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楽しく、アメージングな『くるみ割り人形』を演出した、NBAバレエ団

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

NBAバレエ団

『くるみ割り人形』久保綋一:演出・芸術監督

NBAバレエ団は独自のヴァージョンの『くるみ割り人形』を、毎年年末に上演している。2018年も拠点を持つ所沢市と東京、池袋の芸術劇場で上演した。
冒頭に、ドロッセルマイヤー(マシモ・アクリ)の甥クリストフと、彼に憧れを抱いているクララ(大島淑江)の前年のパーティーの別れのシーンがあり、その一年後の物語が始まる。おそらくその一年間に、ドロッセルマイヤーはねずみ軍団の呪縛から姫を解放するための知略をねり、そのためにクリストフが気を吹き込んだ精巧なくるみ割り人形を作ったのであろう。

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撮影/吉川幸次郎

第1幕の演出の特徴としては、フリッツ(新井悠汰)を通常版よりさらに大活躍させて、少女クララとのコントラストをくっきりとさせている。ねずみ軍は大いに活躍し観客を十分に楽しませる。またくるみ割り人形が王子(安西健塁)に変身するシーンもこの演出だと理にかなっている。また、クララが夢の世界に陥るシーンは、プロジェクションマッピングをうまく使い、幻想的を雰囲気を大いにたかめている。
スノーフレイクスのシーンでは、雪の精たちにティアラ風の髪飾りを着けて踊らせ、クララをいっぱいもてなさせて、シーン全体にふくらみをもたせた。

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大島淑江、安西健塁 撮影/吉川幸次郎

第2幕では、三匹のねずみが人間に化けて(ラタトゥイユ:伊東由希子、竹内碧、大森康正)、お菓子の国まで紛れ込みクララたちを追いかけてくる。そして毒入りのケーキを作って、みんなに振る舞おうとするが、見破られて見事失敗。3匹とも皆殺しにされようとするが、クララが彼ら三匹を許す。クララはピュアな心の持ち主で悔い改める者は許す。ただこの展開に持ち込んで表現するのは、いささか作り過ぎのようにも感じられた。

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撮影/吉川幸次郎

お楽しみのデヴェルティスマンは、スペイン、アラブ、チャイナ、ドラゴンの脚、ロシア、ジンジャーおばさんと踊られたが、それぞれ工夫が凝らされていて、サーピス精神とウィットのセンスがあるところを見せた。そしてダンサーたちが久保監督の要求に応えられる実力をものにしたのだろうか、速いステップもこなし、アップテンポの物語の展開も随分スムーズになった。
クララ役の大島淑江はほとんど舞台にずっぱりだったが、よく踊りきった。ちょっとフィギアスケートの紀平梨花を思わせる雰囲気があり、今後さらに才能を花開かせる機会に恵まれることを祈る。
王子役の安西健塁もクララをサポートしつつしっかりと踊った。頑張れと応援したくなるような一生懸命の演舞だった。
エンディングは、夢から覚めたクララがドロッセルマイヤーの甥、憧れのクリストフのもとに走りより抱き合う、再会のシーン。クララを夢みさせるには、十分な気持ちが伝わってくる楽しく、アメージングな舞台だった。
(2018年12月9日 東京芸術劇場 プレイハウス)

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竹田仁美、高橋真之 撮影/吉川幸次郎

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