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牧阿佐美 振付による自作の『Anniversary』をYOSHIKIが青山季可ほかと共演した、プリンシパル・ガラ

ワールドレポート/東京

佐々木 三重子 Text by Mieko Sasaki

牧阿佐美バレヱ団〈プリンシパル・ガラ2019〉

『Anniversary』牧阿佐美:振付、ほか

牧阿佐美バレヱ団が、古典バレエから現代作品、牧が自らYOSHIKIの音楽に振付けた新作まで、多彩な5作品を並べた〈プリンシパル・ガラ2019〉を上演した。話題はもちろん、X JAPANのリーダーとして世界で活躍するYOSHIKIが作曲した『Anniversary』に牧が振付けた新作のお披露目だったが、YOSHIKI本人が舞台上でピアノを弾いての共演が実現することになり、話題性はさらに高まった。

牧阿佐美バレヱ団「グラン・パ・ド・フィアンセ」(左から)茂田絵美子、日有梨、佐藤かんな、光永百花、久保茉莉恵、三宅里奈 撮影 :鹿摩隆司810_9076.jpeg

「グラン・パ・ド・フィアンセ」(左から)茂田絵美子、日有梨、佐藤かんな、光永百花、久保茉莉恵、三宅里奈 撮影/鹿摩隆司(すべて)

幕開けは『グラン・パ・ド・フィアンセ』。プティパ/イワノフ版の『白鳥の湖』でカットされた舞踏会の花嫁候補の踊りを、ジャック・カーターが独自の音楽構成で蘇らせたもので、6人の花嫁候補がヴァリエーションで美と技を競うのが見所である。踊ったのは日髙有梨、茂田絵美子、久保茉莉惠、佐藤かんな、三宅里奈、光永百花。若手が着実に育っているのが見て取れ、心強く感じた。続く『ドン・キホーテ』の第3幕よりでは、田切眞純美と石田亮一の長身のペアがボレロをシャープに踊り、キトリの阿部裕恵とバジルの清瀧千晴の典雅なグラン・パ・ド・ドゥと対比をなした。清瀧が高いジャンプや力強いピルエットを見せれば、阿部は長くバランスを保ち、フェッテではダブルを連発してみせた。ただ、阿部は若いこともあり、テクニックに走ってしまったようだ。全幕上演ではないにしても、バジルと結婚する喜びを滲ませるなど、表現力を磨いて欲しいと思う。

牧阿佐美バレヱ団「グラン・パ・ド・フィアンセ」光永百花 撮影:鹿摩隆司 D5B_0812.jpeg

「グラン・パ・ド・フィアンセ」光永百花

牧阿佐美バレヱ団「ドン・キホーテ」阿部裕恵、清瀧千晴 撮影:鹿摩隆司 D5B_1002.jpeg

「ドン・キホーテ」阿部裕恵、清瀧千晴

牧阿佐美バレヱ団「ドン・キホーテ」田切眞純美、石田亮一 撮影:鹿摩隆司 D5A_4577.jpeg

「ドン・キホーテ」田切眞純美、石田亮一

牧阿佐美バレヱ団「ドン・キホーテ」阿部裕恵、清瀧千晴 撮影:鹿摩隆司 810_9186.jpeg

「ドン・キホーテ」阿部裕恵、清瀧千晴

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「Anniversary」

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「Anniversary」

注目の『Anniversary』の開演前に、白いコート風のジャケットを着たYOSHIKIが幕前に姿を現わすと、客席から「ワァー」「キャー」と歓声が上がった。さすが、すごい人気だ。YOSHIKI は、1999年の天皇陛下の即位10年を祝う式典のために作曲した奉祝曲が、20年後に牧によりバレエ化される喜びを語った後、上手前方に置かれたグランドピアノを弾いた。白いチュチュにティアラを付けた青山季可と黒い衣裳の菊地研のペアをメインに、4組の男女のペアが加わるが、古典の技法の落ち着いた踊りが展開されていき、YOSHIKIの演奏が終わると同時にゴールドの幕が下りてきて、舞台を輝かせた。ただ、ピアノを上手に置いたのは疑問に思った。なぜなら、YOSHIKIはステージに背を向けて座る形になるので、踊るダンサーの姿やオーケストラピットの指揮者は見えないし、またピアノの音の広がりという音響面からも下手のほうが好ましいと感じたからだ。ともあれ、YOSHIKIファンの観客にとって、バレエの公演はどう映ったのだろうか。

休憩後には『時の彼方に〜ア ビアント〜』の約1時間のハイライト版が上演された。故・高円宮憲仁親王殿下へのオマージュとして、島田雅彦の書き下ろしに三枝成彰が曲を付け、ドミニク・ウォルシュと牧、三谷恭三の3人が共同で振付けたオリジナルバレエで、2006年に初演された。運命的な愛で結ばれたカナヤとリヤムが出会いと別れを繰り返しながら、自らを犠牲にして生命の樹を蘇らせようとする物語を、現世や冥界といった時空を越えた壮大なスケールで描いた大作で、自然破壊や人間の欲望、権力争い、暴力など、今日的な問題も示唆されている。「ア ビアント」とは「また会いましょう」の意味だという。カナヤの青山季可の情感のこもった演技が素晴らしく、喜び、哀しみ、怯え、懇願する様など、真に迫っていた。しなやかな身のこなしも印象的だった。リヤムの清瀧千晴や冥界の女王の佐藤かんなも、卒のない演技で応じていた。

牧阿佐美バレヱ団「時の彼方に ア ビアント」佐藤かんな(冥界の女王) 撮影:鹿摩隆司D5B_1473.jpeg

「時の彼方に ア ビアント」佐藤かんな

牧阿佐美バレヱ団「時の彼方に ア ビアント」青山季可、清瀧千晴 撮影:鹿摩隆司D5A_5524.jpeg

「時の彼方に ア ビアント」青山季可、清瀧千晴

最後を飾ったのは『ボレロ』。このラヴェルの名曲は、ベジャールら多くの振付家によりバレエ化されているが、上演されたのはザルツブルク・バレエ団の芸術監督ピーター・ブロイヤーが2002年に振付けたもの。バレエ団としては2015年の初演に続く再演である。ステージいっぱいに広がった後ろ向きのダンサーたちをシルエットで見せ、一人、また一人が前方に出てスポットライトの中で踊るという導入部は新鮮だ。やがてフォメーションは崩れ、ダンサーたちは入り乱れ、グループを成したり、女性をリフトしたりと、弾力性に富んだパワフルな踊りが繰り広げられ、最初のようにステージいっぱいに広がったダンサーたちが音楽の終止と同時に床に倒れて終わった。音楽が増幅を繰り返すように、踊りも増幅するといった形は取らなかったが、身体性を駆使したダンスは見応えがあった。
(2019年3月16日、文京シビックホール 大ホール)

牧阿佐美バレヱ団「ボレロ」中川郁 撮影:鹿摩隆司D5A_5885.jpeg

「ボレロ」中川郁

牧阿佐美バレヱ団「ボレロ」 撮影:鹿摩隆司D5B_1987.jpeg

「ボレロ」

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