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オニール 八菜が「ル・グラン・ガラ 2019」でフォーサイスの『ヘルマン・シュメルマン』を踊る

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

日本人の母とニュージーランド人の父を持ち、8歳まで日本でバレエを習い、日本語を自在に話すパリ・オペラ座バレエのプルミエール・ダンスーズ、オニール 八菜。彼女は日本は言うに及ばずヨーロッパでもたいへん人気が高く、次のエトワール有力候補であり、パリ・オペラ座バレエの次代を担うダンサーとして大きな期待を寄せられている。
オニール 八菜は、今日までしばしば日本の舞台でも踊っているが、そのほとんどが著名な古典名作バレエ。ロシアやニューヨークでも同様であり、今年4月に初めてお目見えしたロンドンでもセルジュ・リファール振付の『白の組曲』(1943年初演)とヌレエフ版『シンデレラ』を踊った。しかし7月23日から開催される「ル・グラン・ガラ 2019」では、ユーゴ・マルシャンとともにウィリアム・フォーサイス振付の『ヘルマン・シュメルマン』を踊る。

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© Ann Ray

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© Ann Ray

オニール 八菜がパリ・オペラ座に登場して、わずか3回のコンクールでプルミエに昇級し、多くの舞台で踊って称賛されたことはよく知られている。一応、復習しておくと2015年4月に『白鳥の湖』のオデット/オディールを踊って全幕のデビューを果たした。実は、彼女は『白鳥の湖』のパ・ド・トロワでデビューする予定でそのリハーサルに励んでいる時に、別の期日に「オデット/オディールを踊ることになった」と当時の芸術監督ミルピエから告げられた。デビューの舞台を踊る前に、主役を踊ることが決定したというまさにサプライズだった。さらに5月には、<パリ・オペラ座バレエの重要人物>ピエール・ラコットに請われて、『パキータ』をマチアス・エイマンをパートナーに主演し、コペンハーゲン・ツアーでもこの作品を踊った。11月には『ラ・バヤデール』のガムザッティを踊り、オペラ座ダンサーのポスト・ヌレエフ世代がやや話題不足気味だったこともあってか、パリのバレエ・ファンの注目を一気に集めた。翌2016年には、プルミエール・ダンスーズに昇級し、バレエ界のアカデミー賞とも言われるブノア賞を弱冠23歳で受賞。ボリショイ劇場でユーゴ・マルシャンと、マリインスキー劇場でキミン・キムと、ニューヨークのYAGPのガラ公演、京都では『ドン・キホーテ』全幕をカール・パケットと踊るなど、国際舞台を彩って世界にその名を知らしめた。
そうした活躍ぶりが際立っているため、彼女はどうしてもクラシック・バレエのダンサー、とイメージされることが多い。実際、オニール自身も幼い頃からパリ・オペラ座バレエが大好きで、エトワールの座に大きな憧れを抱いていた。しかし同時に、当時のパリ・オペラ座バレエ芸術監督ミルピエからも積極的に登用され、バランシン(『真夏の夜の夢』『ラ・ヴァルス』『ヴァイオリン協奏曲』『アゴン』『ジュエルズ』)やロビンズ(『ゴールドベルク変奏曲』)も踊っていた。そしてフォーサイスの『パ・パーツ』『アプロクシメイト・ソナタ』、ジャスティン・ペックの『イン・クリーシズ』『黄昏時』、ミルピエの『ダフニスとクロエ』、ホフェッシュ・シェクターの『ザ・アート・オブ・ノット・ルッキング・バック』、レオン&ライトフットの『運命の指先』などコンテンポラリー作品でも多くの舞台に登場している。オニールがパリ・オペラ座の舞台で踊った、そうした20世紀から21世紀に至るコンテンポラリー作品の中でも評価が高かったのが、今回「ル・グラン・ガラ 2019」で踊るフォーサイス振付『ヘルマン・シュメルマン』である。

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© Ann Ray

この作品は1992年にニューヨーク・シティ・バレエで、ジャンニ・ヴェルサーチの衣装、トム・ヴィレムスの音楽でクインテッドとして初演され、その後フランクフルト・バレエ団で上演される際に改訂され、パ・ド・ドゥが付け加えられている。新たに追加されたパーツは、パ・ド・ドゥのそのものをモティーフとしたコンテンポラリー・バレエで、英国ロイヤル・バレエでシルヴィ・ギエムがアダム・クーパーと踊って一躍有名になった。
オニール 八菜は2017年5月7日にガルニエ宮で、初めて『ヘルマン・シュメルマン』のクインテッドを踊り、さらに13日にはパ・ド・ドゥ部分をユーゴ・マルシャンと踊っている。彼女はフォーサイス作品は、その以前に『パ・パーツ』と『アプロクシメイト・ソナタ』を踊ったことがあったのだが、特に『ヘルマン・シュメルマン』のパ・ド・ドゥの部分を習得するのは難しく、初めは<「えええっ」という感じ>だったという。けれどもコーチが、まずクラシック・バレエ的に教えて、そこから具体的な表現へと進めていってくれたので、うまく踊ることができた、と語っている。

今日のバレエダンサーは、クラシック作品だけを踊って事足れり、としていることはできないし、そういう意識のバレエダンサーも少ないと思われる。世界の主要バレエ団のシーズン・プログラムには、クラシック作品と同等かそれ以上にコンテンポラリー作品がプログラムされている。特にパリ・オペラ座バレエは、一時期ミルピエが芸術監督に就任したこともあり、コンテンポラリー作品の割合が大きくなってきている。シーズン中にチャイコフスキーなどの古典全幕ものが主体となっている新国立劇場バレエ団のようなプログラム構成の方が、現状ではむしろ珍しくなっているのである。
未来を嘱望されているバレエダンサー、オニール 八菜は、2011年にオーストラリア・バレエ学校在学中にローザンヌ国際バレエコンクール、YAGPで1位となり、2013年にパリ・オペラ座バレエに正式入団した。ここでフランス・スタイルを習得しながらパリ・オペラ座バレエの厳しいコンクールを経験。さらにコンテンポラリー作品を踊る訓練を受け、自身のテクニックも磨いてパリ・オペラ座バレエの最前線の舞台で活躍している。彼女は、常に明るく振舞っているが、どこか少し控えめなところがある。そこに日本人の血が流れていることを感じさせてくれる。そして昨年末から今年初めにかけては苦しんだ怪我も無事に克服して、パリ・オペラ座の舞台に闊達な姿を見せている。オニール 八菜が踊るパリ・オペラ座バレエの次の舞台は、マッツ・エックの新作が予定されている。

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© James_Bort

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「ル・グラン・ガラ」

またオニール 八菜は、バレエファンにはお馴染みのチャコットのバレエウェアのイメージキャラクターを務めている。今年の春からは新たにフィットネスウェアの「チャコット・バランス」が加わった。これはフィットネスだけでなく、スタジオの行き帰りなどカジュアルに着こなせるウェア。そして「ル・グラン・ガラ 2019」終了後には、この二つのブランドの撮影を行い、新しい彼女の映像を見ることができる。
詳細は(https://www.chacott-jp.com/news/shoplesson/new/detail012691.html

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「ル・グラン・ガラ 2019」www.le-grand-gala2019.jp

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