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谷桃子バレエ団が高部尚子演出の『リゼット』伊藤範子の新作『Fiorito』を創立70周年記念公演として上演した

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

谷桃子バレエ団 70周年記念新春公演2020

『リゼット』谷桃子:再振付、高部尚子:演出・指導、ジャン・ドーベルヴァル:原振付、アレクサンドル・ゴルスキーによるスラミフ・メッセレル、アレクセイ・ワルラーモフ:振付
『Fiorito』伊藤範子:演出・振付

創立70周年を迎えた谷桃子バレエ団が、恒例の新春公演を記念公演として伊藤範子の演出・振付による新作『Fiorito』と、カンパニーの得意演目のひとつ『リゼット』を高部尚子の演出により上演した。
伊藤範子 の新作は『Fiorito』。イタリア語で「華麗な」とか「栄華を極める」という意味だそうだ。音楽はいろいろと探し、指揮者の福田一雄の協力を得て19世紀ロシアのワシリー・カリンニコフの交響曲第2番を選択したという。カリンニコフは日本のバレエ界ではあまり知られていないと思われるが、カンパニーの70周年を祝い、伝統と革新によって未来に向かって進んでいくイメージに合致したのであろう。カリンニコフの交響曲は、34歳で夭折した作曲家とは思えない、明るい音調に感じられた。それが作曲家の生命が求めたものなのかもしれないが、重低音が響いても音の底に流れているものは明るく、屈折した感情は感じられなかった。メロディも爽やかで浮き立つような気持ちにさせてくれるものが多かった。伊藤は曲の構造をよく把握して動きを作っていた。
緑(Verde 山口緋奈子・吉田邑那)、赤(Rosso 馳麻弥・安村圭太)、白(Bianco 永橋あゆみ・今井智也)、黒(Nero 佐藤麻利香・三木雄馬)という四色の織物を四組のプリンシパルのペアとアンサンブルによって振付けた。背景には不定形のオブジェを据えてそれぞれの色を映した。谷桃子バレエ団の伝統を成す古典名作へのオマージュを表した振りもあり、白で踊られた『ジゼル』『白鳥の湖』『ラ・バヤデール』などが印象に残った。
全体に大きな振りで、「伝統と革新のSpiral」というイメージがあったからだろうか、あまりフォーメーションを強調せず、群舞の動きの流れを舞台全体に大きく展開させた。骨格のしっかりしたバレエで、プロットレスでも谷桃子が振付けた『ロマンティック組曲』などとは異なった作りだったが、やはり、深奥では響きあっているのであろう、通低する香りは感じられた。

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「Fiorito」© スタッフ・テス

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「Fiorito」© スタッフ・テス

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『リゼット』© スタッフ・テス(すべて)

そして高部尚子が演出した『リゼット』は楽しかった。主役の竹内菜那子は高部の指導によりコツをつかんだのだろうか、終始、リゼット魂全開でイキイキとチャーミング、そして可笑しかった。
コーラを踊った檜山和久もしっかりと女性を立てながら、自身の見せるべきところは上手く表して、あまり急がずじっくりとみせていた。このペアは全3幕の長丁場を一貫したペースで踊り、好感が持てる良い組み合わせだと思う。
嵐に襲われた後の第3幕でリゼットは、コーラが家の中に麦藁に隠れて忍び込んだとは露知らず、てっきり一人だと思い込んで、結婚して子供を産んで育てて、、、と空想の羽を伸ばしてを満喫する。その時、藁束に隠れていたコーラが現れてびっくり仰天!ここで二人きりになってしまったコーラと一生懸命に距離を取ろうとするところなど、実に少女らしくその純粋な心が受けた衝撃に説得力があったし、とても可愛らしかった。このシーンをひとりよがりのコミカルな面だけを強調せず、あくまでも突然二人きりになってしまったリゼットの気持ちにしっかりと寄り添っていた。こうした演出は、登場人物の気持ちを率直に表してリアリティがあり優れている。ここに谷桃子以来の伝統が息づいている、と感じる人も多いのではないかと思う。もちろん、丁寧に登場人物に寄り添っていくことこそが、踊りをいっそう際立たせるはずだ。
岩上純のマルセリーヌもなかなか味があった。木靴の踊りでも魅せたから、このメロディが聴こえてくると、なんだかほっこりとした気持ちになった。リゼットとの細かいやりとりなどはややスムーズさに欠けるところもあったが、人物全体を見せることには成功している。
谷桃子の古典と創作を両輪としてカンパニーを進めていく、というスピリットを高部尚子や伊藤範子などの指導者が、より創造的に発展させていくことに大いに期待を抱かせる公演だった。
(2020年1月18日 東京文化会館 大ホール)

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中村慶潤(ニケーズ)

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竹内菜那子(リゼット)、檜山和久(コーラ)

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齊藤耀(リゼット)、牧村直紀(コーラ)(他日公演)

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他日公演

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