セーラー服を着た3人のバレリーナが「秘密の旅」をする・・・コシミハルの魅惑的な音楽とダンスを堪能
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ワールドレポート/東京
関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi
フォリー・バレリーヌ「秘密の旅」
コシミハル:芸術監督・音楽監督・特別出演
作曲、作詞、編曲などの音楽家としてシンガーソングライターとして活躍し、その才能を武満徹や細野晴臣に愛されたコシミハルが音楽を構成し、芸術監督を務めた<フォリー・バレリーヌ>が、東京・渋谷の伝承ホールで上演された。これはチャコットが推進する「バレエ鑑賞普及啓発公演」の第3弾である。
コシミハルは歌はもちろん、ピアノの弾き語り、アコーディオンを奏でるなどして特別出演している。さらに音楽構成では、自身の作曲した曲とともに、エリック・サティ、ダリウス・ミヨー、ジェルメーヌ・タイユフェールなどのフランス近代音楽やジャズやシャンソン、鳥の鳴き声や水音などの自然音なども加えられた素晴らしいの音の世界を作った。その音楽とともに、オーディションでクラシック・バレエの基礎的なテクニックがあるかどうかを中心に選んだ8人のフレッシュなバレリーナたち(山本禮子バレエ団から石原朱莉、スターダンサーズ・バレエ団ジュニアカンパニーから北川明代、樽屋萌、中井杏香、東京シティ・バレエ団から松本佳織、谷桃子バレエ団附属アカデミーから渡邉桜子、ほか 木原奏音、澤田夏)が生き生きと踊った。
© Jin Kimoto
© Jin Kimoto
舞台構成は「セーラー服を着た3人のバレリーナが『秘密の旅』をする」となっていて、いくつもの不思議な情景が暗い舞台の中にに浮かび上がり、バレリーナたちの「無邪気でいたずらで勇敢な旅」が、ちょっとコケティッシュにまたノスタルジックに描かれている。セーラー服を始め真っ赤なドレス、白いバレエ衣装など様々に工夫を凝らした可愛らしい衣装を着けたバレリーナたちが、様々に椅子を使って踊ったりするダンスがレビュー風に展開した。少女の可愛らしさの中に秘密めいた、シュールなイメージが垣間見え、ワクワクするような楽しさが堪能できた。
セーラー服のイメージは、ヴィスコンティの映画『ベニスに死す』のビヨルン・アンドレセンが着ていたものをモティーフにしたという。個人的なことで恐縮だが、私は出版社時代に「ヴィスコンティ秀作集」の編集に携わっていたこともあり、いささか感傷的になった。そしてまた、ミュージック・ホールの世界をこよなく愛したローラン・プティは、その愛のあまり、一時、カジノ・ド・パリを買い取ってしまったこともあったが、プティの夢は、ミスタンゲットとシュバリエの恋をバレエにすることだった、などということも思い浮かんできた・・・閑話休題。
© Jin Kimoto
共同振付とバレエミストレスは、スターダンサーズ・バレエ団所属で勅使川原三郎のもとでも踊った森本京子、ユニークバレエシアターや青山バレエフェスティバルなどでも踊った林かおりが務めた。
(2018年7月19日 渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール)
© Jin Kimoto
© Atsushi Tsunoda