闊達な動きと踊り、素晴らしいギターの音色と見事な唄、イスラエル・ガルバンの楽しく洒脱な舞台

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

イスラエル・ガルバン

『LA EDAD DE ORO 黄金時代』イスラエル・ガルバン:演出・振付・出演

スペインは舞踊の大国だ。マリウス・プティパ、セルジュ・デアギレフ、レオニード・マシーン、モーリス・ベジャール・・・名だたる舞踊家がスペイン舞踊に魅了されて、自身の舞踊活動に反映させている。そしてアントニオ・ガデスは、フラメンコを中心としたスペインの伝統的舞踊をドラマチックに構成して、ダンスドラマと言うよりもオペラ・フラメンコとでも言うべき三部作の傑作『カルメン』『恋は魔術師』『血の婚礼』を創った。この3部作は、映画監督カルロス・サウラによって、優れた映像となり今日に残されている。
また、ガデスも芸術監督を務めたスペイン国立バレエ団が今年10月に来日公演を行った。このアントニオ・ナハーロ芸術監督による舞台は、フラメンコを中心とした舞踊ショーとも言えるものだった。カスタネットの群舞を多用し、フォーメーションもミュージック・ホールのショーのように仕立てられ、誰でも見やすい舞台に構成されていた。

_MG_0368photo-A.Groeschelphoto-A.Groeschel-m.jpg

photo/Arnold Groeschel

一方、イスラエル・ガルバンの舞台は、コンテンポラリー・フラメンコなどと言われているが、スペイン独特の地下のタブロウで踊られたスタイルに近い。息の合ったギタリストとカンタオール(歌い手)の三人で舞台を構成している。
ガルバンの動きは自由自在。腕はまるで『瀕死の白鳥』を踊るマイヤ・プリセツカヤを彷彿させる柔軟性をみせる。手首と肘の関節を意識させず、太いロープを操っているかのようにさえ見える。広い舞台を闊達に動き、時には歩き、伝統的形式には囚われない自由な表現を創る。ステップは軽快で、タップダンスのリズム、ジャズ的即興性などをもとりいれて、タップダンスと融合したサパテアード、とと言えばいいのか。
フラメンコらしく、ダンサーが発する音はサパテアードばかりではなく、パルマ(手拍子)やピトス(指を鳴らす)などを軽妙に鳴らし、太腿から胸など身体のあらゆる部位を叩く。靴の裏まで叩く。フオームも多彩で、軽いユーモアを感じさせる形を交え素速く変幻する。見栄を切るような仕草は一切ないので、舞台の上に抽象的なラインが描かれ、コンテンポラリーな印象を残した。
そしてまたギターが素晴らしい音を出す。透明ないい音色。カンタオールも品のある落ち着いた声で唄った。この三人が気の合ったところをみせたのが、カーテンコールだった。カンタオールがギターを奏で、ギタリストが踊り、ガルバンはギターを手に唄ってみせた。この洒脱なエンディングに観客は大喜び。万雷の喝采とスタンディングオベーションを贈った。
(2018年10月28日 彩の国さいたま芸術劇場)

_MG_0427photo-A.Groeschelphoto-A.Groeschel-m.jpg

photo/Arnold Groeschel

_MG_0505photo-A.Groeschelphoto-A.Groeschel-m.jpg

photo/Arnold Groeschel

ページの先頭へ戻る