東京バレエ団が新型コロナ禍からの復興を掲げた全国ツアー<HOPE JAPAN2021>を7月に開始する
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坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi
7月3日〜19日、東京バレエ団が全国ツアーを行う。ベジャールの『ボレロ』をはじめ、力強い生命力が湧きたつ演目をそろえ、東京文化会館を皮切りに、大阪、名古屋、岩国、福岡、前橋、富山、京都、岡山、津、いわきと11都市をめぐる予定だ。
東日本大震災が日本を襲った2011年、東京バレエ団は、「いつも温かく迎えてくださった日本の皆さんのために何かできることをしたい」というシルヴィ・ギエムの呼びかけに応えて「HOPE JAPAN」と題したツアーを行い、被災地となった岩手・福島を含む全国各地を巡演した。
あれから10年。新型コロナウィルス感染症が世界で蔓延する中、東京バレエ団は再び「HOPE JAPAN」の名を掲げた全国ツアーを開始する。演目は、日本を愛したモーリス・ベジャールによる『ボレロ』、『ギリシャの踊り』。東京公演では、これに加えてベジャールの『舞楽』、『ロミオとジュリエット』よりパ・ド・ドゥを上演。東京以外の都市では、華やかな見せ場がふんだんにちりばめられ、クラシック・バレエの粋を味わえる『パキータ』も上演される。
「ボレロ」柄本弾 photo/Kiyonori Hasegawa
「ボレロ」上野水香 photo/Shoko Matsuhashi
『ボレロ』は東京バレエ団が繰り返し上演してきた名作だが、「鼓舞」という言葉がこれほどぴったりくる作品もないだろう。「タッタタタ・タッタタタ・タッタッ」という規則正しいドラムの音がひそやかに響いてきて、赤いテーブル上のソリスト「メロディ」の手にスポットが当たる――あの静かな始まりは、何度観てもドキドキさせられる。今回「メロディ」を踊るのは上野水香と柄本弾。群舞「リズム」に取り囲まれて踊る「メロディ」は、踊り手によってさまざまに見える。男たちの欲望を一身に集める女神か、人々を扇動するカリスマか......。ダンスと音楽のエネルギーをこれほど生々しい形で体験できる作品は少ない。
『ギリシャの踊り』も、ベジャールの代表作のひとつ。1982年にフランスのアルル闘技場で『タラサ、われらの海』の名で初演された。しなやかな女たちと、躍動感あふれる男たちが次々と踊り、観ているうちに、劇場の中にいても、足元にひたひたと寄せてくる波や潮風、陽光を感じられそうな作品だ。
「ギリシャの踊り」photo/Kiyonori Hasegawa
東京公演で上演される『舞楽』は、1988年、モーリス・ベジャールバレエ団と東京バレエ団の合同公演のために黛敏郎のバレエ音楽に振付けられたオリジナル作品。また、『ロミオとジュリエット』は、劇中劇の形で反戦と愛をうたった幻の名作で、18歳のジョルジュ・ドンがみずみずしいロミオ役で主役デビューを果たした作品としても知られる。今回上演されるのはパ・ド・ドゥで、東京バレエ団としては38年ぶりの復活上演になるという。どんなロミオ&ジュリエットが観られるのか、とても楽しみだ。
東京以外の都市で上演される『パキータ』は、華やかな結婚式の場面。ソリストや群舞の見せ場がふんだんに盛り込まれており、ピュアなクラシック・バレエの美しさを堪能できる。
長引くコロナ禍で、とかく気力が落ち込みがちな日々だが、こんなときこそダンスが放つエネルギーを取り込んで免疫力を高めたい。「希望」を掲げた全国ツアーの開始はもうすぐだ。
https://www.nbs.or.jp/stages/2021/hope/index.html
「舞楽」photo/Kiyonori Hasegawa
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