池袋の街に世界の舞台芸術が集結! 東京芸術祭9月21日より開催
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坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi
東京・池袋の街に、世界の舞台芸術作品が集結する東京芸術祭2019が、9月21日から64日間にわたって開催される。国内外の話題の舞台、ダンス、伝統芸能、国際共同製作、観客参加型の野外公演など、選りすぐりの全27プログラムは実に多彩だ。今回創設された「東京芸術祭ワールドコンペティション」にも注目が集まる。
7月26日に行われた記者発表では、総合ディレクターの宮城聰が、東京芸術祭の目指すものやラインナップについて語った。
今回の芸術祭のテーマは、「出会う。変わる。世界。」舞台を通じて、異なるものの見方と出会い、自分が変わる。それが、世界を変えることにつながっていく――舞台芸術の魅力をストレートに表すテーマだ。
「貧富の差、民族や宗教、価値観や信条の違いなど、様々な差異による『分断』が世界中で進んでいます。本来、舞台芸術やその原型である祭りには、分断を縫合し、人を結びつけるパワーを持っているはずです」。
ところが、東京の舞台芸術界は「閉じて」おり、本来の力を失っているのではないかと宮城ディレクターは指摘する。舞台芸術が「つくる側」と「観る側」を合わせた舞台関係者だけで自己完結し、「それ以外の人々」と交わることがない。また、作り手も観客も、小劇場、ミュージカル、バレエ、伝統芸能...などジャンルごとに細分化されがちだ。「決まったお客様と作り手の間で作品が循環している。むしろわれわれが分断に荷担してしまっているのではという忸怩たる思いがあります。東京は、アジアや日本のアーティストが世界に向けて作品を発信するのにふさわしい場所。東京の舞台人は、率先してこの『分断』という課題に取り組む必要があると思います」。
そのためにはまず、多様性のメリットをアピールする必要がある。多様な作品を通じて「こういうことを大事にする人たちもいるんだな」と、自分の中に「物差しを増やす」おもしろさを実感してほしいという。物差しを増やすための新企画が「東京芸術祭ワールドコンペティション」だ。
コンペティションでは、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカの5地域と日本から選ばれた、今後の舞台芸術を担うアーティストの6作品を上演。誰もが作品の背景を深く知り、語り合えるよう、各地域のアーティストを選んだ推薦人によるトークイベントが行われ、審査の過程も公開される。観客の投票による「観客賞」も設置。「舞台芸術の優劣を決めることは不可能だとよく言われますが、アーティストたちがより優れた作品を目指して切磋琢磨しているのは事実。『優れた作品』とは何かを議論する中で、新しい物差しを見いだすことがこのコンペティションの目的です」。
「BLIND」Photo:Patrick ARGIRAKIS
「ひとはおどる」郡上踊り保存会 Photo:梁丞佑
コンペティション作品以外のプログラムも、ジャンルの枠を越え、未知の「物差し」と出会えそうなラインナップとなっている。
たとえばオランダのデューダ・パイヴァカンパニーによる『BLIND』は、ダンスとパペット(人形)を組み合わせたダーク・ファンタジー。作者が幼少時に失明した体験をもとに、心の眼が目撃した不可思議なドラマを描くという。ロシアのレッド・トーチ・シアターが上演するのは、全編手話による『三人姉妹』。繊細で濃密なチェーホフ劇の世界が、言葉を使わず、手話と身振りと息づかいだけで展開される。「どちらも、感覚の『欠落』が、未知の世界への入り口を開いてくれるような作品」と宮城ディレクター。
また、豊島区内の商店街の記憶をモチーフにした山車が池袋の街を練り歩くパフォーマンス『移動祝祭商店街』、総勢80名の出演者により、夕刻〜夜の東京芸術劇場前広場で上演される『吾輩は猫である』など、街そのものを舞台とした野外作品も多い。飛び入り参加歓迎で例年好評の民俗舞踊フェスティバル『このほしでひとはおどる』は、今年は東池袋中央公園で開催される。これらは、無料〜ワンコインで気軽に観ることができるのも魅力的だ。
神村恵の新作ダンス『ストレンジ・グリーン・パウダー』は、目白庭園内の茶室で公演。100名を越える田楽法師たちが舞い踊る『大田楽いけぶくろ絵巻』、近藤良平率いるダンスカンパニー・コンドルズと豊島区民による新作『ブリッジズ・トゥ・バビロン』は、8つの劇場を擁するHareza池袋最大の劇場・東京建物Brillia HALLのこけら落としとなり、祝祭感たっぷりの舞台となりそうだ。
「Bridges to Babylon」Photo:HARU
秋の約2か月間、舞台芸術のエネルギー渦巻く池袋の街へ、新たな感覚を開いてくれる出会いを探しに、ふらりと出かけてみてはいかがだろうか。
東京芸術祭2019
2019年9月21日(土)〜11月23日(土)
https://tokyo-festival.jp/2019/
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