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海外で活動する若いダンサーの気持ちが込められた闊達な舞台が印象的、BRIGHT STEP 2018

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

BRIGHT STEP 2018 with FASHION DESIGNER

ブライト・ステップ

今年で4回目の開催となったBRIGHT STEP 2018 with FASHION DESIGNERを観た。
この公演は、海外のカンパニーで踊るダンサーたちに、日本で公演する機会を与えることを一つの目的として行われている。そして一つの公演を同じ思いを抱いている仲間たちと作ること、つまり食事のサービスや洋服づくりと同じように、バレエの公演を作って観てもらうこと、それが「身近な存在」としてのバレエへとつながるのではないか、そうした思いが込められている舞台である。さらに今回の公演は、with FASHION DESIGNER と付されているように、若手のファッション・デザイナーが独自のデザインで作った衣装を着て踊る、というコラボレーションが試みられていた。
全体は2部構成で、Act 1 では新作を含むヴァリエーション。Act 2 でファッション・デザイナーとのコラボレーションにより、新たにデザインされたバレエ衣装がいくつか発表された。

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『パキータ』

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『パキータ』

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『パキータ』

© 鹿摩隆司(すべて)

Act 1 は『パキータ』のパ・ド・トロワで開幕。ドイツのライプツィヒ・バレエの石川まどか、オランダ国立バレエのジュニアカンパニーの升本結花、ルーマニア・シビウ国立バレエの関野海斗が踊った。若く明るい『パキータ』の雰囲気をよく表した踊りだ。続いて『白鳥の湖』よりアダージョ。スウェーデン王立バレエの佐々晴香の美しいラインとハンガリー国立バレエの高橋裕哉の落ち着いた丁寧な踊り。無駄のない端正で静謐な踊りに観客もじっと見入っていた。

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『白鳥の湖』佐々晴香、高橋裕哉

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『白鳥の湖』佐々晴香、高橋裕哉

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『My Neon Flicker』刈谷円香

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『My Neon Flicker』刈谷円香

コンテンポラリー・ダンスの世界初演となる『My Neon Flicker』は刈谷円香。同じネザーランド。ダンス・シアター1(NDT1)のダンサー、パクストン・リケッツが振付けたソロ作品。表題はネオンの明滅という意味だろうか。舞台上にLEDの不規則な光のラインが置かれていて、その光りに触発されたように踊る。独特の感覚が身体のリズムに乗せて踊られていた。

『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥは、2012年にローザンヌ国際バレエコンクールでゴールドメダルを受賞し、注目を集めたハンブルク・バレエの菅井円加と、Bright Step代表でロシア国立バレエ・モスクワで踊る西島勇人。菅井の悠々とした踊りと西島の内側からの弾けるような動きが、フランス革命を起こした民衆のエネルギー、躍動するその姿を垣間見させる舞台だった。Act 1 の最後は、オランダ国立バレエのソリストの奥村彩とオランダ国立バレエの山田翔が踊る『エスメラルダ』よりグラン・パ・ド・ドゥ。舞台を広く使ってグラン・パ・ド・ドゥらしく、大きくダイナミックに見せる踊りだった。

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『パリの炎』西島勇人

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『パリの炎』菅井円加

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『パリの炎』西島勇人

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『エスメラルダ』奥村彩

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『エスメラルダ』山田翔

Act 2 は『海賊』より、メドーラ、アリ、コンラッドの踊りは、過日ウィーン国立歌劇場バレエの来日公演で素敵なオダリスクの踊りを見せた芝本梨花子と高橋裕哉、そしてドイツ・アウグスブルグ州立劇場ソリストの山本勝利で始まった。デザイナーは後藤凪。全体に海のブルーを基調としたカラーが綺麗で、デザインも品よくまとめられていた。特に芝本の衣装が良く似合って美しかった。
奥村彩とロイヤル・フランダース・バレエの加藤三希央は、フアンホ・アルケス振付の『Consequence』を踊った。黒いショーツとベージュのトップというシンプルな衣装ながら、振付の滑らかな動きともよく合い、照明を浴びると輝く優れた衣装。デザイナーは、オリバー・ホーラー。アムステルダムでファッションデザインを学び、舞台美術の道を進んできた。オランダ国立バレエの衣装部ディレクターでもある。

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『海賊』山本勝利

『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥは、佐々晴香とスウェーデン王立バレエの石田浩明。佐々のオーロラが着けた薄手の超ミニスカートが可愛くラインも美しく現れた。色彩も男女ともにバランスが良かった。デザイナーはこはる。

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『海賊』芝本梨花子

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『海賊』高橋裕哉

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『Consequence』奥村彩、加藤三希央

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『眠れる森の美女』佐々晴香、石田浩明

そして『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊り。石川まどか、菅井円加、升本結花、関野海斗、西島勇人、山田翔が踊った。デザイナーはHiKARUで、ペアごとにブルー系、紫系、黄色系の色調でまとめていて、どれも良かった。中でも黄色のシースルーのロングスカートを翻して踊った、菅井円加は華々しくエネルギーに溢れていた。

最後は『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ。タタールスタン国立歌劇場バレエの寺田翠と同じカンパニーの大川航矢。寺田のキトリは魅力的。大川もダイナミックな踊りでその実力を見せた。衣装もレースを使い、チュチュのふんわりとした感じも表現されていて良かった。デザイナーは加島千紗子と森岡祐衣。

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『ドン・キホーテ』より
石川まどか、菅井円加、升本結花、関野海斗、西島勇人、山田翔

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『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊り
菅井円加

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『ドン・キホーテ』寺田翠、大川航矢

そしてカーテンコールの若さが目に見えて現れていて、とても楽しかった。
この公演は全員が自分たち自身で舞台を作り踊るのだ、という自覚がはっきりと感じられ、ダンサーたちの気持ちがまとまっていて見ごたえがあった。ファッションデザイナーとのコラボレーションも、意外な効果を見せて成功だったと思う。もっとこうした試みを見たくなった。
ただしかし、敢えて言うと。公演パンフレットには音楽のことや振付のヴァージョンのことが何も触れられていない。若いダンサー中心だからかもしれないが、少し心配になった。バレエはダンサーが表現するものではあるが、振付や音楽などのスタッフの創意によって作られている面は大きい。目指している点には共感することも多いのだが、今後は、そうした点にももっと敬意を持って活動を行って行ってもらいたい、と思った。
(2018年7月30日 メルパルクホール)

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© 鹿摩隆司(すべて)

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