横浜港の夜景をバックに、野外ステージで踊られた東京バレエ団の3演目

ワールドレポート/東京

佐々木 三重子 Text by Mieko Sasaki

「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018」

〈横浜ベイサイドバレエ〉:東京バレエ団
『タムタム』フェリックス・ブラスカ:振付、『ボレロ』モーリス・ベジャール:振付ほか

3年に一度、横浜で開催される日本最大級のダンスの祭典「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018」が、東京バレエ団による〈横浜ベイサイドバレエ〉で開幕した。このダンスの祭典は、クラシック、コンテンポラリー、ストリートなどあらゆるジャンルのダンスを対象にしており、プロによる公演のほかにアマチュアも参加できる多彩なプログラムを用意して、9月30日まで開催中である。3回目の今年は、フランスのリヨン・ダンス・ビエンナーレとの提携が実現したことで、海外のダンスカンパニーやアーティストの公演も行われる。
オープニングを飾った〈横浜ベイサイドバレエ〉は、横浜港の夜景をバックに象の鼻パークに設えられた野外ステージで、港からの涼しい夜風に吹かれながらバレエを鑑賞するという、夏の夜ならではのイベントである。2012年の初回から3回連続の出演となった東京バレエ団は、趣きの異なる3演目を上演した。2日公演の初日を観た。

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photo Kiyonori Hasegawa(すべて)

最初の演目はフェリックス・ブラスカ振付の『タムタム』で、パーカッションのヴァンサン・バウアーとタムタムのアドリアーノ・ドス・サントスのダイナミックな生演奏で進行した。冒頭、舞台中央で一人ライトを浴びて立つ宮川新大はやや緊張気味に見えたが、緩やかな動きに始まり、身体を大きく操って力強く踊った。次の男女の群舞は、歯切れ良いリズムにのって、動物のようなコミカルな振りも見せながらステージを左右に横切り、躍動感あふれるダンスを繰り広げ、続く男女による静けさをたたえた親密なデュエットと好対照を成した。最後は全員が総出で賑やかに盛り上げた。

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次の演目はウラジーミル・ワシーリエフ振付の『ドン・キホーテ』の第3幕よりのハイライトで、キトリとバジル、エスパーダとメルセデスの2組の男女がフォーカスされた。エスパーダのブラウリオ・アルバレスはシャープな足さばきを見せ、メルセデスの奈良春夏は思い切りよく脚を振り上げ、身体を反らせて踊った。グラン・パ・ド・ドゥでは、バジルの秋元康臣のしなやかなジャンプや回転技が冴え、キトリの川島麻実子も端正な踊りでまとめた。締めはモーリス・ベジャール振付の傑作『ボレロ』で、メロディを務めたのは上野水香。何かを見据えるように視線を定め、音楽の高揚を身体に取り込んで内燃させ、クライマックスへと突き進んだ。ラストに至るプロセスを十分に考えて、自身をコントロールしていたように感じた。
この〈ベイサイドバレエ〉の公演、屋根のない野外ステージということで、踊る側の開放感を感じたし、観る側もくつろいだ気持ちで楽しめた。長期に渡って開催中のこのダンスの祭典、9月後半には前衛作品に定評のあるナンシーのバレエ・ロレーヌや、リヨンのサーカス・アーティスト、マチュラン・ボルズの公演、森山未來とノルウェーのヨン・フィリップ・ファウストロムと音楽の及川潤耶による新作『SONAR』など、注目の公演が控えている。
(2018年8月4日 象の鼻パーク 特設ステージ)

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photo Kiyonori Hasegawa

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photo Kiyonori Hasegawa(すべて)

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