新年恒例の新国立劇場「ニューイヤー オペラパレス ガラ」

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

ジャック・カーター振付『グラン・パ・ド・フィアンセ』
ローラ・プティ振付『こうもり』より「グラン・カフェ」

新国立劇場バレエ団<ニューイヤー オペラパレス ガラ>

今年も新年恒例の新国立劇場「ニューイヤー オペラパレス ガラ」が開催された。
第1部はバレエ。
まず、チャイコフスキーの『白鳥の湖』第3幕の花嫁候補たちの踊りを、英国の振付家ジャック・カーターがパ・ド・シス『グラン・パ・ド・フィアンセ』として振付け、1960年にロンドンで初演したものを、牧阿佐美がステージングして上演した。

新国立劇場バレエ団<ニューイヤー オペラパレス ガラ> 撮影:瀬戸秀美

六人の花嫁候補が色とりどりのチュチュと華やかな髪飾りを着けて踊る。ドラマティックな『白鳥の湖』第3幕の中でも華やいだシーンだが、通常はカットされることが多い。いくつかの名曲を思わせるメロディが流れて祝祭的な気分に満ちた雰囲気が舞台に溢れる。
さいとう美帆、本島美和、小野絢子、長田佳世、寺田亜沙子、伊東真央の六人のダンサーは、それぞれ個性があり、牧阿佐美の肌理の細かい指示によるのだろう、匂うような繊細な感覚を新春の舞台に繰り広げた。

そしてシュトラウス二世のジプシー男爵の入場行進曲が演奏された。
プティ振付の『こうもり』からよく知られる「グラン・カフェ」。ギャルソンたちのきびきびとしたコミカルなダンスは、前曲の女性的華やいだムードとは対照的にシックでアーバンな世界に観客を誘う。
男たちの眼差しを一身に集めるベラ役は堀口純。よく伸びた美しい手脚とクリクリ動く大きな瞳がなかなか蠱惑的で、観客の姿勢も新春早々、思わず前のめりとなった。かくしてベラは、夜遊びに耽っていた夫ヨハン=山本隆之をたちまち魅了してしまう。惚れてしまえば男は弱い。散々、気をもたせられ翻弄される。華麗なるフレンチカンカンも踊られ、気持ちはますます募っていくばかり・・・。
パリジャン、プティのエスプリをとびきりに粋に、とまではいかないけど二人の関係はきちんと描かれていたので、ヨハンがこうもりとなってベラの跡を付けるシーンも効果的だった。
(2010年1月5日 新国立劇場 オペラパレス)

撮影:瀬戸秀美

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