ナタリア・マカロワ版『ラ・バヤデール』のライヴビューイングがいよいよ上映される!

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

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英国ロイヤル・バレエの2018/19シネマシーズンは、昨年の『うたかたの恋』から始まっており、1月18日より『ラ・バヤデール』の上映が全国で順次始まる。
周知のように、英国ロイヤル・バレエの『ラ・バヤデール』はナタリア・マカロワ版で、最後の寺院崩壊まで描かれている希少ヴァージョンである。セルゲイ・ヴィハレフが2002年にマリインスキー劇場でプティパの原典を復元するまでは、ほとんどのヴァージョンが省略していた最後のシーンまでを描き切っている。日本のカンパニーでは東京バレエ団がこのヴァージョンをレパートリーとしている。では一足早く、昨年11月13日にロイヤル・オペラハウスで収録されたライヴ映像の内容をご紹介しよう。

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ニキヤはマリアネラ・ヌニェス、ガムザッティはナタリア・オシポワ、ソロルはワディム・ムンタギロフ、ブロンズ・アイドルはアレクサンダー・キャンベルというキャストだが、脇は日本人ダンサーや日本に縁のあるダンサーが固めていた。「影の王国」では、第1ヴァリエーションに崔由姫、第2ヴァリエーションには昨年プリンシパルに昇格し、夏季講習を初めて日本で行なったヤスミン・ナグディ。第3ヴァリエーションにはプリンシパルの高田茜、マグダヴェーヤにはアクリ瑠嘉、第1幕のパ・ダクションには金子扶生。さらにK バレエ カンパニー公演にも出演しているギャリー・エイヴィスがハイ・ブラーミン、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』日本公演で王子を踊ったトーマス・ホワイトヘッドが国王のラジャに扮していた。
また、シネマシーズンの映像でしか見ることが出来ない、英国ロイヤル・バレエ元プリンシパルのダーシー・バッセル他によるスタッフへのインタビューは大変興味深い。バッセル自身マカロワから直接指導を受け、ニキヤもガムザッティも踊った経験がある、という。しかしここでは、この作品のハイライトのひとつである「影の王国」に登場するコール・ド・バレエのチームにスポットをあて、リーダーと初めてこの難しいシーンを踊るダンサーに話を聞いていた。

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「影の王国」は、ヒマラヤから降りて来る24人のチュチュを着けたダンサーが、39回アラベスクを繰り返す有名なシーン。それは、愛していたニキヤ殺しに加担してしまった罪の意識に苛まれ、思いあまってアヘンを吸飲して意識が朦朧とする中で、彼女が死ぬ間際に踊った振りを想いおこすソロル。彼の脳裏に浮かんでいる情景である。この大掛かりなシーンのためにコール・ド・バレエは一糸乱れぬ一体化した動きを厳しく求められる。それぞれの動きがバラバラになってしまうと、それは「幻影」ではなくなってしまうからだ。彼らはお互いに励まし合い助け合って難シーンを乗り切るのである。この公演では経験者は4人、初めて踊るダンサーは20人だったそうだ。

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『ラ・バヤデール』のもうひとつのハイライトシーンは、ソロルをめぐりニキヤとガムザッティの対決するシーンである。今回の上演ではニキヤを踊るダンサーとガムザッティを踊るダンサーを入れ替えて上演するという試みも行われた、という。観客にとっては、それぞれのダンサーの表現を比較して鑑賞するチャンスだが、踊る側には過酷なのではないか、とも思った。しかしバッセルの様子を見てもそれ程、負担には感じられることではないようだった。さすが英国ロイヤル・バレエのプリンシパルである。
そして芸術監督のケビン・オヘアは、こうしたスケールの大きいクラシック・バレエの名作を上演することは、カンパニーにとって全体のレベルアップとなる、と述べ、この『ラ・バヤデール』という大規模な作品の完成度の高さに自信を示していた。

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■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
■配給:東宝東和
©ROH, 2018. Photographed by Bill Cooper.
2019年1月18日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか、全国公開

<ロイヤル・バレエ『ラ・バヤデール』作品情報>
【振付】マリウス・プティパ
【追加振付】ナタリア・マカロワ
【音楽】レオン・ミンクス
【指揮】ボリス・グルージン
【出演】ニキヤ(神殿の舞姫):マリアネラ・ヌニェス
ソロル(戦士):ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ(ラジャの娘):ナタリア・オシポワ
ハイ・ブラーミン(大僧正):ギャリー・エイヴィス
ラジャ(国王):トーマス・ホワイトヘッド
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):アクリ瑠嘉
アヤ(ガムザッティの召使):クリステン・マクナリー
ソロルの友人:ニコル・エドモンズ

【第1幕】
ジャンベの踊り:マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル
パ・ダクシオン:
エリザベス・ハロッド、ミーガン・グレース・ヒンキス
アナ・ローズ・オサリヴァン、ロマニー・パジャック
クレア・カルヴァート、金子扶生
マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル
リース・クラーク、ニコル・エドモンズ

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1):崔 由姫
影の王国(ヴァリエーション2):ヤスミン・ナグディ
影の王国(ヴァリエーション3):高田 茜

【第3幕】
ブロンズ・アイドル:アレクサンダー・キャンベル

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