エバ・ジェルバブエナ=インタビュー「素敵な物語を通じて分かち合い、旅をするために、子供になってください」

ワールドレポート/東京

インタビュー=関口紘一(メールによる)/ 訳:志風恭子

――あなたはマイヤ・プリセツカヤに「現在最高のフラメンコ舞踊家」と称されたり、ピナ・バウシュのフェスティバルに招聘されたり、英国ナショナル・ダンス・アワードにノミネートされるなど、フラメンコを超えて世界的に高い評価を受けています。
他のジャンルのダンスで、特に興味を持たれているもの、影響を受けたものはどんなダンスでしょうか。また、どのような影響を受けましたか。

エバ あらゆる舞踊は、私の創作、考え方、感じ方により豊かな言葉をもたらし、私が成長し、充実するのを助けてくれます。
特にオーガニックダンスは、日常的なことにインスパイアされていて、人の心を動かす力があります。ある時、「常に直感を信じなさい」とピナ・バウシュが私に言ったように。

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――あなたはフラメンコ舞踊家の血筋ではないとお聞きしました。スペインでは多くの舞踊家の家系のダンサーが活躍していることが多いと思います。そうした点では何か感じられることはありますか。

エバ いい面も悪い面もあると思います。いい面は、その表現方法で成長し、三本柱、どれでも真似し、演じるのを助け、自然なものとして身につけることです。悪い面は、すでに有名な偉大なアーティストである家族と比較されることです。フラメンコの伝統がある家族でも、そうでなくとも、才能を持って生まれなくてはなりません。

――あなたはコンテンポラリー・ダンスやアフリカの音楽、ジャズなどをご自分の舞台に採り入れて作品を作られています。今日のフラメンコはもっと変わるべきだ、とお考えでしょうか。

エバ いいえ、全くそう思いません。唯一、私たちフラメンコ自身が進化することが課題です。

――あなたは「フラメンコはもっとも現代的な芸術である」とインタビューで語られています。このことについてももう少し、説明していただけますでしょうか。

エバ 神秘的なものより現代的なものはありません。なぜなら、神秘的なものは歴史以前のもので、現代的なものは歴史以後のものだからです。それは精神的なものへの直接の傷で、だからすべての音楽が入るのです。
フラメンコは、その誕生からすると若いアートですが、そうであっても、何千年も前からの、先祖代々の感情を、素早く、直接的に呼び起こすのです。
おそらく、使われるテクニックやメソッドの問題がそう思えるような、簡単なものではないでしょう。あらゆる舞台芸術がそうであるように、どこで、どのように上演するかは非常に重要です。そしてまた、演者自身がどう理解し、どう感じるかも。

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――あなたのフラメンコの舞台は、フラメンコのルーツを意識して作られているように感じることがあります。伝説的なスペインの舞踊家、カルメン・アマヤについてどのようにお考えでしょうか。

エバ 彼女以降の世代にとってのアイコン(シンボル)でしたし、今もそうですし、そしてそうあり続けるでしょう。

――今回の公演のタイトルは「Cuentos de Azúcar〜砂糖のものがたり〜」となっておりますが、ちょっと不思議な題材のようにも思えます。どういう点からこの題材に至ったか教えていただけますか。

エバ 人間の理解の仕方は物語で、私たちが知っていることはすべて、ヒストリー(歴史、物語)によるのです。私は私が私自身に語るヒストリーなのです。フラメンコは私の物語を語るヒストリーであり、だから他の文化の物語を探検することに興味を持ったのです。なぜならすべてのヒストリーは同じ、人間の物語であると直感したからです。

――「Cuentos de Azúcar〜砂糖のものがたり〜」では、日本の奄美大島の民謡歌手と共演されますが、日本の民謡にもご興味をお持ちでしょうか。奄美大島の民謡にフラメンコと共通する何かを感じられたのでしょうか。

エバ おそらく日本人は、伝説や叙事詩的なものと非常に強いつながりを持っているのではないかと思います。世界の文化の中には、人間であることとのつながりがたやすいことを示している文化があり、私にとって日本の文化はそれを持っているのです。もう一つ。一見、私のやり方とは非常に違う語り方と出会うことで、私をもとに戻し、新しいものを見つけました。

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――そのほか、日本の文化でご興味を持たれているものはありますか。また、舞台に採り入れてみようか、とお考えになったことはありますか。

エバ そうですね。提案や必要に応じてですね。開かれています。

――あなたは若い頃からフラメンコに熱中されて素晴らしい舞踊家になられました。お子さんたちも同じ道を進まれているのですか。

エバ いいえ、唯一心がけているのは、私がそうであったように、幸せであってほしいということです。自分の最も好きなことをしていると心が動きます。私ができるのはそれを助けることだけです。

――あなたがお考えになっているフラメンコの将来像、これからのフラメンコはどうなっていくのが望ましいか、教えていただけますでしょうか。

エバ フラメンコ。何をおいてもフラメンコ。

――あなたの来日を待ちわびている日本のファンに向けて、一言メッセージをお願いいたします。

エバ 子供時代に帰って、素敵な物語を通じて分かち合い、旅をするために、子供になってください。

エバ・ジェルバブエナ 来日公演2019

●公演日 2019年
3月22日(金)19:00開演 「Cuentos de Azúcar 〜砂糖のものがたり〜」
3月23日(土)14:00開演 「Cuentos de Azúcar 〜砂糖のものがたり〜」
3月24日(日)15:00開演 「Flamenco Cardinal -フラメンコの粋」
●会場 東京国際フォーラム ホールC

https://sunrisetokyo.com/detail/1822/

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