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池田理沙子=インタビュー「新国立劇場のバレエ復活の舞台『竜宮』でプリンセス 亀の姫を踊ります」

ワールドレポート/東京

インタビュー=関口紘一

――一時は舞台はもちろん、リハーサルもクラスもできないというバレエダンサーにとって大変な事態になってしまいました。やっと7月24日から『竜宮』の上演が決まりました。リハーサルはどの程度、進行しておりますか。

池田 はい、今日(7月17日)は、2組のキャストで2回通し稽古を行いました。

――そうですか、良かったですね。一時はどうなるのだろう、と見守るしかなかったですからね。池田さんも驚かれたのではないですか。

池田 そうですね、スタジオも全く使えないし、リハーサルはおろかクラスもできない事態になってしまったので。ただその中で、できることを考えなければいけないな、と思いました。そんな状況でしたから、自宅で過ごすことも多くなり、自分自身の身体を見つめ直す時間ができました。
家の中ですから大きく動けるわけではありませんが、バーレッスンに重きを置いて基礎を見直しました。バーレッスンの姿を自分のスマートフォンに撮って、毎日見返すことで、今まで自分では気付かなかった身体のクセ、あるいは筋肉の左右差だったり、呼吸の仕方などを、しっかりと見直すことができた良い機会だった、と思っています。

――リノリュウムはお持ちだったのですか。

池田 リノリュウムは今回の事態のために購入しました。

――カンパニーの対応はありましたか。

池田 ええ、もちろん。平日は毎日、バレエ団の先生方がオンライン・レッスンをしてくださいました。自分一人で続けるよりはずっとやり易かったですし、リフレッシュになり、鍛錬にもなりました。吉田都次期芸術監督も毎土曜日にはオンライン・レッスンを配信してくださっていました。

――カンパニー以外のオンライン・レッスンを試みたりはなさいましたか。

池田 はい、山本康介先生やイ・ソン先生のインスタグラムのレッスンを受けさせていただきました。他にはタマラ・ロホさんやマラーホフさんのレッスンも受けました。

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© Chacott

――何か特別なことを始められたりしましたか。

池田 そうですね、元々、ピラティスをスタジオに行ってマシーンを使ってやっていましたが、スタジオが使えなくなったので、マット・ピラティスをオンラインで先生と繋げて直接指導していただきました。ピラティスは良いリフレッシュになり、自分の身体のためにもなりました。それからバレエ団でも多くの人がやっていましたが、マスクをして縄跳びで体力作りとジャンプ力が低下しないようにしていました。二重跳びにもはまりました。

――やはり身体が一番心配ですからね。Dance Cubeでもヨーロッパとアメリカのソリストクラスのダンサーにインタビューして、こうした事態にどのように対応していたか、を聞きました。新しく楽器を習い始めたとか、お料理を作り始めたとか、ソフト面でも新たな試みをしている人がいました。

池田 私は英語に磨きをかけようと、マンツーマンのオンラインの英会話を始めました。『不思議の国のアリス』を上演する際には、クリストファー・ウィールドンさんとか、外国の振付家の指導を受けることも多いので、自分の言葉でうまくコミュニケーションをとりたい、と思い英語の勉強はしていました。さらにオンラインの英会話を始めたところ、とても刺激的で楽しかったので在宅期間中はずっとやっていました。

――結局、新国立劇場バレエは『マノン』の上演以後は、舞台が無くなってしまったのですね。

池田 2月の『マノン』2公演と「DANCE to the Future 2020」も中止。5月にはキトリを踊る予定でした『ドン・キホーテ』、そして新国立劇場に加え愛知と群馬で行う予定だった『不思議の国のアリス』も中止でした・・・。

――そして新国立劇場バレエ団の公演再開は、およそ半年ぶりとなる7月24日初日の創作バレエの『竜宮 りゅうぐう』〜亀の姫と季(とき)の庭〜、ということになりました。バレエの舞台の再開が決まった時はどんなお気持ちでしたか。

池田 素直に嬉しかったです。私の中でのバレエというのは、ダンサーを始めスタッフの方々全員で全身全霊を込めて創りあげて、舞台を観てくださっているお客様の心と共鳴したときに生まれる芸術、と思っています。この2ヶ月くらいの間ずっと家に居て、舞台に立ちたい気持ちや同じカンパニーの方々と一緒に踊りたいという気持ちが日に日に増していきました。そうした気持ちが膨らんでいった中で、この『竜宮』の公演が決まったのでとても嬉しかったですし、それと同時に、今まで当たり前のように舞台に立てていましたが、実際に自分が舞台で踊れることやカンパニー全員で舞台を創ること、お客様に劇場に来ていただける環境があることの大切さ、有り難さを痛感しました。

――そうですね、やっぱり、観客と向かい合って踊らないとバレエじゃないみたいと言いますか。

池田 こういう中でバレエ舞台のオンライン配信もずいぶんと増えていましたね。私もたくさん拝見させていただいたのですが、やはり、生の舞台を観て感じられる感動は、また、別物なのかな、と改めて思いました。

――オンラインで配信された作品を観られて印象に残った舞台はありましたか。

池田 新国立劇場が配信した、私がまだ入団する前の『ドン・キホーテ』の舞台だったり、新型コロナ禍で舞台が中止になる前に上演された『マノン』も観ました。
マリインスキー・バレエの『眠れる森の美女』、英国ロイヤル・バレエの『冬物語』、最近ではネザーランド・ダンス・シアター(NDT)の舞台にも心打たれました。

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太郎&亀の姫 Photo by Isamu Uehara

――『竜宮』では、浦島太郎役の奥村康祐さんと踊られるのですね。時間がテーマとなっていると聞きましたが、表現することは難しいですか。

池田 今回の『竜宮』は、御伽草子に基づいて森山開次さんが創られた作品で、浦島太郎が助けた亀は竜宮城のプリンセス 亀のお姫様でした。太郎はお礼に竜宮城に連れて行ってもらい、そこには美しい四季を一度に見ることができる「季(時)の部屋」があります。太郎はそこで時を経て、故郷に帰って玉手箱を開けたら、お爺さんになっていた。そして鶴になって・・・、という一連の時の流れに沿って物語が展開していきます。太郎と亀の姫との心の触れ合いも時の流れと共に変化していきます。お客様にはそういうことを感じとっていただけましたら嬉しいです。
リハーサルでは、開次さんが思い描かれている世界観やイメージの方向性をすごく明確に示してくださるので、私たちダンサーがそれを身体に落とし込むのはなかなか難しいことなのですが、とてもやり甲斐を感じます。そして物語の展開もそのイメージもとてもおもしろいです。

――太郎と亀の姫のロマンスもあるのですか。

池田 はい、あります。そして竜宮城では、ほんとにたくさんの素敵な海の生き物のキャラクターが登場します。とてもキュートで可愛いらしいです。

――演出・振付・美術・衣裳が森山開次ですから、きっとそれぞれにアイディアがあって、楽しく生き生きとした生き物たちが泳いでいるのでしょうね。

池田 開次さんがイメージするフグだったりイカだったりが、こういう感じの衣裳で思い描かれていて、振りにしてもこういう感じで動きを捉えているのか、と改めて納得しました。すごく可愛くデザインされていますし、とても斬新で独創的です。

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フグ Photo by Isamu Uehara

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金魚 Photo by Isamu Uehara

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イカ Photo by Isamu Uehara

――そうですか、それは楽しみですね。振付はいかがですか。

池田 振付は創っていく過程で開次さんが、ここはこういうエネルギーの持って行き方をしたい、とか、こういう風に表現したい、というイメージをすベてを伝えてくださるので、それをダンサーもスタッフも共にすべて一から作り上げていく、というやり方です。
音楽もとても大事にされていて、無音の音の間を作って感情を表現するということもあります。観ていると、言葉が紡ぎ出されていくような振付ですが、ただ、それを身体に落とし込むのはなかなか難しいです。小道具も開次さんがご自身で作られていて、いろいろ楽しいものがたくさん出てきます。亀の姫の場合は打ち掛けのような羽衣で踊りますし、海の生き物たちもそれぞれの個性的な衣裳を着けて動きます。小道具もいろいろありますし。
能楽や歌舞伎などの動きのニュアンスを工夫してバレエの動きの中に採り入れる試みもあり、日本の伝統芸術の美しさも感じられる舞台になっています。今まで経験したことのない動きが振付に組み込まれていて、私たちにも挑戦でした。全2幕構成で、美術も開次さんが担当されていて、私たちもまだ全部は見せてもらっていませんが、どんな情景になるのか、とても楽しみにしています。

――そうですか、久しぶりのバレエの舞台でもありますし、たいへん楽しみです。
それから池田さんは、クラシック・バレエの主役を踊ってこられていますが、コンテンポラリー・ダンスについてはどう思われていますか。

池田 コンテンポラリー・ダンスも個人的にとても好きです。クラシックに比べると経験も少ないですが、これからもっとたくさん挑戦したいな、という想いはあります。新国立劇場バレエでは、クリストファー・ウィールドンさんの『DVG』を今年の1月に踊らせて頂きました。

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© Chacott

――コンテンポラリー・ダンスの注目している振付家はいますか。

池田 私は観るのも好きなので、フォーサイスの『精確さによる目眩くスリル The Vertiginous Thrill of Exactitude』とか『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテッド』も好きですし、ナチョ・ドゥアトがバッハへのオマージュとして振付けた『Multiplicity』より「チェロのパ・ド・ドゥ」には大変感銘を受けて、いろいろなダンサーが踊っているのを観ています。すごくおもしろかったです。

――今後、新国立劇場バレエのレパートリーで、特に踊ってみたい作品はありますか。

池田 私はマクミランの作品が大好きですので、『ロミオとジュリエット』はぜひ、踊ることができたらと願っています。

――マクミラン作品は吉田都次期芸術監督が指導されるようになると、また、一段と輝くのではないでしょうか。

池田 そうですね、中止になってしまいましたが、『ドン・キホーテ』のリハーサルは始まっていて吉田都次期芸術監督が見てくださっていました。歩き方一つにしても、学ぶ事がたくさんあり、指導して下さった事をひとつ一つ吸収していきたいと思います。

――公演中止は残念でしたね。
それでは最後に、これからどんなバレエダンサーを目指して活動していきますか。

池田 そうですね、いい意味でなんでも踊れるダンサーになりたいです。どの作品にも溶け込めると言いますか、その役に入り込めるダンサーになりたいと思っています。自分の弱いところを克服して、しっかりとした表現力を身につけていかなければならないとか、課題は山積みですが、それも踏まえて今まで踊らせていただいた経験も生かして挑戦していきたいです。あらゆる役を踊ってみたい、と思っています。

――ドラマティックなバレエがお好きですか。

池田 そうですね、欲を言えばキリがないんですが、やはり、マクミラン作品が好きなようにドラマティックな役に、積極的に挑戦していきたいです。

――本日は公演も近くお忙しいところ、時間をとっていただきましてありがとうございました。新型コロナ禍で失われた舞台を取り戻すように、ぜひ頑張ってください。期待しております。

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© Chacott

新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2020
世界初演・新作バレエ公演「竜宮 りゅうぐう」〜亀の姫と季(とき)の庭〜
Japanese Fairy Tale Ballet for all the Family
World premiere / a new production of ballet"RYUUGUU - The Turtle Princess"

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【公演日程】
2020年7月24日(金・祝)〜7月31日(金)
※7月30・31日は公演中止となりました

【会場】
新国立劇場 オペラパレス

【全国公演情報】
2020年9月19日(土)14:00
長崎県/アルカスSASEBO大ホール

2020年9月22日(火・祝)14:00
富山県/オーバード・ホール

詳細はこちら
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/

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