コジョカル、酒井はな、ボーダー、康村和恵らスターが集ったガラ公演
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ワールドレポート/東京
- 桜井 多佳子
- text by Takako Sakurai
ユース・アメリカ・グランプリ2010
10周年記念日本ガラ公演
12月17日~20日、兵庫県尼崎市で日本予選が行われたYAGP(ユース・アメリカ・グランプリ)。22日には、東京に場所を移し、10周年記念のガラ公演が行われた。
日本予選の参加者100人以上が揃ってのグラン・ディフィレで幕が開き、前半は、入賞したユースたちの演技。後半には世界のトップダンサーが妙技を見せてくれた。
酒井はながジェイソン・レイリーと踊った『グラン・パ・ド・ドゥ』はクリスチャン・シュプック振付。ジュリー・ケント&マラーホフ、ロパートキナ&コールプらの妙技で知られるあのユーモラスな作品だ。
めがねをかけ、小さなハンドバッグを手にした酒井が客席から登場。それまでユースたちの熱演に沸いていた客席の雰囲気が、その瞬間にがらりと変わった。プロのアーティストを目の前にし、程よい緊張が走り、期待も高まる。突然の登場に驚く観客の視線を集めても動じず、自分の世界を構築している酒井の「役者ぶり」はさすが。まさにプロならではの存在感だ。コミカルな演技は、不思議なほど自然で、いわゆる「天然」の可愛らしさ。レイリーとの掛け合いも面白く、もちろん、決めるところは見事に決める。茶目っ気たっぷりでキュートな魅力が堪能できた。酒井は、夫でもあるフォーサイス・カンパニーの島地保武と、島地振付の『プシュケ』も披露。クラシック・バレエのみならず、コンテンポラリーにおいても秀でたダンス・センスを発揮していた。
急きょ出演が決まった康村和恵と清水健太は、K・バレエ・カンパニーの最新作、『ロミオとジュリエット』(熊川哲也振付)からバルコニーの場。ふたりとも全幕を踊っているが、それぞれ別のパートナーだったので、このペアでの演技は貴重。動きがクリアーな清水と、瞬時に役になりきる康村の個性が絡み、すがすがしくドラマティックな逸品に仕上がっていた。
ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル、アシュリー・ボーダー&ゴンザロ・ガルシアの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』は、本家本元の貫禄と迫力。細やかなステップが歯切れ良く音楽に乗せられ、なんとも心地良く、観客も踊らせるような演技に客席からは手拍子も起こった。この日の観客にはコンクール参加者も多く、客席の「ノリ」は、コンクール会場のよう。終演後、「手拍子」を非難する声も聞かれたが、モスクワにしてもヴァルナにしてもジャクソンにしても、海外の国際コンクールでは、ダンサーを応援する観客(出場ダンサーも含め)から手拍子が起こることは(たとえ、『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』のような演目でも)珍しくはない。
ガラ公演のラストを大いに盛り上げたのは、アリーナ・コジョカル&セルゲイ・ポルーニン(英国ロイヤル・バレエ団)の『海賊』。なんと言ってもコジョカルが素晴らしかった。ガラ公演という場を踏まえた、アピール度の高い演技。ゆっくり脚を上げ、長くキープするイタリアン・フェッテは、ユースたちにとってお手本であり、憧れの対象にもなったのではないだろうか。ただし、どんな超絶技巧を盛り込んでも、動きは音楽とともに流れている。華やかさと品格を身につけた彼女は、現在、まさしく世界トップ・プリマの一人であることを印象づけた。
(2009年12月22日、文京シビックホール)
撮影:谷岡秀昌(スタッフ・テス)