珍しいキノコ舞踊団のメランコリックな踊り

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

伊藤千枝 振付・構成・演出『私が踊るとき』

珍しいキノコ舞踊団

最近気が付いたのだが、珍しいキノコ舞踊団の公演を観にいくときは、ほかの舞台を観に行くときよりもいくらか心がウキウキしている。それはやはり、何はばかることなく女の子の気持ちをじっくりと観察、鑑賞できるからかもしれない。
しかし、とは言え彼女たちもぐっと大人になった。パフォーマンスには、にぎやかに飾った女の子の部屋も、ぶつぶつとこだわりつづけるような子供の頃の想い出も登場しない。

切り絵で構成した昼・夜、自然や都会の光景を描いた背景を使い、女性の日常的な感覚による動きをダンスで構成している。
明るくのどかで軽快であけっぴろげだが、メランコリーが少し入ってアクセントになり、全体がいい雰囲気。音楽もジャズやポピュラーのスタンダードが流れて、相変わらず歌が多いが、今回はムードたっぷりの「港が見える丘」や都々逸まで使われていた。
山伏姿が客席の前方に登場して法螺貝を鳴らして開幕の合図となる。

珍しいキノコ舞踊団「私が踊るとき」 写真:片岡陽太

二人で組んで、彼氏や結婚のベタなおしゃべりをしながら格闘技風の組み手をくり返し、それをもう一人がマイクをかかげて拾うシーンがおもしろかった。観客席からも笑いが起っていた。
女性の実感の奥に潜む本音を持ち寄っておしゃべりすることは、ストレスの解消ともなっておもしろい。しかしこれがあまりに実感的な方向に進んでしまうと、<私が踊るとき>からは、かえって遠ざかってしまうような気がする。やはり舞台上で見せるためには、もう一歩突っ込んだ表現の造型を構成しなければならない。
月と街の灯りとピアノを使ったメランコリックなダンスシーンは良かった。ちょっとしんみりしてしまったのだけど。
それにしても、男って25歳の頃は結婚したがる、という観察はさすがに鋭い。感服した。
(2010年1月22日 世田谷パブリックシアター)

珍しいキノコ舞踊団「私が踊るとき」 写真:片岡陽太

珍しいキノコ舞踊団「私が踊るとき」 写真:片岡陽太

珍しいキノコ舞踊団「私が踊るとき」 写真:片岡陽太

珍しいキノコ舞踊団「私が踊るとき」 写真:片岡陽太

写真:片岡陽太

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