新国立劇場オペラ、バレエ、演劇 3部門の2019 /20シーズンのラインナップが発表された

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

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小川絵梨子演劇芸術監督、大野和士オペラ芸術監督、大原永子舞踊芸術監督

新国立劇場オペラ、バレエ、演劇 3部門の2019 /20シーズンのラインナップが1月17日に発表された。オペラ芸術監督の大野和士に続いて、大原永子バレエ芸術監督がマイクを取って新シーズンの予定を説明した。
大原芸術監督は、これまで<ダンサーの育成><観客の集客><舞台の向上>を目標に掲げて努力してきており、その「総決算」でもあると言う新シーズンのプログラムは、
プロコフィエフ/マクミラン『ロミオとジュリエット』、チャイコフスキー/イーグリング『くるみ割り人形』、「ニューイヤー・バレエ」はバランシン『セレナーデ』、牧阿佐美『ライモンダ』『海賊』のパ・ド・ドゥ、ウィールドン『DGV』。さらにマスネ/マクミラン『マノン』、ミンクス/ゴルスキー『ドン・キホーテ』、タルボット/ウィールドン『不思議の国のアリス』。ダンスは中村恩恵『ベートーヴェン・ソナタ』、新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2020」、小野寺修二 カンパニーデラシネラ『ふしぎの国のアリス』である。
大原監督は、1999年に新国立劇場バレエ団のバレエミストレスとなり、牧阿佐美、デヴィッド・ヴィントレーなどの芸術監督を助ける役割を果たし、2014年9月に芸術監督に就任した。そしてこの19/20のシーズンが芸術監督の最後の任期となる。その結果として「今や世界的レベルの上演ができるようになった」という自負を持って最後のプログラムを公表したのである。

ここ数年、確かに上演した舞台の成果は上がったと言えるかもしれない。しかしやはり、そのプログラムを見ると、あまりにも著名な古典名作が中心にガッチリと並べられており、新国立劇場バレエ独自のチャレンジングな試みを感じさせる作品はほとんど見当たらない。あるいはそれは、他の世界のオペラハウスの赫赫とした伝統とくらべて無理からぬところでもあるのかも知れない。ただ新国立劇場バレエ団独自の作品が今後は作られていくのではないか、という可能性をどこかに感じさせて欲しかった、という気持ちは残る。ダンス部門で中村恩恵が今年1月に上演した『火の鳥』やそれ以前の振付作品で気を吐いているが、クラシック・バレエでは世界的にヒットが証明されている鉄板作品『不思議の国のアリス』の他には、ほとんど動きはなかったのではないだろうか。
例えば英国ロイヤル・バレエでは31年ぶりに『白鳥の湖』のヴァージョンを、ダウエル版からスカーレット版に改訂したが、彼の地ではそうした優れた振付家が順調に育っているのである。そしてその英国ロイヤル・バレエ団でプリンシパルを務めた次期芸術監督に期待しよう。
ただしかし、大原監督の目標の一つであったダンサーたちの活動は素晴らしいものがあった。特に小野絢子、米沢唯、福岡雄大、井澤駿、奥村康祐たちのプリンシパルたちは大きな怪我もなく安定して活躍した。新国立劇場バレエ団以外でもいろいろな舞台で踊り、今まで見られなかった姿もみることができたし、その点では大いに楽しませていただいた。今後もあまり枠に収まらずに、広く大きく踊っていってもらいたいと思う。
その他、オペラ部門ではAIロボットが出演する作品が登場するとか。演劇部門(小川絵梨子芸術監督)では「こつこつプロジェクト」やロイヤルコート劇場との提携ワークショップが始まるという話題もあった。

公式サイト
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_013294.html

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