上野水香×中村祥子「トゥシューズの秘密から共演の夢」

ワールドレポート/東京

文・坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

チャリティ写真集『Jewels』が、2020年12月21日に発売された。メインモデルとして、上野水香(東京バレエ団)、中村祥子、石井久美子(マリインスキー・バレエ)、横山瑠華(ジョージア国立バレエ団)の4人が登場。写真の一枚一枚が、トップバレリーナが紡ぐ時を閉じこめた「宝石」のような仕上がりとなっている。
売上の一部は、全国のバレエ少女たちに100足のトゥシューズを寄付する「Jewels トゥシューズファンデーション」として役立てられる。
発売に先立ち、上野水香、中村祥子によるトークイベントが行われた。トゥシューズへの徹底したこだわり、舞台共演の夢まで、通常はなかなか聞けない話題がたくさん飛び出した。その内容を抜粋してお届けする。

「日本バレエ発祥の地」七里ヶ浜での撮影から『瀕死の白鳥』まで

写真集を開くと、最初に目に飛び込んでくるのが、砂浜で楽しげにジャンプする少女たちの写真だ。1927年、鎌倉・七里ヶ浜に開かれた日本初のバレエ教室・パブロワ館の生徒たちである。
ページをめくると、時代は一気に約100年後に跳び、上野水香の美しいジャンプが現れる。別のページには、七里ヶ浜でのびやかに踊る中村祥子の写真も納められている。
トークに先立ち、アートディレクターのこうづなかばは次のように語った。「パブロワ館の少女たちのあどけないジャンプから、水香さんや祥子さんのような完成されたプリマの出現までには、100年の歴史があった。その感動がこの本をまとめる原動力になりました」。
さて、主役の二人が登場すると、会場は大きな拍手に包まれた。

――お二人が一緒に出演されるイベントは、今回が初だと思うのですが、お互いに面識はおありでしたか。

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上野水香
© Mariko Miura(すべて)

上野 初めて舞台でご一緒したのが、2008年、ベルリンでのマラーホフ・フレンズというガラ公演でした。祥子ちゃんがまだベルリン国立バレエに在籍されていた頃です。同じ楽屋だったので、いろいろおしゃべりしましたね。
その後、ハンブルクでのニジンスキー・ガラでもばったり会って。あの時はお腹に赤ちゃんがいたと後から聞いて、それであんなにバリバリ踊ってたんだなとびっくりしたのを覚えています。

中村 私が日本に拠点を移した後、一度一緒にお食事をしたくらいで、なかなかお会いする機会のないままでしたね。水香さんとこうやってトークしたり、写真集でご一緒できたことが、本当に夢のようです。

――まずは、撮影のシチュエーションについて教えてください。

中村 私は鎌倉の七里ヶ浜で撮影させていただきました。私は初めて行ったのですが、水香さんのご実家が鎌倉と聞いてびっくりです。

上野 そうなんです。実は私もローザンヌ国際バレエコンクールに入賞した15歳の頃、新聞の取材で、あそこで撮っていただいたことがあって。子ども時代からなじんでいた浜辺なんですが、日本バレエ発祥の地といわれていて、撮影にはいちばんいい場所かなと。

中村 本当にすてきな場所でした。

上野 撮影の映像を見させていただいたのですが、祥子さんが心から解放されて、のびのびとご自分の芸術と向き合っている姿が見て取れました。

中村 今回はまといちゃんという小さなバレリーナとも一緒に撮影したんですけれど。彼女のようなダンサーを目指す子どもたち、そしてこの本に登場する石井久美子さん、横山瑠華さんのような海外で活躍されているダンサーたちが、この先、この一冊を通して一緒に仕事をしていくことに大きな意味があるなと感じました。
水香さんの撮影はどちらで? 撮影にテーマはあったんですか。

上野 東京バレエ団のスタジオで撮っていただきました。最初のカットは白いテントを張って、その中で「女神が一人で戯れている」みたいなシチュエーションを設定していただいて、自分なりに動いてみた感じです。その後は稽古着で、「自分の体と向き合う」イメージでバレエの基礎的な動きを。それから、ちょうど今お稽古している『瀕死の白鳥』をやりました。

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中村 『瀕死の白鳥』、私も挑戦したことがあるんですけど、すごく難しい作品ですよね?

上野 難しいです! 祥子さんの『瀕死』、ぜひ見てみたいなあ。祥子さんの背中、本当にカッコいいから。その背中はどうやってつくっているのか、前から聞いてみたかったんですよ。

中村 何も特別なことはしていないですが、特に『白鳥の湖』のような作品をリハーサルしていると、自然とこんなふうに筋肉ができあがってくるんです。

上野 私はいくら頑張っても、ジムに行っても何しても、背中はつるーんとしてる(笑)。

中村 きっと、私と筋肉の質が真逆なのかもしれないですね。水香さんは筋肉がとても柔らかそう。私はすぐ筋肉がつく分、よくほぐさないとがちがちになりやすいんです。
それにしても、『瀕死の白鳥』は難しいですよね。死に瀕した短い時間の中で、白鳥の一生を語らなければいけないのかなと。奥深いなと思います。

上野 本当に。死にゆく白鳥で、生きたいんだけど息絶え絶えで、だんだん目が見えなくなってきて、飛びたいのに飛べない、とか。そういった葛藤やいろんなドラマを、自分なりに思い浮かべながら踊っているんですけど。祥子さんはどなたの『瀕死』が好きですか。

中村 (ナタリア・)マカロワさんかな。

上野 ああ、マカロワさん! 『瀕死』は観たことがないんですが、『白鳥の湖』はマカロワさんがいちばん好き。彼女の背中はそれこそすばらしいですよね。私にとってはオデットのバイブルです。

中村 水香さんはマカロワさんにお会いになりました?

上野 ええ。マカロワ版の『ラ・バヤデール』でニキヤを踊ったとき、直接指導していただきました。

中村 あ、私も! 話がどんどんずれていきますけど(笑)。アムステルダム・バレエでゲスト出演したときに、ガムザッティをご指導いただきました。

上野 アムステルダムはマカロワ版なんですよね。特にマカロワさんの「蛇の踊り」のご指導が素晴らしくて。マカロワさんとのリハーサルがあったからこそ、今の自分のニキヤがあると思えるくらいです。『瀕死の白鳥』も教えていただけたら最高だけれど。

中村 そういうリハーサルってすてきですね。自分だけで新しい表現を見つけることは難しいけれど、自分の中にあるものを引き出してもらって、変われた、というような。私もどんどん、そういった濃い指導を受けてみたいです。

――ナタリア・マカロワは歴史に残る名バレリーナですね。貴重なお話をうかがいました。

「宝石」のようなバレエのエネルギーを届けたい

――少し写真集に話を戻すと、ご自分のベストショットはどれでしょうか。

上野 特にはっとしたのは、最初のほうに出てくるジャンプの写真です。その前にある、七里ヶ浜での、日本で最初にバレエを始めた方々の写真にまず心を打たれて。形云々じゃない、踊りは心で踊るもの、踊りの原点だなと思いました。自然の中で踊ると心が解放されて、思わずジャンプしたくなる。この写真にはそんなエネルギーがそのまま表現されていて、ああいいなあと思ってページをめくると、自分のジャンプが出てくるっていう。先輩方がゼロからバレエを学び始めて、私たちがそれを引き継いでいる。その意味がすごく伝わるページになっているなと思いました。

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中村祥子 © Mariko Miura

中村 すてきです! 私はふとした自然な表情を撮ってくださった、この写真が好き(写真を指す)。

上野 うーん、すてき。

中村 今回は、シャッター音のしない最新のカメラで撮影してくださり、いつ撮られているか全然わからない感じでした。バレエのポーズは撮っていただく機会が多かったけれど、こういう素の自分も作品にしていただいて、すごく嬉しいなと思っています。

――これまで、舞台写真などで見てきた水香さん、祥子さんとはまた違う表情がたくさんとらえられていますね。

中村 カメラマンの青木弘さんも、ふだんとは違う祥子さんを撮ってみたい、それが撮れたら僕は嬉しいっておっしゃっていました。ポーズの外側ではなく、内面を撮りたいと。

上野 青木さんは戦場カメラマンをしている方で、ふだんはアフリカで活躍していらっしゃるけれど、こういう時期だから日本にいらした。バレエの撮影は初めてだからこそ撮れる画だと思います。自然体でありながら、すごく芸術的な。
石井さんと横山さんの魅力も、それぞれに引き出されていますね。祥子ちゃんもずっとそうだったと思うけれど、海外のカンパニーで踊り続けることは孤独を伴う。そういう背景も、写真から見えてくるような気がします。

――この写真集では、皆さんが宝石にたとえられていますね。水香さんがエメラルド、石井さんがルビー、横山さんがサファイヤ、祥子さんがダイヤモンド。そしてバレエを支える読者の私たちが真珠という。

上野 実は「ジュエルズ」という言葉、昔から大好きで。バレエ音楽をまとめたCDをプロデュースしたときも「ジュエルズ・オブ・バレエ」というタイトルにしたし、自分で企画したガラ公演にも「ジュエルズ・フロム・水香」と名前をつけさせていただきました。宝石って、身につけることで良いパワーが宿る気がします。

中村 私も、大けがをしたときに身近で支えてくれた母と自分のために、プロダンサーとしての初任給で指輪を買ったことがあります。ジュエリーは、使えば使うほど自分の思いが宿り、育っていきますね。

上野 この写真集も、そんなジュエリーのように、バレエファンの方々に良いエネルギーを届けられるといいですね。

トゥシューズで役を踊り分ける

――『Jewels』には、バレエ少女たちにファースト・トゥシューズをプレゼントするチャリティ写真集という、もうひとつの大事なコンセプトがあります。

上野 素晴らしいアイデアだなと思いました。バレエダンサーにとって、トゥシューズは何よりも大切なものです。子どもの頃からトレーニングして、自分の体の一部として使いこなせるようになるまで、いったい何足のトゥシューズが必要なのかというくらい。写真集に参加することで、若いダンサーたちを支える力になれるというのは本当に嬉しいことです。

中村 トゥシューズってすごく夢があるものですよね。初めてもらったときは、一緒に抱いて寝ました(笑)。

上野 あ、私も!

中村 トゥシューズを履くと、一歩バレリーナに近づけたような思いがある。だから、トゥシューズを贈ることには「夢をつなげる」意味があると思います。

――お二人は何歳からトゥシューズを?

上野 私は5歳でバレエを初めて、6歳から履きました。

中村 早い! 6歳で履けるなんてすごいです。

上野 いやいや、早すぎたんじゃないかと思います。祥子ちゃんは?

中村 私は6歳でバレエを初めて、履き始めたのは9歳か10歳だったと思います。

上野 先生に呼ばれて、チャコットの箱を渡された日のことはよく覚えています。ええっ、私もう履いていいの!?って嬉しくてしかたなかった。でも、最初は全然立てなくて。履いた瞬間に立てると勝手に思いこんでいたので、なんでなんで!?と焦っていたら、バレエ教室のお姉さんが「ここを柔らかくするんだよ」と教えてくれました。それが、初めて知った「トゥシューズの加工」ですね。

中村 それぞれ、こだわりがありますよね。以前、水香さんは甲がありすぎて、ふつうのシューズでは対応できないからトウに釘を打ってるって聞いて。どういうことなのかなと、ずーっと不思議に思っていたんですけれど。

上野 今はゲイナーという固くて丈夫な靴に出会ったので、ほとんど加工していないんですが。フリードを履いてた時は、靴職人用の鉄の台にはさんで、トンカチでガンガンって釘を打ってました。柔らかいとすぐダメになってしまうのが不安で。

中村 トゥシューズが折れすぎないようにするってことですか?

上野 そう。接着剤を流すだけだとすぐはがれちゃうので、釘で固定してました。

中村 たしかに、フリードはすぐ柔らかくなってしまう欠点もあるけれど、私は好きでずっと使っています。ドゥミ・ポアントを通ってなめらかにルルヴェに行けるし、どんな動きにも対応できます。

上野 祥子ちゃんの靴、見せていただいたら、すごくいろいろ工夫されてて。

中村 こだわればこだわるほど、まだ何か踊りやすくできるんじゃないかと思えて、いろいろやってます。『ジゼル』など、ア・テールでのバランスが多い作品のときは、裏を削ったり。

上野 ガタガタしないように?

中村 はい、そうです。Kバレエの『クレオパトラ』や『マダム・バタフライ』では、床に布を張っていたので、滑らないようにカッターで裏を切って毛羽立てるようにしていました。水香さんは、『白鳥の湖』だと1舞台で何足くらい使われます?

上野 白鳥と黒鳥では、メーカーが違うんですよ。白鳥はサンシャ、黒鳥はゲイナーで踊っているので、最低2足は使うんですけど。

中村 固いほうが黒鳥、柔らかめが白鳥ってことですか?

上野 そう。白鳥には、柔らかめで安定感がある靴が向いているので。『ジゼル』も、1幕はゲイナー、2幕はサンシャです。

中村 作品の中で、2つのメーカーを履きこなしているなんて! フリードは本当に柔らかくなりますよね。『白鳥』の2幕のアダージオの最後のほうはもう......。

上野 つぶれてますよね。

中村 最後のバッチュ(軸脚を動脚のつま先で小刻みにたたく動き)のところなんか、いつもギリギリ......(笑)。

上野 トゥがめり込む感じに。わかります!(笑)。

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32回転フェッテの前に......

中村 私、フェッテでトゥシューズを替えたい派なんですよ。

上野 え? フェッテの前で替えるの? ヴァリエーションの後?

中村 そう。だから、いつもスタッフが舞台袖で待ちかまえててくださって、左だけ履き替えてぱっと出る(笑)。

上野 でも、ヴァリエーションの後って、男性がジャンプしたらすぐ出番じゃない? その間に!?

中村 そうなんですけど、スタジオリハーサルでも毎回用意して替えています。替えないと柔らかすぎて無理なんです。フェッテって軸になる左脚をすごく使うので。

上野 もちろん、フェッテは軸脚でしっかり立って、下りてを繰り返さなくちゃならないから......。でも、アダージオとヴァリエーションを踊った感覚でフェッテやりたいって思わない?

中村 フェッテは別物です。新しいトゥシューズで32回転回りたい(笑)。

上野 たしかに、アダージオも、ヴェリエーションも左脚をよく使うから。脚も疲れるけど、トゥシューズもダメになる。

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中村 トゥシューズが柔らかすぎるとさらに疲れるから、フェッテの前にどうしても履き替えたいんです。でも、一度大失敗したことがあって。間違えて、右足用のシューズを用意してたんです。出た瞬間にあれ、おかしいなと。右と左、違いがあるじゃないですか。

上野 ある、ある。

中村 軸が鎌足になったままフェッテしてて、これどうなるんだろうと思いながら、なんとか集中して乗り切りました。

上野 すごい(笑)。32回転、本当に大変ですよね。あそこを乗り切るためにトゥシューズも念入りに選ぶ。

中村 そうですね。『白鳥』のときはすごい量のシューズを担いで劇場に行くけれど、結局使えるのが2、3足だったりします。

上野 本番用に大事に取っておいたものが、ゲネプロで履いてみたらダメだったり。

中村 本当にそれは不安になります。シューズって一つひとつ違うから。水香さんは、フェッテはどこにダブルを入れるとか、決まっているんですか?

上野 私はシングル・シングル・ダブル。全部シングルだとかえってきついんですよね。ダブルは休憩(笑)。

中村 わかります。意外とシングルよりダブルのほうが楽だったりしますよね。

上野 全幕のフェッテって、最高に疲れているときにやらなくてはならないから。そのとき、体がどんなコンディションになっているかわからないのが、怖いところですね。

中村 私は逆に、燃えちゃうというか、勝手にテンションが上がっちゃいます。

上野 あ、それは見ててわかる(笑)。

中村 燃えちゃって、無理そうなことにも挑戦したくなる。後半の16回に連続でダブル入れちゃうこともあります。怖いでしょう(笑)。

上野 強気だね(笑)。

中村 やってやるって炎が出ちゃって、結局空回りしたり。そういうバレエにしちゃいけないんですけど。家族にも、「今日みたいな危ないフェッテは止めて」「もっと安心して見させて」と言われます(笑)。

上野 いや、カッコいいですよ(笑)。挑戦したいという思いの強さは、感動につながると思います。

中村 でも、本当に最後の最後だから。怖くて、舞台袖で逃げ出したい気持ちになることもありますよね。

上野 本当に。黒鳥ってずっと軸が左脚じゃない。私、左脚がかわいそうになっちゃうの。それで、アダージオとヴァリエーションのお辞儀は必ず右脚軸。

中村 あーっ、同じ!

上野 そうか、私だけじゃなかったんだ! 右脚軸でお辞儀をして、フェッテの前に、少しだけ左脚を休めるんです。

――お二人は、写真集を通じてプレゼントするトゥシューズに込めて、どんなメッセージを伝えたいと思われますか。

上野 トゥシューズはとても神秘的で、人間の幻想のひとつだと思います。ふつうはつま先で立つことすらできないのに、バレリーナはトゥで軽やかに踊り、美しいポーズを取る。神秘や夢に携わることのすてきさ、美しさをはぐくむことの大切さ、そんな思いを込めてトゥシューズを贈りたい気持ちです。

中村 バレエは決して簡単な世界ではありません。トゥシューズをもらった子どもたちは、きっとこれからたくさんのことを乗り越えていかなければならない。でも、バレエが好きだという気持ち、自分がこんな表現者になりたいという夢を大切にして、トゥシューズとともに突き進んでほしいですね。

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いつかは『ラ・バヤデール』をダブルキャストで

――2020年はコロナで、舞台芸術界全体が大きなあおりを受けました。この1年でどんなことをお感じになりましたか。

上野 自分と向き合う時間にはなりましたね。9月、『ドン・キホーテ』で久しぶりに舞台に立たせていただいたとき、お客様の「やっと!」という思いを強く感じました。声を出せない状況の中で、お客様が立ち上がって拍手して、気持ちを全身で表現してくださった。それがすごく嬉しかったんです。人との関わりをある程度絶たなければならなくなったからこそ、人同士の心のふれあいや、直接つながることの大切さをあらためて感じた1年だったかなと思います。

中村 本当に大変な1年でしたよね。自粛期間を経て、やっとスタジオでレッスンできるようになったときのみんなのエネルギーがすごくて。私たちダンサーは舞台に立たなければいけないんだなと強く感じました。リモートでもできることはあります。でも、やはり舞台に立つことでこそ、私たちは成長できる。お客様もいろいろな思いを持って観に来てくださる。劇場で同じ時間を共有することで、いろんな思いがわき上がってきて、頑張ろう、この状況を乗り越えていこうと思っていただけたらすごく嬉しいですし。本当にいろいろと考えさせられた一年でした。たくさん踊ってはいないけれど、あっという間にすぎちゃった。

上野 本当にあっという間でしたね。

――2021年に挑戦してみたいことや、これからのバレエのために考えていらっしゃることはありますか。

中村 今まで取り組めなかった様々なことに挑戦してみたいと思っています。舞台に立つことはもちろん、身体のことを学んだり、資格を取ったり。お料理も習ってみたいです。

上野 私も、バレエとお能のコラボなど、新しいお仕事に挑戦する予定があります。新しい挑戦によって生まれる自分を楽しみたい。舞台に関しては、ぜひぜひかなえたい夢があって。いつか一緒に全幕をやりたいねって。

中村 私たち、かなり具体的な話までしています。......言っちゃいますか(笑)?『ラ・バヤデール』をやってみたいなと。

上野 ニキヤとガムザッティ、二人でどっちもいけると思うので、ダブルキャストで。すてきなソロルと、ね(笑)。

中村 私たち身長があるから、長身のすてきな男性にお願いしたい(笑)。

上野 私が今まで共演したガムザッティさんはみんな素晴らしかったけれど、祥子ちゃんと踊れたら最高だなって。すべてのシーンが思い浮かびます。

中村 共演する方が違えば、また新しいものが生み出されます。そこが楽しみであり、魅力的な世界。

上野 化学反応みたいな。

中村 そう! それをまだやっていないわけですから。

上野 やるべきですね(笑)。

中村 ぜひよろしくお願いします(笑)。

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© Mariko Miura(すべて)

――お二人で『バヤデール』!ぜひ実現していただきたいです。最後に、ファンの方々へメッセージをお願いします。

上野 今日はお客様と直接出会えることの大切さを感じることができ、祥子さんともイベントで初めて共演させていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。写真集を少しでも多くの方に観ていただいて、バレエの夢を皆様と共有できたらと願っています。

中村 本当にすてきな写真集ができあがりました。これが今回きりの企画でなく、若い世代のダンサーにどんどんつながっていったら嬉しいなと思います。今日は皆様、本当にありがとうございました。
(Dream the Ballet 2020年12月20日 東京・恵比寿EastGallery)
司会:阿部さや子(バレエチャンネル)

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チャリティ写真集『Jewels』
アートディレクター:こうづなかば
撮影:青木弘
写真提供:Jewels製作委員会
発売・販売元:株式会社Jewels
http://jewels1000toeshoes.com/

※トゥシューズ基金 申し込み期限は2021年2月28日まで
http://jewels1000toeshoes.com/toeshoes/
協力:チャコット株式会社

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