小野絢子がライモンダの人物像を浮き彫りにして見事に踊った、世田谷クラシックバレエ連盟公演

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

世田谷クラシックバレエ連盟 第21回公演

『AMERICAN DREAM』岩上純:振付、『モーツァルティアーナ』石井竜一:振付、『ライモンダ』第3幕祝宴の場 マイレン・トレウバエフ:振付

ル・コルビジェに学び、上野の東京文化会館を手がけたことでも知られる建築家、前川國男が設計し、1959年に建設された世田谷区民会館。ここを会場とすることが多い世田谷クラシックバレエ連盟の第21回公演が開催された。ここは東京文化会館と同様にロビーが広く、舞台に向かう客席の角度も適切で見易い。しかし老朽化してきたので、2020年の東京オリンピックの終了後に閉鎖し、2年間の改装を行うことが決まっている。前川國男の基本的な設計は活かして改装を行うということだった。

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「AMERICAN DREAM」撮影/吉川幸次郎

第21回公演はまず、スーザの曲をハーシー・ケイが編曲した「星条旗よ永遠なれ」に岩上純が振付けた『AMERICAN DREAM』で開幕。20人のバレリーナがチュチュを着け、行進曲に乗せて堂々と楽しげに踊った。
続いて『モーツァルティアーナ』。石井竜一の振付、音楽は、むろんチャイコフスキー。新国立劇場バレエ団の池田理沙子、浅田良和、谷桃子バレエ団の檜山和久と横岡諒ががソリストを踊った。特別に際立つフォーメーションを組んでいるわけではないが、音楽に寄り添った率直な感じの振付。音楽とともに次第に盛り上がっていく。ダンサーはそれぞれ良かったが、池田は歯切れ良く、かといって特別にスタッカートを強調するわけではなく、ごく自然に感じられる見ていて気持ちの良い踊り。浅田もすっきりとした踊りだった。全体に流れがスムーズに感じられた。

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「モーツァルティアーナ」撮影/吉川幸次郎

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「ライモンダ」撮影/吉川幸次郎

最後はマイレン・トレウバエフが振付けた『ライモンダ』第3幕「祝宴の場」。チャルダッシュをキミホ・ハルバートとトレウバエフが、あのお馴染みのメロディに乗ってステップも軽やかに踊った。あまり目にする機会のないペアの踊りに観客も大喜びだった。そしてライモンダ役は新国立劇場バレエのプリンシパル、小野絢子、ジャン・ド・ブリエンヌ役は谷桃子バレエ団の今井智也が踊った。小野は高貴な印象をだしながら、豪奢な色香を漂わす見事な演舞だった。バランスもほぼ完璧で圧巻の存在感を見せた。ライモンダは女性の品位あるプライドを動きの中に滲み込ませて、自ずと感じられるように踊らなければならない。その点、バレエダンサーとしての小野、そして彼女の人間性もまたライモンダという人物像を深く理解することができるのであろう。見事な舞台だった。今井も小野の踊りに応え、堂々とした踊りだった。
会場も大いに盛り上がり、二人の華麗な踊りに喝采を贈っていた。
(2018年10月14日 世田谷区民会館)

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「ライモンダ」撮影/吉川幸次郎

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