太田朱音、山本達史、中川郁が踊った楽しく明快な物語、牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

牧阿佐美バレヱ団

『くるみ割り人形』レフ・イワーノフ:振付、三谷恭三:演出・改訂振付

牧阿佐美バレヱ団の『くるみ割り人形』は、レフ・イワノフの振付に基づいて、芸術監督の三谷恭三が演出・改訂振付を行なっている。私は金平糖の精/太田朱音、王子/山本達史、雪の女王/中川郁というキャストで観た。(他日は織山万梨子・清滝千晴・青山季可。阿部裕恵・石田亮一・日高有梨)。

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コロンビーヌ:米澤真弓、ハレーキン:坂爪智来 撮影:鹿摩隆司

冒頭、パーティにウキウキと向かう人たちとともに手回しオルガン弾きを登場させて、室外の寒さ、侘しさとクリスマスイブのパーティの明るい温かいさとのコントラストを描き、『くるみ割り人形』の物語世界へと観客を巧みに誘導している。その後の物語はプティパの台本に基づいておりオーソドックス。
ドロッセルマイヤー(ラグワスレン・オトゴンニャム、他日は菊地研)がシュタールバウム家のクリスマス・パーティに、彼の甥を連れて現れ、手品を見せ、コロビーヌ(米澤真弓)、ハレーキン(坂爪智来)、ヴィヴァンディエール(竹村しほり)などの人形の踊りを披露し、プレゼントを渡して子供たちの人気を独占する。クララ(亀井瑠奈)は、兵隊姿のくるみ割り人形をもらい大変に気に入った。そして例の通り、夜になるとクララの夢の中で、ねずみ軍とおもちゃの兵隊の戦争が勃発し、くるみ割り人形(今勇也)とねずみの王様(塚田渉)の一騎打ちとなる。クララの活躍により、くるみ割り人形は窮地を脱する。クララの思いもかけない大手柄だった。ドロッセルマイヤーにはオトゴンニャムが扮して、ミステリアスな雰囲気をうまく出した。なかなか演技力もありそうに思えた。

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ヴィヴァンディエール:竹村しほり、おもちゃの兵隊:橋本哲至 撮影:鹿摩隆司

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王子:山本達史 撮影:鹿摩隆司

王子はねずみ軍に勝利し、ドロッセルマイヤーによって本来の美しい姿を取り戻した。王子はクララを雪の精たちの国へ誘い、雪の女王の歓迎を受ける。さらにお菓子の国に至り、金平糖の精に、ねずみ軍との戦いの王子とクララの活躍を報告。楽しいデヴェルティスマンが次々と踊られ宴が盛り上がって、太田朱音の金平糖の精と山本達史の王子のグラン・パ・ド・ドゥとなる。大田はクラシック・バレエとして大切な豪華さをしっかりと出せるダンサーと感じた。金平糖の精は初役ということもあり、緊張していたかもしれない。もう少し表情を大きく作って身体全体の表現を構成してほしい、とも思ったが、良い資質をしているダンサーだと思う。王子を踊った山本達史はやや小柄だが立ち姿が良く、動きも俊敏で踊りも安定していた。。亀井瑠奈のクララは、ほとんどでずっぱりだったが、物語のどの場面でも愛らしく、落ち着いて楽しませてくれた。花のワルツ(日高有梨、高橋万由梨、光永百花、今村のぞみ、他)も華やかに楽しく盛り上げて、巧みにクライマックスを演出した。

終演後は、出演ダンサーたちによるキャンディ・プレゼントがあり、会場は大いに湧いた。そして、2018年も平成も大詰めとなった、来年はどんな年になるのかな、と思いつつ帰路についた。
(2018年12月16日 文京シビックホール)

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金平糖の精:太田朱音 撮影:鹿摩隆司

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