ダンサー・原田薫の魅力を味わい尽くすパワフルな舞台

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

原田薫ソロ公演「ダラハオルカ」

原田薫:出演・振付、安倍康律:作・演出

ダンサー、女優、振付家として活躍する原田薫のソロ公演『ダラハオルカ』が、5月5日〜14日、東京の浅草九劇にて行われた。

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撮影:平萌花

「ダラハオルカ」とは誰だろう?
もちろん、ミュージカル、ストレートプレイ、映画、コンサートやPVの振付・出演など幅広い分野で活躍するジャズダンサー、原田薫のことだけれど、たぶん「ニアイコール」であって「イコール」ではない。
自身のセリフによれば、ダラハオルカは「五十ウン歳」。目下のところ、彼氏はいないらしい。猫のスコッチャと暮らしている。
封をされた手紙が来るとわくわくするわ、と彼女はいう。手紙にもいろいろある。パーティへの招待状もあれば請求書もある。友達の結婚の知らせを聞くと、祝福したいとは思うけれどちょっと複雑な気分になる。SNSなどで悪意や嫉妬に触れれば傷つく。作・演出、劇中歌の作詞・作曲を手がけたのは安倍康律。言葉遊びのきいたせりふと歌とダンスにより、一人のダンサーの日常や心のうちが少しずつ見えてくる。

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撮影:平萌花

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撮影:平萌花

序盤、松出直也、Kosukeを従えて踊った圧巻のタンゴで一気に引き込まれた。キメる瞬間は鞭の鋭さ、ポーズからポーズへの流れはふわっと花が香るように曲線的だ。松出、Kosukeの小気味よい動きの中で、原田の艶やかな存在感が引き立つ。
テレビのダンスショーのダンサーと一緒に踊っていた子ども時代の思い出を踊る、ノスタルジックなジャズナンバーも美しかった。原田はきっと東京在住だと思うけれど、曲調からして、ダラハカオルが生まれ育ったのはニューヨークかもしれない。
男なんていなくていいわ、と言いつつ飼い猫と過ごす夜。でも実際猫を演じているのは人間のKosukeだから、二人の踊りはなまめかしい。Kosukeの動きは背中から手足までしなやかで、本当に気まぐれな猫のよう。続いて松出とのミュージカルナンバー「雨に唄えば」。松出のステップは端正かつノーブル。二人のダンスには、目の前がぱぁっと晴れていくようなはなやかさがあった。
かと思えば、ふと自然と人類の未来が気になり、省エネのため照明を消して「SDGs! SDGs!」と連呼しながら踊ってみたり。踊っているとみせかけて実は寝ていたり。小さなドラマや笑いを挟みながら、舞台は進んでゆく。客席には原田のメッセージが入った封筒が置かれていて、ラストシーンでは観客一同、封筒を振りながらパフォーマンスに参加した。浅草九劇の小空間の中に、原田たちと観客一人ひとりから発せられる、たくさんのエネルギーが回っている気がした。

作・脚本の安倍康律は公演ホームページに、「原田薫を浴びれまくる」公演を観たかった、とのメッセージを寄せている。原田のような強力なダンサーのエネルギーを浴びると、たぶん観ているほうも良いエネルギーを出すことができる。劇場に行って元気が出るというのは、たぶんそういうことなのだろう。
(2022年5月9日 浅草九劇)

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撮影:平萌花

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撮影:平萌花

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撮影:平萌花

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撮影:平萌花

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