Noism、新体制へ。森優貴・金森穣のダブルビルを12月より上演

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

日本初の公共劇場専属ダンスカンパニーとして、2004年に誕生したNoism。3年ごとの契約更新を経て15年間にわたり、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動してきた。
2022年8月末までの契約更新を受け、10月21日、芸術監督の金森穣らがNoismの新体制と今後の公演について、都内で記者会見を行った。

Noismの契約更新は、新潟市長の交代と市の財政悪化を背景に遅れていたが、市の有識者による検証会議を経て、9月末正式に決定となった。

国内外からオーディションで選ばれたNoismのダンサーたちは、新潟に移住してきて共に身体訓練やリハーサルを行い、世界に向けて作品の創造・発信を続けている。稽古場確保の不安がなく、集中して作品づくりに取り組めることは、劇場専属ゆえの強みだ。Noismがその強みを最大限生かして質の高いクリエーションを続けていることは、検証会議でも高く評価された。その一方で、「地域貢献の活動が不十分」「金森氏の権限が拡大している」「予算・労務管理の視点の欠如」などの課題が指摘された。Noismの活動継続は、これらの課題に取り組むことが前提とされている。

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Noism芸術監督 金森穣

このような経緯を受け、第6期となるNoismの活動形態について、金森監督が説明した。
カンパニーの総称を「Noism Company Niigata」とする。また、これまでのNoism1とNoism2(研修生カンパニー)の2部体制から、プロ選抜カンパニーのNoism0を加えた3部体制に変更する。
「Noism0という少数精鋭のカンパニーをつくることで、『予算は少ないけれどNoismを招聘したい』というケースにも対応できる体制とし、レパートリーをより充実させていきます」と金森監督。

来年からは、地域貢献活動として経験者向けのオープンクラスを開講。これは、Noismメンバーが毎朝トレーニングしている、バレエに東洋の身体技法を取り入れた独自のメソッド「Noismバレエ」を学ぶ機会となる。また、10年ほど前から一般市民向けに行ってきた「からだワークショップ」を定期的に開講するという。
「われわれには、身体表現の専門家として培ってきた体にまつわる知識があります。それを市民の皆さんに提供していくことで、Noismの存在をより身近に感じていただけたら。世界に向けた作品の創造・発信と地域貢献活動を両立させることには覚悟がいりますが、この課題に取り組むことはわれわれにとっても得るものがあると考えています」
さらに、ゲストの振付家に作品を委嘱することで、市民により多角的なNoismの芸術性を提示していきたいという。その第一弾が、ドイツ・レーゲンスブルク歌劇場ダンスカンパニーの芸術監督を務めた森優貴による新作と、金森穣による新作のダブルビルだ。

森優貴は日本人として初めて、欧州の劇場の芸術監督を務めた振付家で、ドイツ国内外で高い評価を受けている。金森は2年ほど前から、Noism2のゲスト振付家として招聘するため、やりとりを続けていたという。
「そんな矢先、『日本に帰ろうと思うんだ』と明かされ、それなら帰国後第1作をNoism1に振付てもらえないかと依頼したところ、彼は快く引き受けてくれました。今まさにものすごいスピードでクリエイションが進んでいて、みんなついていくのが必死という感じですので、ぜひご期待いただければと思います」と金森監督。

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りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 支配人 仁多見浩

金森の新作は『シネマトダンス-3つの小品』。3つの小品それぞれが、映像を用いつつ「舞踊でしか表現できないこととは何か」「舞踊とは何か」を問いかける作品になるという。

記者席からは、新体制や予算について数多くの質問が寄せられた。市から地域貢献やスタッフの超過勤務縮減といった課題が提示された一方で、市からの補助金はむしろ減る可能性がある。この厳しい状況の中で、これまでどおりの、世界に向けた創作活動をどう進めていくのか? 
金森監督は、公演への集客はもちろん、企業などから資金援助を求めるなど、予算獲得のためにあらゆる努力をしていくと述べた上で次のように語った。
「われわれが日本で最初の劇場専属舞踊団として、この困難な局面をどう乗り越えるかが、今後のモデルケースになるはずです。そう思うと少し覚悟が決まります。今はこの課題にぶつかっていくしかない」。
「21世紀の舞踊界で、基礎訓練をこれほど重視しているカンパニーはなかなかないと自負しています。寄せ集めではなく、日々、同じ訓練法でトレーニングした集団にしか表現できないものがある」。
「地方は、財政は厳しくても、時間と場所はまだありますよ。空いている時間と場所を使って、どのように良いものを創造していくか考えていけば、まだまだこの国の劇場文化には可能性があると信じています」と金森監督は締めくくった。

質の高いダンス作品を、新潟から世界へ発信し続けるという創立当初からの志は揺るがない。16年目を迎えたNoismの新しいステップを心して見守りたい。

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森優貴/金森穣 Double Bill

2019.12.13(金)- 2020.01.18(日)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉/彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
https://Noism.jp

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