幻のジャポニスム・バレエ音楽、レクチャー・コンサートで蘇る!

ワールドレポート/東京

森 瑠依子 Text by Ruiko Mori

1月20日に東京で「日本のうたとロシア・バレエの出会い」と題したレクチャー・コンサートが開催される。19世紀末のロシアで日本文化の影響を受けて創作され、人気を集めたバレエ『ダイタ』(1896年ボリショイ劇場初演、ホセ・メンデス振付、ゲオルギー・コニュス作曲)を解説と歌で紹介するもので、バレエ史研究家の斎藤慶子さんによるレクチャーと、バレエ音楽のピアノ演奏、さらに明治時代の日本の流行歌の実演という構成で行われる。

19世紀後半、2度にわたるパリの万国博覧会などを通して、ヨーロッパでは日本ブーム「ジャポニスム」が沸き起こった。バレエ界もその影響を受け、パリで『ル・レーヴ(夢)』(1890年パリ・オペラ座初演)など、日本を舞台にしたバレエが複数制作されて人気を集めた。
ジャポニスムの影響はフランスと関係が深かったロシアのバレエにも及び、1896年から1900年という短期間に、日本を題材にしたロシアのオリジナル・バレエが3作品初演された。その第1作が日本の神話に想を得た『ダイタ』で、『ル・レーヴ』とはヒロインの名前こそ同じものの、物語も音楽も異なった作品だ。『ダイタ』の音楽には、ロシア海軍の音楽隊が日本寄港時に収集したといわれる明治期の日本の歌が生かされており、衣裳や美術といった視覚的なものだけではない、ロシア人の日本文化への真摯な態度がうかがわれる。ちなみに、『ル・レーヴ』は、昨年夏、京都バレエ団がパリ・オペラ座のオニール 八菜の主演により復元上演している。

『ダイタ』は初演から3年ほど上演され、その後日露関係の悪化のために表舞台から消えた。そして近年再評価が進み、初演から120年後の2016年に様々な形での復活上演が始まった。ロシアだけでなく日本でも今回レクチャーを担当する斎藤さんの監修によるピアノ演奏での曲紹介や、同氏が企画協力したバレエの部分上演(新振付)が実現している。

日本ではほとんど知られていないミステリアスなロシア生まれの日本バレエ『ダイタ』。オリジナルの振付はもう見ることができないが、台本と音楽から当時のロシア人が未知の国日本をどのように感じ、表現したのかの一端には触れることができる。そしてそこにはわれわれの知らない日本の一面が描かれているのかもしれない。1世紀以上の時を超えて一夜甦る、ロシア・バレエと日本の歌の邂逅を楽しみに待ちたい。

レクチャー・コンサート 日本のうたとロシア・バレエの出会い〜明治の流行歌とバレエ『ダイタ』(1896年)

日時:2020年1月20日(月) 開場18:30  開演19:00
場所:スタインウェイ・サロン東京 松尾ホール
http://www.h-matsuo.co.jp/showroom/

出演者:鷹野恵(ソプラノ)澤田まゆみ(ピアノ)斎藤慶子(お話)
入場:無料
予約・お問い合わせ:balletdaita@gmail.com
件名「ダイタ申込」にて、お名前と人数をお知らせください。
※ご予約のお客様を優先してご案内致します。

主催:日本のうたとロシア・バレエの出会い運営委員会
科学研究費助成事業:若手研究「帝政期・革命期ロシアのジャポニスム・バレエ 歴史・美学・政治」(2018〜2021年度)
共催:北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター

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