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いよいよ公演を再開するKバレエカンパニー、『海賊』のゲネプロをレポートする

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

熊川哲也芸術監督が率いるKバレエカンパニーが、コロナ禍による約半年の活動休止期間を経て『海賊』で公演を再開し、Bunkamuraオーチャードホールで10月15日に初日を迎えた。
その前夜、映像収録を兼ねた公開ゲネプロが行われた。拍手も、もちろんブラボーもなしだったけれど、キャスト・スタッフ全員の熱い思いが形になり、見守る報道関係者一同が息を呑む瞬間が幾度も訪れた。

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© Hidemi Seto(すべて)

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2007年に初演された熊川版『海賊』は、ストーリー展開がスピーディでわかりやすく、キャラクター一人ひとりが生き生きとつくりこまれて、ドラマとしての厚みを増していることが特徴だ。中でもアリ役は熊川版を象徴する存在で、物語の結末にも大きく関わる。

客電が消えると、宝のありかを示す地図が描かれた紗幕の向こうに、男たちの姿が浮かび上がる。中央に首領コンラッド(堀内將平)。彼の忠実な部下のアリ(山本雅也)、後にコンラッドを裏切る強面のビルバント(西口直弥)が脇を固める。角度を変えながら、ゆったりと体を揺らす男たち。シンプルながら、大海原の波と、海の男のカッコ良さを強く印象づける幕開けだ。紗幕が上がると、赤い帆を掲げた巨大な海賊船が現れ、略奪のシーンから嵐の海、そしてギリシャの浜辺へと、物語はテンポよく進む。
浜辺に水瓶を手にしたグルナーラ(小林美奈)が現れると、これまでの男くさい空気が一変する。かろやかで歌うようなポアントワークが、とにかく可憐。友達の娘たちとヒロインのメドーラ(成田紗弥)も登場し、潮風とたわむれるように踊る。熊川版では、メドゥーラとグルナーラは仲の良い姉妹という設定で、手を取り合う二人の踊りのかわいらしさときたらない。
そこへ、この浜に漂着した海賊たちが現れ、コンラッドとメドーラは一目で恋に落ちる。ところが、奴隷商人ランケデム(石橋奨也)の急襲にあい、娘たちは連れ去られてしまうのだが......。

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奴隷市場でのグルナーラ、メドーラとランケデムのパ・ド・ドゥ、三人のオダリスクたちの超絶技巧のソロ、アリ・メドーラ・コンラッドのパ・ド・トロワ(有名なアリとメドーラのパ・ド・ドゥを改訂)など見所は満載。海賊たちの「ピストルの踊り」や後宮の女たちの踊りなど、群舞も一つひとつが工夫され、ダンスの楽しさにあふれる。音楽の使い方も熊川版ならではで、バレエファンには「エスメラルダ」のヴァリエーションでおなじみの曲で踊られるグルナーラのソロにも注目したい。

今年1月にプリンシパルに昇格した山本は、コンラッドと強い絆で結ばれたアリを好演。大きな弧を描く腕の軌跡や、空中で三日月のように反り返る身体のラインはどこまでものびやかだ。成田のメドーラは繊細かつ音楽的で、回転し始めると、微風の中の風車のように永遠に回っていそう。コンラッド役の堀内には、すでに"何かを背負って立つ男"の風格が備わっていた。端正な表情のままジャンプで滞空し、その残像がくっきりと残る。
観客席のあちこちから、うっかり拍手をしそうになって思いとどまる「うっ」という息づかいが何度も聞こえた。また、拍手がないゆえに、踊り終えたダンサーたちの激しい呼吸も、舞台上からかすかに聞こえた。見ている間、劇場にいるのに"野外"の風を感じたのは、キャスト全員が『海賊』の世界のイメージを強く持って踊っていたからに違いない。コロナ禍を経た今だからこそ、生身のダンサーが踊ることの意味が強く響いてくる。

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なお、配役は毎回変わり、中村祥子と遅沢佑介が今作をもってプリンシパルを退くことも注目されている。また、今回の公演はKバレエ初の映画館ライブビューイングと、オンラインライブ配信でも楽しめる(オンライン配信は24時間アーカイブ配信もあり)。熊川哲也芸術監督は開幕に際し、以下のメッセージを寄せている。

熊川哲也メッセージ
約半年におよぶ活動休止期間を経て、本公演『海賊』がKバレエ カンパニー再始動を飾ることになります。
社会全体が新しいスタイルへの転換を求められる今、劇場芸術の世界を生きる我々もまた、必要な変化に柔軟な発想をもって対応していかなければなりません。
2007年に初演したこの『海賊』は、僕がそれまでに手掛けたどの古典バレエよりもオリジナリティにあふれ、まさに他に類を見ない、「Kバレエの『海賊』」と誇れる作品と自負しています。
この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはずです。
そのひとときを共にする観客の皆さんにも、この舞台が明日へと向かう大きな活力をもたらすものとなることを願っています。

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© Hidemi Seto(すべて)

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『海賊』
Bunkamuraオーチャードホール
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2020corsaire

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