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開幕直前! Kバレエカンパニー『シンデレラ』リハーサルレポート 〜きらめき始めたリアルな魔法

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

2012年に初演された熊川哲也版『シンデレラ』。今回の公演は中村祥子、宮尾俊太郎らのスターを筆頭に若手の層の厚さを印象付ける配役となっており、今シーズン、韓国ユニバーサル・バレエから移籍した成田紗弥、ハンガリー国立バレエ団から移籍した高橋裕哉の初主演も注目される。初日まであと10日と迫った5月14日、東京・小石川のスタジオで、公開リハーサルが行われた。

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まずは、初演時からシンデレラ・仙女役を務めてきた浅川紫織の指導による、第1幕のリハーサルから。シンデレラ役は成田紗弥。義姉(杉山桃子・高橋怜衣)は舞踏会でまとう豪華なショールを縫っており、シンデレラは暖炉のそばで召使のように働かされている。針仕事に飽きた義姉たちは、シンデレラに縫いかけの布を投げつけてちょっかいを出し始め、それがどんどんエスカレートしていく。ピアノのせわしないリズムに乗って、シンデレラに布をくるくる巻き付けたり、ほどいたり。急速なジャンプ、ステップ、トウでぴたりとバランス。三人の動きは音楽と完全にシンクロしつつ、義姉たちの攻撃性とシンデレラの健気さをきわだたせる。しまいには布が破れてしまい、それはすべてシンデレラのせいにされる。その上、「暖炉の火が消えている」と継母見せなきく(ルーク・ヘイドン)に責められ、コップの水をかけられる。シンデレラの日常は「理不尽」そのものだ。

シンデレラは一人になると、義姉たちのショールをそっと身にまとって想像の世界に遊び始める。夢にたゆたうような音楽と成田の優美な動きから、彼女の心の中には、愛にあふれたやさしい世界が広がっていることがわかる。
「ショールは、本当は触っちゃいけないものだから。見て、間を取ってから『かけてみちゃおうかなー』という感じで。アクションのきっかけを少しオーバーに」という浅川の指示。思い立って、亡き母の形見が入ったトランクを開けてみる......というところで、トランクがうまく開かないという小さなハプニングがあった。細かな演技も細かくタイミングが決まっており、すべてが音楽と共に流れていかないと成立しない振付なのだ。

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シンデレラは母のドレスや肖像画を取り出し、語りかけるように見つめる。その様子を見た継母は、肖像画を取り上げて容赦なく暖炉に叩き込む。義姉たちは、シンデレラに母のドレスを着せてさんざん嘲った挙げ句、ドレスを破いてしまう。
「肖像画のところ、好きな人の写真をうっとり見てる、みたいに見えないように。『お母さん』に対する見方を考えてみて」「ドレスを破られたときのリアクションがちょっと薄い。ただの『ポーズ』にならないように。そう! そのくらいやらないと見えないよ」。
浅川のアドバイスに、動きでこたえていく成田。ニュアンスのわずかな違いで、物語の現実味が格段に増してゆく。義姉たちにドレスの袖をもぎ取られて、必死にジャンプを繰り返す成田からは「止めて!!」という叫びが聞こえてきそうだ。

このように、シンデレラへのいじめは相当ハードで、突き飛ばされるシーンも多い。リハーサル後、成田は足のあざを記者に気遣われ「転び方が悪いのかなと思うんですけど......大丈夫です」と微笑み、「今、表現力や演技を一生懸命学んでいます。今までシンデレラ役を踊ってきた先生方に教わることができて、それがすごく勉強になっています」とコメントした。浅川は、指導のポイントについて「1幕は演技の要素が多くて、小道具の扱いも多いよね。演技をいかに自然に踊りの中に入れていくかで、お客様が感情移入できるかどうかが変わってくると思うので、そこをできる限り伝えようとしています」と語った。

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続いて、やはり初演時から王子を演じてきた遅沢佑介の指導による第2幕のパ・ド・ドゥ。シンデレラは矢内千夏、王子は高橋裕哉。「舞踏会で、王子がいったんシンデレラを見失ったあと、再び二人が出会うというロマンティックな場面です」と、遅沢が物語の流れを説明した。
義姉たちが登場する場面のけたたましさに比べて、このシーンの音楽はとても静かだ。王子がシンデレラの面影を求めて舞台上をさまよっている。そこへ、矢内が晴れやかな表情で歩み出る。「探して探して......背中で気配を感じてから、振り向く。首だけで向かない」と遅沢が高橋に指示。振り向き方ひとつで「出会い」の瞬間が印象的になる。手を取り合い、見つめ合う二人。矢内が宙を泳ぐように、ふわりとリフトされる。今まさに恋に落ちた二人の、現実とも夢ともつかない特別な時間が、星空を浮遊するような美しい音楽とともに描かれる。次々とポーズを変化させながら、回転からリフトへ、着地したポーズからさらにリフトへ......と切れ目なく続くこのパ・ド・ドゥは、非常に難易度が高そうだ。遅沢は、高橋が重心のかけ方やタイミングを実感できるよう、実際に矢内や高橋を持ち上げたり、支えたりしつつ指導していた。「たしかに難しいけれど、技術的なところにとらわれてしまうとお互いのパッションや関係性が見えてこないから。僕も若いころすごく練習しましたね」と遅沢。「動きと動きの間も途切れずに、音と一緒に流れるように見せなくてはいけない。そこが難しいです」と矢内。「ポジションとステップ、動きの方向を一つひとつ的確にしないときれいに見えない。いかに効率よく、無駄のない動きで一緒に踊れるかが課題」と高橋は語った。
矢内・高橋ペアについて、遅沢は「二人は『若さ』という武器でこの役に挑むのも良いと思う。特に裕哉は入ったばかりで、Kバレエの息吹やステップの運びを一生懸命習得していて、今まさに成長中なので、それを舞台で出してほしい」とコメント。Kバレエカンパニーのスタイルや印象について質問された高橋は、「ヨーロッパでは、クラシック・バレエは伝統的な作品をそのまま受け継いでいる印象があり、新作はコンテンポラリー作品が多くなっています。Kバレエでは、現在つくられているバレエを身近に感じることができる。僕はクラシックを極めたいと思っていたので、熊川さんのもとで働くという経験をぜひしたくて帰ってきました」と力強く語った。

音楽と振付、舞台装置と衣裳......すべてが精密にかみあって生まれる魔法。その片鱗が、スタジオできらきらと輝き始めている。初日開幕は間もなくだ。

熊川哲也Kバレエ カンパニー 『シンデレラ』Spring Tour 2019

2019年5月24日(金)〜5月26日(日)
東京文化会館 大ホール

2019年5月31日(金)〜6月2日(日)
Bunkamuraオーチャードホール

2019年6月4日(火)
アクトシティ浜松

2019年6月6日(木)
大阪フェスティバルホール

http://www.k-ballet.co.jp/

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