メシアンの音楽により米沢唯と首藤康之が踊った見事な踊り、「モネ それからの100年」展のコンサート

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

「音楽と舞踊小品集〜水・空気・光」

横浜美術企画展「モネ それからの100年」によせて
中村恩恵:振付、中村恩恵、首藤康之、折原美樹、米沢唯、中島瑞生、渡邉拓朗:出演

「モネ それからの100年」展と連携するコンサート「音楽と舞踊小品集〜水・空気・光」が開催された。これは印象派を代表する画家クロード・モネと同時代を生き、やはり印象主義の音楽家とも言われたクロード・ドビュッシーとその影響を受けた作曲家たちをフューチャーして、「モネ それからの100年」を鑑賞するコンサートである。
全体は3部に分けられていて、第1部「〜水」(演奏)、第2部「〜空気」(舞踊)、第3部「〜光」(演奏)となっている。
第1部「〜水」では、「水」をテーマにドビュッシーの『喜びの島』など3曲、サン=サーンス『白鳥』、マスネ『タイスの瞑想曲』が演奏された。ピアノ 福間洸太朗、ヴァイオリン 﨑谷直人、チェロ 門脇大樹。

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スクリャービン

第2部が「〜空気」で中村恩恵が振付けた舞踊が踊られる。
まずは首藤康之がスクリャービンの「12のピアノ練習曲 作品8より 第11番を踊った。ダークグレイの袴のような長いボトムスと黒いシューズ、一脚の小さい椅子にほとんど掛けたまま踊る。ステップはなく上半身の大きな動き、手を水平に動かして一つのラインを描きシャープな印象を残した。
ラヴェルの『ツィガーヌ』は中村恩恵と新国立劇場バレエ団の中島瑞生、渡邉拓朗が踊った。中村の黒いドレスには大きな赤い花が描かれている。起伏の激しい情熱と気まぐれが入り乱れて高揚していく音楽とともに、黒い衣装の中島と渡邉、そして中村がステップを踏み、ラテン的スピリットが描き出されていた。

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ラヴェル

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ラヴェル

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ラヴェル

続いてメシアンの「時の終わりのための4重奏曲」よりを、新国立劇場バレエ団の米沢唯と首藤康之が素晴らしい踊りを見せた。時の流れという無機質の世界と、男と女の交わろうとする心と孤独な存在の感覚が、細やかに奏でられる音楽の中に浮かび上がる。モネの繊細な筆つかいと愛をめぐる心の波動とが響き合って、劇空間は濃密な空気に包まれた。米沢の素直な身体(衣装も良かった)と首藤の練達の動きが、見事なバランスを見せ、感動的な舞台を作った。

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メシアン

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メシアン

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メシアン

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メシアン

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コダーイ

そしてコダーイの「9つのピアノ小品 作品3」より 第2番によるグラハムの『LAMENTATION』。ドビュッシーの影響受けたコダーイのピアノ曲にグラハムが振付けた傑作として知られている。全身をグレーの布で覆い、顔だけを出してベンチに腰掛けて踊る。処刑されたイエスへのマグダラのマリアの悲しみ、とも言われる悲哀を、グラハム舞踊団のプリンシパルダンサー、折原美樹が踊った。そして最後にパヴロ・カザルスが編曲したカタロニア民謡「鳥の歌」が演奏された。ピアノ 斉藤一也、ヴァイオリン 崎谷直人、チェロ 門脇大樹。
第3部「〜光」は、ドビュッシーの『月の光』、ラヴェル の組曲「マ・メール・ロワ」より「眠れる森の美女のパヴァーヌ」「パゴダの女王レドロネット」「妖精の園」「ピアノ・トリオ」より第3楽章、第4楽章などが演奏された。ピアノ 福間洸太朗、斉藤一也、ヴァイオリン 﨑谷直人、チェロ 門脇大樹。
(2018年8月30日 横浜みなとみらい 大ホール)

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コダーイ

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