KIRARI SHOW ACT☆「夜想曲〜ノクターン〜」ゲネプロレポート

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

卓越したダンス・テクニックで艶やかな存在感を放つ俳優・東山義久をリーダーとし、2003年に結成されたダンス・ボーカルユニットDIAMOND☆DOGS。同ユニットが、脚本・演出に宇治川まさなり、ゲストに元宝塚トップスターの北翔海莉を迎えておくる「夜想曲〜ノクターン〜」が、東京の博品館劇場で上演中だ。1920年代アメリカの裏社会をイメージした架空の街トーキョーを舞台に、極上のダンスと歌で欲望と裏切りのドラマが描かれる。12月5日に行われたゲネプロの模様をレポートする。

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博品館劇場は席数381。舞台上の熱気をダイレクトに受け取れる心地よい空間だ。星の光を思わせるライトがきらめき、艶やかな紫のパンツスーツをまとった北翔海莉が、続いて東山義久がモノローグを語る。挫折やあきらめきれない夢を感じさせる。と、その余韻に浸る暇もなく怒濤のダンスシーンが始まる。バレエの跳躍が目の前に高く美しい弧を描いたかと思うと、タップが鋭いビートを刻み、センターへ滑り込んできたダンサーがブレイクダンスの床ワザを鮮やかに決める。早替えした北翔と東山が颯爽とダンスに切り込んできて......。出演者一人ひとりのショーアップされたカッコ良さがきわだつ。
フッと照明が切り替わると、そこは首謀者レオ(東山)が仕切る闇カジノ「夜想曲」の倉庫。カジノの常連客で莫大な借金を背負った5人の男たちが連れてこられ、移送中の大金強奪を手伝えと強要される。男たちの職業はホスト、証券サラリーマン、蕎麦屋など様々で借金を背負った事情も一人ひとり違う。男たちはおびえつつも一攫千金を夢見て計画に加わるのだが......。
「夜想曲」を取り仕切る秘密組織の内部にも、様々な事情が渦巻いている。レオには弟を殺された過去があり、「夜想曲」の歌手アリエス(北翔)は強奪計画の司令塔でレオの恋人だが、過去には組織の新参の実力者キャンサー(中塚皓平)と関係をもっていた。カジノの客の中にも、どうも外部への密通者がいるらしい。予想を次々と裏切る展開の中に、フラメンコ、ラテン、ジャズと様々なスタイルのソング&ダンスシーンがテンポよく織り込まれてゆく。特に強奪シーンのラテンダンスは圧巻だ。トレンチコートを翻し、たばこなどの小道具を粋に操りつつ、おどおどしながら形勢を見守る男たちや裏切り者らしいキャラクターの怪しい動き、警察との銃撃戦などのドラマをギュッと凝縮して見せる。12星座のコードネームで呼ばれる12人の登場人物は、全員が一癖もふた癖もあって魅力的だ。個人的には、どんなスタイルのダンスも踊りこなし、堂々たる魅力をみせつける北翔と、せりふをしゃべりつつ切れ目なく高速回転ジャンプを跳ぶなど、バレエテクニックを駆使して切れ味鋭いダンスを見せる長澤風海から目が離せなかった。
本作の登場人物のように実際に借金は背負っていなくても、自分の人生にはツケが溜まっているような、負けが込んできているような、やさぐれた気分になることがある。自分のかわりに思う存分悪事を働いてくれる「悪い男」「悪い女」の物語は痛快だ。しかも本作は、幕切れで「信じること」へのかすかな希望を感じさせてくれる。
公演は12月12日(日)まで。

http://www.hakuhinkan.co.jp/theater/

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