クイーン×ベジャール! 伝説の舞台『バレエ・フォー・ライフ』を東京国立博物館で野外上映

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

舞台を観たり、ワークショップに参加したり、ショッピングや手作り体験をしたり......と、ゴールデンウィーク中、東京文化会館を中心に気軽にバレエとふれあえる「上野の森バレエホリデイ」も、今年で3年目となる。予約不要・無料のイベントも多く、昨年は7万8千人もの来場者があった。
今年は、このバレエホリデイと東京国立博物館とのコラボレーションが初めて実現。2020年5月に予定されているモーリス・ベジャール・バレエ団来日公演のプレ企画として、ベジャール振付『バレエ・フォー・ライフ』の、近年の舞台映像全編が、4月26日・27日、東京国立博物館の表慶館前に設置された特別スクリーンで上映される。

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『バレエ・フォー・ライフ』は、クイーンの名曲17曲にベジャールが振付けた作品だ。クイーンの伝説的ボーカリスト、フレディ・マーキュリーの、どこまでも突き抜けていくのびやかな声とともに、ベジャール・バレエ団のダンサーたちが生命力を炸裂させて踊る。1997年の初演では、カーテンコールにギタリストのブライアン・メイ、ドラムスのロジャー・テイラー、ベーシストのジョン・ディーコン、そしてフレディの親友であったエルトン・ジョンが登場し、「ショウ・マスト・ゴー・オン」をライヴ演奏したという。ベジャールはクイーンの音楽について「アイデア、強烈さ、ユーモア、愛......ここにはすべてがある」と賛辞を惜しまなかった。ブライアン・メイは「もっとも偉大なクリエーターとの素晴らしい交流だった」と語っている。

クイーンといえば、フレディ・マーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットが記憶に新しい。実はこの作品、フレディと、ベジャールにとって最愛のダンサーであったジョルジュ・ドンに捧げられている。フレディがエイズによる肺炎で亡くなったのは91年11月、45歳だった。ドンが同じ病、同じ45歳で亡くなったのは、翌92年11月である。
ベジャールはドンの死の前後に、偶然テレビでクイーンのコンサート映像を観て、強い印象を受けたという。「フレディ・マーキュリーとドンは非常に異なるパーソナリティを持っていたが、生と、自己表現に対する激しい欲求を持っている点で共通していた。二人の間には照応があったのだ」と、ベジャールは回想録(『誰の人生か? 自伝 II』 前田允/訳 劇書房刊)の中で語っている。

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フレディがオペラをはじめ、様々なジャンルからインスピレーションを受けていたことはよく知られているが、実はバレエも大好きだった。おなじみのタイツのコスチュームは、ニジンスキーの衣裳にヒントを得ているという。1979年には英国ロイヤルバレエ団と共演しており、ロイヤルのダンサーと一緒にレッスンしている写真や、リフトされながら歌っている映像が残っている。『バレエ・フォー・ライフ』の中にも、フレディとおぼしきタイツやレザーパンツ姿の人物が登場。つまり、この作品では「バレエダンサーになったフレディ」が観られるわけだ。在りし日のジョルジュ・ドンは、作品中に映像で登場する。過剰なまでの生命力あふれるダンスには、燃え輝きながら一生を走り抜けた二人の天才、フレディとドンへの、巨匠ベジャールの哀惜の思いが満ち満ちている。

音楽に関していえば、「ボーン・トゥ・ラブ・ユー」「RADIO GA GA」「ボヘミアン・ラプソディ」などおなじみの名曲に、「ピアノ協奏曲第21番」など、やはり若くして世を去ったモーツァルトの楽曲がごく自然に挿入され、「クイーン・ライヴ!! ウェンブリー1986」や「ライヴ・キラーズ」といったライヴ音源も使用。新緑の上野の森で、さながらコンサート会場でバレエを観て盛り上がるような、従来のバレエの枠を越えた体験ができそうだ。

上野の森バレエホリデイ2019 野外シネマ×バレエホリデイ

2019年4月26日(金)、27日(土)19:00上映開始(20:45終了見込み)雨天中止
18:50〜小田島久恵(音楽ライター)によるプレトークあり
東京国立博物館 表慶館前 

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