンバサダーを務めていただいております」
この展覧会はスイスのデザイン・スタジオ、atelier oïと内田デザイン研究所による企画協力、またルフトツークの展示協力のもと実現したが、atelier oï のパトリック・レイモンは展示コンセプトについて
「展示デザインについては、ローザンヌでも東京でも、バレエ・ダンサーたちの体、動き、空間という要素がインスピレーションとなりました。コンクールに参加する候補者の選考プロセスからステージに上がるまでの過程で構成されております。ローザンヌの展示では、メインとなるスペースがファイナル前の数日間となるトレーニング・ルームでした。ここBunkamuraでは、コンクール最後の舞台である決選の瞬間を表現することにしました。展示を見に来ていただいたお客様一人一人が観客の前のステージに立っているというコンセプトです。チュチュをイメージした演出があり、エントランスからエンディングまで、この展覧会の様々な段階をダンス・パフォーマンスのような動きで表現しながらご案内します。
この展覧会をご自身のダンス・パフォーマンスの一部として楽しんでいただければと思います」と語った。

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©Keizo Okubo

会場風景

©Keizo Okubo

関係者集合写真

オープニング・セレモニー

ギャラリーの最初のスペースには、ローザンヌ国際バレエコンクール歴代のポスターや熊川哲也が受賞したゴールド・メダルや授賞式の写真、トゥシューズなどが展示されている。
1915年にセルゲイ・ディアギレフがローザンヌに移住し、ダンスとこの街との縁が深まっていく歴史を説明するパネル展示、そしてスイス時計業界の実業家フィリップ・ブランシュワイグが元バレエ・ダンサーの妻、エルヴィ・クレミスとローザンヌ国際バレエコンクールを1973年に創設し、発展させた歴史をたどるコーナーもある。もちろん、1989年の東京開催についての資料も展示されている。また、どのような応募プロセスを経てローザンヌ国際バレエコンクールに出場するのか、本選の会場でどのように過ごしているのか、医療関係のエントリー・シートやコンクール参加者たちの映像もある。英国ロイヤル・バレエ プリンシパルとなったマヤラ・マグリの姿も。
第二の空間では、チュチュを模した白いオブジェとダンサーたちの舞台画像がプリントされた布が天井から吊るされ、幕が開く前に他の出場者と共に舞台で一斉にリハーサルをしているかのようにも感じられる。
一番奥のセクションでは、出場者たちがクラシックやコンテンポラリーのヴァリエーションを舞台で披露している映像が流れ、それを審査員が眺めているように写真が配置されている。実際に自分が舞台に立って踊っていると想像すると、出場したダンサーたちの緊張感が多少なりとも実感できる。審査員が実際にコメントを書き込んだ採点シートも展示されている。
歴代の日本人入賞者のダイジェスト画像も展示されており、堀内元(1980)、貞松 正一郎(1982)、吉田都(1983)、堀内充(1983)、熊川哲也(1989)、上野水香(1993)、中村祥子(1996)、小㞍健太(1999)、倉永美沙(2001)、高田茜(2008)、二山治雄(2014)、そして田中月乃(2022)まで日本人ダンサーたちが切り拓いていった50年の歩みが見られる。

熊川氏授賞式 © Francette Levieux Prix de Lausanne

熊川哲也、ローザンヌ国際バレエコンクール東京大会の授賞式  ©Francette Levieux Prix de Lausanne

会場風景

熊川哲也がローザンヌ国際バレエコンクール東京大会で授与されたゴールド・メダル ©Keizo Okubo

会場風景

©Keizo Okubo

1月29日〜2月5日にボーリュ劇場で開催されたローザンヌ国際バレエコンクール2023 50周年記念大会では、予備選考で選ばれた日本人14名のうち13名を含む総勢82名が出場した。2月3日に行われた準決選では22名がファイナルに進出、そのうち日本からは斎藤杏、宮崎圭介、田邊陽奏、井嶋奏太の4名が最終選考に残り、国別では最多となった。翌2月4日の決選では、『白鳥の湖』のジークフリート王子のヴァリエーションとウェイン・マクレガー『幽玄』を踊った宮崎圭介(15歳/ワクイバレエスクール)が第8位に入賞した。第一位は『パリの炎』のヴァリエーションを踊ったスペインのミヤン・デ・ベニートとメキシコのファブリツィオ・ウヨラ・コルネホの二人同時受賞となり、入賞者は合計11名となった。

◆「ローザンヌ国際バレエコンクールの50年」展

開催期間:2023年2月3日(金)〜15日(水)
会場:Bunkamura Gallery
公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/gallery/exhibition/230203_lausanne/

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