「ダンサーとして今何ができるか」キエフ・バレエ支援チャリティーガラ公演ーー草刈民代ほかが記者会見

ワールドレポート/東京

香月 圭 text by Kei Kazuki

「キエフ・バレエ支援チャリティー BALLET GALA in TOKYO」が、7月5日、昭和女子大学人見記念講堂で開催される。6月17日には芸術監督の草刈 民代、ウクライナ国立バレエ(キエフ・バレエ)副芸術監督の寺田 宜弘、出演者として元バーミンガム・ロイヤル・バレエの厚地 康雄、そしてRENAISSANCE CLASSICSプロデューサーの恩田 健志が登壇し、日本記者クラブで記者発表が行われた。

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© フォトスタジオアライ

芸術監督を務める草刈民代はこのチャリティー・ガラ公演を企画した理由について語った。
「バレエダンサーとして現役だった頃にはロシアの先生方にも教えを受け、ロシアの舞台にも立ち、ロシアやウクライナのダンサーの方々とも共演していたので、2月末からウクライナの惨状を伝えるニュースに心を痛めていました。その後間も無くキエフ・バレエのソリスト、アルテム・ダツィシンがロシア軍の砲撃を受け、搬送先の病院で亡くなったという報道を耳にして愕然としました。彼と20年ほど前に共演したことがあり、こうして知り合いが亡くなるということを体験して、この戦争はもう他人事ではないと感じたのです。また、同じ舞台に立ったことがあるアレクセイ・ラトマンスキーは、キエフ・バレエやデンマーク王立バレエなどでダンサーとして活躍された後、ボリショイ・バレエの芸術監督も務められ、現在は振付家として活躍されている方ですが、ご自身のFacebookでバリシニコフなどバレエ界の著名人たちからの反戦のメッセージを精力的に投稿し続けております。そして «ダンサーはきれいな脚だけでなく、頭も心もあるはずだ» という彼の言葉にとても心を動かされました。ダンサーはただ踊ってさえいればよいということではなく、今の私たちにできることは何かを考えて、それに向かって行動しなければ、という思いに突き動かされました。
またキエフ・バレエで活躍されていた寺田宜弘さんとは現役の頃、日本の公演でご一緒したことがあり、ロシアの軍事侵攻が始まって以来、寺田さんがどうされているのか心配でした。新聞で彼の記事を拝見してご連絡させていただき、今回の公演の実現につながりました。この公演で得た寄付金はすべてキエフ・バレエに贈られます」。

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© フォトスタジオアライ

寺田宣弘は現地の様子を次のように語った「キエフ・バレエ学校に旧ソ連の国費留学生として渡ったのが11歳のときで、それから35年間ずっとウクライナに在住しています。まさかロシアがウクライナを攻撃するとは予想だにしませんでした。外務省から命の危険があるのですぐに帰国するようにという連絡を受けて、2月23日にポルトガルに脱出しました。ウクライナ侵攻が始まったというニュースが流れたのは翌24日のことでした。母校のバレエ学校の近くの橋が破壊されたときはさすがに心も折れてしまいましたが、団員や生徒たちから毎日のように相談を受けていたので、ウクライナのバレエ界への支援は続けていかなければならない状況でした。団員120名のうち、キエフの劇場に現在在籍しているのは30名です。5月末から劇場は再開しており、週一回オペラとバレエを上演していますが、毎公演満員となっています。ウクライナの人々は何よりも芸術を愛しているのです。
これまで世界各地のバレエ関係者の友人にウクライナのバレエ学校の生徒を引き受けていただいたり、ダンサーたちの仕事を見つけていただいてきました。ハンブルクやミュンヘンなど欧州各地の劇場でチャリティー・コンサートが開催されていたので、日本でもやらなければと思っていたところ、草刈さんからご連絡いただき、このような形で開催できる運びとなりました。
いただいた寄付金でキエフ・バレエでは新しい作品を創ります。チャイコフスキーの伝統的な作品は上演できる状況ではないので、次の時代にふさわしい作品を新しい振付家に委嘱する予定です」。

今回の出演者と作品について草刈は「現在、国内外のトップダンサーとして活躍されている方々のレベルは私の現役時代と比較するとずっと高くなっています。帰国して後進の指導者となっていらっしゃる方々に振付指導をお願いし、世界最高峰のアーティストのマスター・ピースの上演が可能になりました。出演者の皆様にはこのガラ公演の趣旨にご賛同をいただき、出演を快諾していただきました」と述べている。
寺田は「ウクライナを代表する名作『森の詩』をキエフ・バレエのアンナ・ムロムツェフとニキータ・スハルコフが来日して踊ります。日本で自国の作品が上演されることはウクライナの人たちに勇気を与えることでしょう」と今回のプログラムについて話した。

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© フォトスタジオアライ

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出演ダンサーの代表として今回の会見に臨席した厚地 康雄は「バーミンガム・ロイヤル・バレエにはロシアやウクライナの友人のダンサーがたくさん在籍していますが、私たちの力が及ばないところで国家間のパワーバランスが壊れていくのを見るのはつらいことでした。2月に退団し、ウクライナ危機のため南回りのフライトで何とか帰国できました。草刈 民代さんのお姿はこれまでテレビや雑誌でお見かけするくらいで直接お会いしたことはありませんでしたが、今回御本人からご連絡をいただき、この公演の趣旨についての熱心な説明を受けて、私も賛同し出演させていただくことになりました。レパートリーについては民代さんと何度も相談を重ね、アシュトンの『二羽の鳩』になりました。平和の象徴である本物の白い鳩が登場する、この公演にふさわしい演目ではないかと思います」と語った。

このチャリティー公演では抽選で1800名を無料招待し、一人5000円以上寄付を募る。国内外で活躍する多数の日本人トップダンサーとキエフ・バレエからのゲストを迎えたガラ公演を堪能したうえで、観客もキエフ・バレエを支援することができる。

「キエフ・バレエ支援チャリティー BALLET GALA in TOKYO」

開催日時:2022年7月5日(火)18:30 開演(20:30 終演予定)
開催会場:昭和女子大学人見記念講堂(東京・三軒茶屋)
主催:キエフ・バレエ支援チャリティー BALLET GALA 実行委員会、RENAISSANCE CLASSICS
企画制作:RENAISSANCE CLASSICS、パシフィック・コンサート・マネジメント
公演公式HP:https://www.classics-festival.com/rc/kyiv-ballet-gala-in-tokyo-2022/

チケット申込のお問い合わせ:キエフ・バレエ支援チャリティー BALLET GALA 事務局(パシフィック・コンサート・マネジメント)
TEL:03-3552-3831(平日10〜17時)
※入場者には5000円以上の募金をお願いする(学生は除く)。
※募金はキエフ・バレエに全額寄付となる。

◆上演作品
『デューク・エリントン・バレエ』The Opener(振付:ローラン・プティ)
『海賊』より
『バラの精』
『And... Carolyn.』(振付:アラン・ルシアン・オイエン)
『ノートルダム・ド・パリ』(振付:ローラン・プティ)
『Deep Song』(振付:マーサ・グラハム)
『ジゼル』アダージョ
『小さな死』(振付:イリ・キリアン)
『二羽の鳩より』(振付:フレデリック・アシュトン)
『祈り』(アメリカン・バレエ・シアター版『コッペリア』より)
『森の詩』より 他

◆出演
アンナ・ムロムツェワ(キエフ・バレエ)
佐久間 奈緒(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ)
加冶屋百合子(ヒューストン・バレエ)
青山 季可(牧阿佐美バレヱ団)
佐々 晴香(スウェーデン王立バレエ)
藤井 彩嘉子(チェコ国立バレエ)
佐藤 碧(マーサ・グラハム・ダンス・カンパニー)
芝本 梨花子(デンマーク王立バレエ)
大谷 遥陽(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
中野 伶美(シビウ劇場バレエ)
ニキータ・スハルコフ(キエフ・バレエ)
平野 亮一(英国ロイヤル・バレエ)
厚地 康雄(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ)
菊地 研(牧阿佐美バレヱ団)
松井 学郎(ノルウェー国立バレエ)
江部 直哉(カナダ国立バレエ)
猿橋 賢(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
福田 昂平(元ノヴォシビルスク・バレエ)
永井 駿介(牧阿佐美バレヱ団)
二山 治雄 他

◆芸術監督:草刈 民代
◆指揮:井田 勝大
◆管弦楽:シアターオーケストラトーキョー
◆振付指導:折原 美樹、小林 十市、中村 恩恵、田中 祐子、山本 康介

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