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楽しく活気のあるバレエ、リン・テイラー・コーベット振付『リトルマーメイド』NBAバレエ団

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

NBAバレエ団

『リトルマーメイド』リン・テイラー・コーベット:振付

NBAバレエ団が『HIBARI』(2015年初演)に続いて、リン・テイラー・コーベット振付の『リトルマーメイド』を上演した。『リトルマーメイド』はアンデルセンの童話『人魚姫』に基づいて、ディズニーのアニメーション映画やブロードウェイ・ミュージカル、劇団四季の上演などでもお馴染みの作品。
NBAバレエ団は、リン・テイラー・コーベットがキャロライナ・バレエ団で初演したバレエ版を上演した。このヴァージョンのために、音楽を新たにマイケル・モーリッツが作曲している。
バレエ版といっても、歌や音楽にミュージカルの要素もあり、ナレーションが入る。衣装もバラエティに富んでいて見るだけでも気持ちが和む。NBAバレエ団久保芸術監督の「どんなに良い作品でも理解されなければ意味がない」という趣旨に合った舞台で、子どもから大人までたとえバレエに馴染みがなくても楽しめるように作られている。

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撮影:吉川幸次郎(すべて /※「吉」の字は正しくは「土」に「口」)

16歳の誕生日に陸を見にいくことを許されたマーメイドは、溺れかかっていた王子を助ける。しかし、ソニアという娘が王子を助けたのは自分だと嘘をついて、王子と婚約してしまう。マーメイドは2本足の人間になることと引き換えに、美しい声を海の魔女に渡してしまう。王子と再会しても声が出せないので、助けたのは私、と伝えることができない。王子はひどい声のソニアに騙されたことを知る。その頃、海の王国では魔女を倒し、マーメイドは美しい声を取り戻す・・という物語。

「声」はバレエでは通常使わないので、モティーフに扱われることは少ない。ところが『リトルマーメイド』では、「あなたを助けたのは私、彼女は嘘をついている」と、言葉で伝えられないことが物語のポイントになる。言葉では表現することのできない<愛>を、パフォーマンスによってどれだけ表現することができるか、そこに観客の意識が集まることになる。なかなか巧みな物語展開である。

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竹田仁美、猪嶋沙織、柳澤綾乃

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浅井杏里、多田遥、古道貴大

マーメイドは竹田仁美、クリスチャン王子は大森康正(竹内碧と宝満直也・宮内浩之とWキャスト)。そのほかのダンサーも、メカジキのシルバラード(高橋真之)、カニ、ヒトデ、フグ、エンジェルフィッシュ、タツノオトシゴ、イソギンチャクなどなど、それぞれに工夫を凝らした衣装を着けてよく動いて活気があった。海の下の世界は、背景を大型スクリーンに映して見せた。特別に豪華ではなかったがよく頑張っていることが感じられた舞台。特に振付家がオーディションしたという「金魚の子どもたち」は、いかにも泳いでいるようで可愛らしかった。

リン・テイラー・コルベットの要求によく応えて、魅力的な舞台が作られていたと思う。
(2018年9月28日 新国立劇場 中劇場)

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竹田仁美、土橋冬夢、宝満直也

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