英国ロイヤル・バレエ プリンシパル、平野亮一が『オネーギン』のタイトル・ロールでデビュー!

ワールドレポート/ロンドン

アンジェラ・加瀬  Text by Angela Kase

英国ロイヤルバレエは1月18日〜2月29日までロイヤル・オペラハウスで、ジョン・クランコ振付のドラマティック・バレエの名作『オネーギン』を5年ぶり4配役で再演している。

初日まで2週間を切った1月7日にそれまで発表されていた配役に大幅な変更が加えられ、国内外で人気の高い男女プリンシパルの名前が主役リストから消えて大騒ぎとなった。
バレエ関係者なら誰もが知っていることだが、クランコ作品はクランコ協会によって厳しく管理されており、作品のイメージに合わないダンサーや作品を安全裏に踊ることが出来ないダンサーには最終的に出演許可がおりない。今回の配役変更も、そのような理由からであろうと多くの関係者や事情通のファンが噂していた。

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平野亮一

1月21日、プリンシパルの平野亮一がオネーギン役でデビューした。相手役のタチアナはマリアネラ・ヌニェズ、オリガ役を高田茜、レンスキー役はニコル・エドモンド、グレミン侯爵役はルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロドであった。
平野は登場から大変華があり、1幕の見どころである鏡のパ・ド・ドゥではミステリアスな雰囲気を醸し出しながら鏡から登場して少女のタチアナを魅了。その後は得意のパートナーリングを奮ってアクロバティックな振付を見事に制し、デビューとは思えない好演を見せた。

2幕タチアナの名前の日のパーティーの場面の平野には、サンクトペテルブルグの貴族らしい品格の高さがまばゆいばかり。一転して3幕の冒頭では、放浪の旅を重ねてもレンスキーを決闘で殺してしまった心の呵責から逃れられず、別人のように老け込んで人生に疲れたオネーギンとして登場。それぞれの幕ごとの役の演じ分けが白眉であった。そしてクライマックスの別れのパ・ド・ドゥでは、美しい貴婦人となったタチアナにひたすらに愛を乞う一途さが切なく、観客の心を鷲掴みにして離さなかった。

満場の観客は1幕の早いうちからヌニェズ、平野、高田、エドモンズの熱演に興奮を抑えきれず、場面場面で声援が送られ、大きな拍手がまき起こり、またカーテンコールではいくつもの大きな花束が運び込まれて舞台とダンサーを美しく彩った。

クランコ協会のお墨付きをもらった平野のオネーギンが見られるのは、今シーズン後2回。平野の円熟の極みともいえる一挙手一投足を瞼に焼き付けることの出来るロンドンの観客は幸せである。

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© 2020 ROH Photo By Angela Kase

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