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中村恩恵、近藤良平、首藤康之と若い3人のダンサーが踊った「3」を廻る三つの物語

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

『Triplet in Spiral』『トリプレット・イン・スパイラル』

中村恩恵:構成・演出、近藤良平、中村恩恵:振付

中村恩恵の構成・演出による<「3」を廻る三つの物語>というサブタイトルが付された『トリプレット・イン・スパイラル』を見た。これは中村が立ち上げた、Nakamura Megumi Choreographic Centerが関わる最初の公演である。
出演は、中村恩恵、近藤良平(コンドルズ)、首藤康之と新国立劇場バレエ団の若手男性ダンサー、福田紘也と渡邊拓朗、そしてオーディションによって選ばれた加藤美羽の6名。

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撮影/塚田洋一

まずは中村・近藤・首藤と福田・渡邊・加藤の世代の異なった3人組が登場。若い3人が椅子に腰掛け、背後に中村・近藤・首藤が立つ記念写真的シーンから始まり、次々と入れ替わった。

そして加藤美羽のソロ・ヴァリエーション。伸びやかな今を生きていることを表すような踊りだ。新国立劇場バレエのダンサーふたりのデュエット、恐らくは近藤の振付と思われる身振り的な動きを駆使したダンス、じゃれあうかのような振りもあった。若い3人組の踊りもあり、音楽はワルツやボーカル曲など懐かしいものが次々とテンポ良く替わる。そして中村・近藤・首藤のトリオのダンスとなる。アルレッキーノ、コロンビーヌ、プルチネラなどのコメディアデラルテのキャラクターなども連想させたり、フォーキンのバレエ『ペトルーシュカ』のバレリーナと人形と黒人も思い浮かべたが、あれほど力関係がはっきりとした追いかけっこがあるわけではない。

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撮影/塚田洋一(すべて)

踊りが生まれてくる3人の掛け合いはよく考えられていておもしろいのだが、ありがちなルーティーンのものはない。最初は観客もやや戸惑い気味に見ていたが、だんだんと笑いもこぼれるようになった。しかしこれだけの流れを作るのは、実に大変な作業だったのではないか、と拝察した。3人のそれぞれの特徴が生かされていて、楽しむことができた。中でも中村恩恵は、どちらのダンサーと絡んでもまた、どのように動いても、それが美しく見えるのはさすがというほかない。

やがて太い竿のような長い棒を持って、3人で描ける様々な図形を舞台上に描いてみたり、竿を帆のように立てたり、望遠鏡のように覗いてみたり、船を漕ぐような所作もみせた。竿が様々なイメージを喚起させるのにも感心した。そしてこれは、舞踊家が大海原を渡って行き、港に立ち寄って振付家や製作者あるいは他のジャンルの芸術家などと出会って素養を深め、また新たな港を目指して航海を続けていく、というイメージなのであろうか。
3人のあらゆる組合せが披歴されたのであるが、「3」は廻ることを想起させる。港を廻りながら成長し、廻ってきた人と交流し、さらに廻り続けることが舞踊家の活動のイメージなのかもしれない、そんなことにも思い至った。
(2018年7月8日 スパイラルホール)

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撮影/塚田洋一(すべて)

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