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熊川哲也×バッティストーニ、Kバレエ×東京フィルハーモニー管弦楽団! 新作『カルミナ・ブラーナ』記者会見レポート

ワールドレポート/東京

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

Bunkamuraオーチャードホール30周年を記念し、同ホール芸術監督の熊川哲也が2019年9月に新作を発表する。音楽はオルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』。指揮は世界が注目するイタリアの新星アンドレア・バッティストーニが務めるという。
3月14日、オーチャードホールロビーで行われた記者会見の模様をレポートする。

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© Bunkamura Ayumu Gombi

「『カルミナ・ブラーナ』は、いつかは着手すべき、見過ごせない作品だった」と熊川は語る。

『カルミナ・ブラーナ』は、中世の「遍歴の神学生」が書いたとされる詩歌集をもとにオルフが作曲し、全24曲からなる「世俗的カンタータ」として1937年に発表された作品。特に第1曲目の「おぉ、運命の女神よ」は映画やTV番組などで繰り返し使われており、一度聴いたら忘れられない曲だ。熊川は「鬼気迫るというか。目に見えない、圧倒的な何かが襲ってくる感じ。人智の及ばない力が反映されている作品」と表現する。「『おぉ、運命の女神よ』だけじゃなく、24曲すべてが素晴らしい。ほんとに想像力をかきたててくる。これを無視できる芸術家はいないんじゃないかな」。

ただし、バレエ化にあたり少しひねりを加えないと偉大な作曲家に勝てない、という思いもあったという。「歌詞の内容は俗っぽいものも多くて、単に歌の間を埋めるような展開じゃ勝負は見えてる。作曲家に失礼にあたらない程度に、ちょっと斜に構えたほうがいいかなと(笑)。歌を直線的につなぐんじゃなくて、流線型につくりたいなと思いました」。
今回、全曲をあらためて聴き込んだ熊川は「聞き終えた瞬間にわーっとアイデアが溢れて、1時間もかからずに興奮状態で構想をまとめてしまった」という。そのアイデアとは、「運命の女神フォルトゥーナの子は悪魔であった」というものだ。

熊川が曲から感じ取ったのは、人間の誰もがもつダークな部分。何か目に見えない力が働いて、ふだんは理性で制御している「闇」が噴出する――そんなイメージから、運命の女神フォルトゥーナの息子である「悪魔アドルフ」というキャラクターが生まれた。アドルフの名は、『カルミナ』作曲当時、ドイツの政権を掌握していたアドルフ・ヒトラーにちなむ。

母である女神を失脚させ、人間社会に出た少年アドルフ。彼が触れたものはすべて「悪」に染まっていく。開きつつある花は枯れ、清らかな水は枯渇し、美の女神ヴィーナスは淫乱で醜悪な姿をさらす。正義感の強い人間が一瞬で悪の手先と化す。しかし、少年は自分を悪魔と気づいていない。
「そうこうするうちに、彼は『どうしてぼくの周りには誰もいないんだろう』って孤独を感じ始めるわけ。もしかしたら自分は悪魔なんだろうか。彼は人間社会に溶け込もうとし始めるんだけど、時すでに遅し! 女神が登場します。そして――」

構想を聞くだけで面白そうなのだが、すでにアドルフ役としてK-BALLETスクールに在籍する中学生を候補に上げているという。「ダンサーとしては未完だけど、素晴らしい表現ができる子。女神役は、きっと皆さん想像されるダンサーがいると思いますが、明言は避けます(笑)。4月からリハーサルを始めるので、オーディションを兼ねて少しずつ絞っていくつもりです」。

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尚、今回は、Bunkamuraが擁する2つのフランチャイズカンパニー、K-BALLET COMPANYと東京フィルハーモニー交響楽団の初共演となる。同交響楽団の主席指揮者バッティストーニは、スカラ座、フェニーチェ劇場、バイエルン国立歌劇場など、世界の一流歌劇場でオペラの経験も積んできた若きマエストロだ。ダンサー、歌手、合唱、オーケストラと、出演者は総勢250名を超える。
「コーラスがダンサーとうまく絡めたらいいですね。たとえばコーラスが『壁』になったり、卵の殻になったり......まだ想像ですけど」と熊川。
衣裳・美術は英国ロイヤル・オペラ・ハウスのマクヴィカー演出『アイーダ』、英国ロイヤル・バレエ団でのウィールドン振付『DVG』、バランシン振付『ジュエルズ』などのデザインを担当したジャン=マルク・ピュイッソンが手掛ける。リハーサル開始に向け、バッティストーニ、ピュイッソンとはすでに打ち合わせが始まっているという。

2014年に『カルメン』、2017年に『クレオパトラ』と、次々と新作を世に送り出してきた熊川。この秋は、本作初演から日をおかずに『マダム・バタフライ』の世界初演となる。熊川は、タイトなスケジュールになることは覚悟していたと明かしたうえで「渡辺レイという素晴らしいセンスの演出補佐がいますし、宮尾俊太郎がすごく頼もしい演出・振付家として成長していますから。一人で頑張るんじゃなくて、右腕がいるっていいなと。K-BALLET COMPANYのチーム全体で乗り切っていきます」と語った。
「劇場のもつ『呼び寄せる力』がね、自分をかきたてて制作をさせるから。ここオーチャードホールは、僕に染みついた大切な場所なんで」。
オルフは『カルミナ・ブラーナ』を、本来は舞踊を伴う舞台作品と作曲したという。「熊川×バッティストーニ」、「K-BALLET×東フィル」。オルフの原案を実現するような、刺激的なコラボレーションとなりそうだ。

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Bunakamura 30周年記念フランチャイズ特別企画
K-BALLET COMPANY / 東京フィルハーモニー交響楽団熊川哲也 新作『カルミナ・ブラーナ』

会場/Bunkamuraオーチャードホール
日程/2019年9月4日(水)・9月5日(木)
http://www.k-ballet.co.jp/performances/2019carmina.html

Bunkamura30周年記念 フランチャイズ特別公演
K-BALLET COMPANY/東京フィルハーモニー交響楽団
熊川版 新作 『カルミナ・ブラーナ』世界初演
日程 2019年9月4日 (水) 〜 2019年9月5日 (木)
会場 オーチャードホール

【構成・演出・振付】 熊川哲也(オーチャードホール芸術監督)
【音楽】 カール・オルフ
【衣裳・美術デザイン】ジャン=マルク・ピュイッソン
【出演】 バレエ:Kバレエカンパニー
指 揮:アンドレア・バッティストーニ
演 奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ソリスト歌手:今井実希(ソプラノ)、藤木大地(カウンターテナー)、与那城敬(バリトン)ほか
特設サイト
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/19_carmina_burana.html

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