極限的な環境の変化と人類の存在の対比が、ダンスのプリミティヴな動きよって客席に突きつけられた

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

東京芸術劇場 TACT/FESTIVAL 2018

『Solstice―-夏至/冬至』ブランカ・リー:振付・演出

冒頭に繰り広げられるプロジェクション・マッピングは、実に迫力があった。遠くで人間たちが熔けて行く映像、地球が猛烈な温暖化により燃え尽き、大寒波が襲来して氷河期となりすべてが氷結するまでの極限的変化が映される・・・。そして、そうした外界の激しい変貌のなかの人類の存在が表されていく。
舞台の天から吊り下げられた大きな白い布。浮世絵で波や雲を表す模様のような形が釣り天井のように下がってきたり、斜めに傾いたり自在に動く。地には黒い小粒の砂状のもの(タイヤになる前の段階のゴムだそうだ)がびっしりと敷き詰められていて、奥は一段盛り上がっている。これはおそらく、地球の大気圏というか、人間の生存圏を表しているのであろう。

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Photo:Tsukasa Aoki

音楽はバシール・サノゴの歌と強烈なパーカションを中心とした演奏だが、大暴風や大地が割れるような様々な破壊音と大きな布の旗めく音、水が飛び跳ねる音などの自然音とも共振している。

ダンスは群舞による人間の存在と活動を象徴的に表すように、素肌に白布だけを纏ったダンサーたちの流麗な動きや、ショーツだけで激しく突き動かされるようなプリミティブな動きなどが、次々と繰り広げられ、圧倒的な重量感が観客席を席巻した。
この舞台には、感情などには全く拘泥せず、全体とその本質に突き進む強力なエネルギーがある。果たして「神」が存在する余地があるのだろうか、とまで思い至るほどの激越な環境と人類の存在の対比を見た思いである。
ブランカ・リーはスペインの出身だそうだが、それを感じさせる民族的な表現も散見された。われわれの風土とはまた異なった、「スペイン」が舞台上に現れたかとも思えたのだった。
(2018年6月29日 東京芸術劇場)

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Photo:Tsukasa Aoki

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Photo:Tsukasa Aoki

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