ダンスの「いま」に触れる、DaBY(ダンスベース横浜)4月〜5月ラインナップ

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

ダンサー・振付家、異分野・異業種のアーティストと観客の交流拠点として、刺激的な活動を展開してきたダンスハウス、Dance Base Yokohama(ダンスベース横浜、DaBY)が、4〜5月のラインナップを発表した。3組のアーティストがワークショップやショーイングを展開。誰でも無料でクリエイション風景を鑑賞できるオープンスタジオもある。初夏のひととき、横浜でダンスの「いま」に触れてみてはいかがだろうか。

Thick&Tightによる集中ワークショップ

会場:Dance Base Yokohama

Thick&Tightは、英国を拠点とする注目のカンパニー。ダニエル・ヘイ=ゴードンとエレノア・ペリーの二人組で、LGBTQ+としてのアイデンティティをもとに、世界各国のクィア(性的少数者)文化のリサーチなどを通じて創作にあたっている。
「既成概念を打ち壊す心地よさ」(「The Stage」)、「エレガントなスタイルで感情を揺さぶる振付」(Disability Arts)などと評される作品の雰囲気は、短い映像からも伝わってくる。

<Trailer>
1.A Night with Thick and Tight
https://www.thickandtight.com/a-night-with-thick-tight
2. Romancing and Apocalypse
https://www.thickandtight.com/romancing-the-apocalypse
<Film>
Unclouded Moon
https://www.thickandtight.com/unclouded-moon

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Thick&Tight ©Darren Evans

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Thick&Tight © Britten Pears Arts

ゴードンとペリーは、クラシック・バレエ、カニングハム・テクニックなどを習得した後、独自の創作活動を始めた。歴史的人物のパロディ、音声記録や音楽を自在に使ったリップシンク(いわゆる「口パク」)、ユーモアと風刺とドラァグテイストをたっぷりと盛り込んだユニークなスタイルを確立している。ダンスの役割や可能性とは? 生き物であること、人間であることの意味とは? 世界の分断やエコロジーの問題にパワフルなメッセージや新たな価値観を提示する彼らの作品はメディアからも高い評価を受け、ロイヤルオペラハウスをはじめ、英国の主要な劇場で上演されている。
今回のワークショップでは、基礎的なダンス・トレーニングからスタートし、Thick&Tightとともに創造的な振付と作品創作の方法を探求する。

<スケジュール>
4月26日(火) / 27日(水)
(1) 11:00-12:15 テクニッククラス(基礎的な身体作り、ウォームアップ)
(2) 13:00-15:00 Thick & Tightのレパートリークラス (過去作品からレパートリーを学ぶ)
(3) 15:30-18:00 クリエイションクラス (写真、映像、テキスト(言葉)等を用いて、動きを創造)+Q&A(15分程度)
詳細:https://dancebase.yokohama/event_post/20220426-27

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Thick&Tight © Rosie Powell

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Thick&Tight ©RosiePowell

DaBY/SandD ⼩㞍健太+森永泰弘『ころり』

オープンスタジオ(出入り自由/無料)5月1日(日)〜5日(木)
パフォーマンス(有料) 5月6日(金)〜8日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場〈中スタジオ〉

ダンサー・振付家の小㞍健太を起点に2017年に始動した、他ジャンルのアーティストとリサーチやクリエイションを行うプロジェクト「SandD (Project "Surface and Destroy") 」。"Surface and Destroy"は、既成概念をぶっ壊せ、という意味だ。近年はサウンドアーティストの森永泰弘とのコラボレーションを軸に、様々な分野からアーティストを迎え入れて創作を行っている。
今回の新作『ころり』には小㞍と佐藤琢哉、 畠中真濃、青柳潤の4名が出演。これまでの創作のベースにある「記憶」を「記録」するというテーマをもとに、ある場所を訪れた際に現れる「風情」という感覚にアプローチしていく。
5月1日〜5日には、クリエイションの模様が無料で公開される。アーティスト同士の呼吸のふれあいを間近で感じられる貴重な機会となりそうだ。

<スケジュール>
オープンスタジオ 5月1日(日)〜4日(水)11:30〜17:30、5月5日(木)11:30〜14:00
パフォーマンス 
5月6日(金) 19:00開演、7日(土) 14:00開演、8日(日) 14:00開演
詳細:https://dancebase.yokohama/event_post/20220426-0508-2

MOSA/月面着陸 第4回ショーイング

5月9日(月)19:00〜
会場:Dance Base Yokohama

4月よりDaBYのレジデンス・アーティストとなるMOSAは、
柿崎麻莉子小暮香帆中村蓉の3人が構成するユニット。MOSAとはネパールの南東部で使われているメチェ語で "孔雀のようにショールを広げて踊る" という意味で、日本語の猛者、NASAも意識した名前だという。まさにダンスの「猛者」にふさわしい3人が始めた若手育成事業が「月面着陸」プロジェクトだ。
ダンサーとして活動できるようになるまでには、素晴らしいメンターとの出会い、リハーサル漬けの日々、たくさんの本番の経験が必要だとMOSAは考える。初めて月に降り立った時のような楽しみと不安が混ざった足取り。それがだんだん確かな感覚、手応えとなっていく......そんな体験を次世代のダンサーにも伝えたいという思いが、このプロジェクトの出発点となった。

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MOS © Yuka Uesawa

「月面着陸」は、現在10代・20代前半の若手ダンサー(土本花、真壁遥、Ikuma Murakami)を選出し、週に1度のリハーサル、月に1度の発表の場を設けて活動中だ。
活動の方針として、複数名のメンターが長期的に若手ダンサーの成長を見守りサポートする体制、海外振付家とのクリエイションや多ジャンルのアーティストとのコラボレーションを通して、海外で活動できる力やコネクションを深めること、ダンスに関わる人もそうでない人も無理なくアーティストを支援できる仕組みづくりなどが挙げられている。

今回のショーイングは、プロジェクト前半期の「総集編」として、絵本を題材にした「穴のあいた人たち」、様々な場・音楽との「即興」、演技に挑戦する「工藤祐次郎を踊る」など、これまでに取り組んできた演目から抜粋シーンを上演。MOSAの3名による新作の発表やゲストアーティストも登場、アフタートークも予定されている。

詳細:https://dancebase.yokohama/event_post/20220509-2
MOSA/月面着陸 アカウント
https://www.instagram.com/mosa_lotm/
https://twitter.com/MOSALOTM

『Dialogue』より (2021年、Dance Base Yokohama)©momoko japan.jpeg

『Dialogue』より (2021年、Dance Base Yokohama©momoko japan

『The Threshold』より(2021年、ゲーテ・インスティトゥート 東京 ホール):©momoko japan .jpeg

『The Threshold』より(2021年、ゲーテ・インスティトゥート 東京 ホール)©momoko japan

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