実況中継と解説で見せる裏方の仕事と本番

ワールドレポート/東京

佐藤 円
text by Madoka Sato

遠田誠:構成・演出『re・re・re』

まことクラヴ

江戸川 卍丸や遠田 誠、中森下 真樹菜といった個性あふれるメンバーから構成されるまことクラブの公演。初めて彼らの舞台を観賞したが、なじみのお客様がいるようで開演前から「今回は何をやってくれるのだろう」といった期待に満ちた声が聞こえていた。
イントロは舞台上のスクリーンに映像が映し出され女性アナウンサーの実況と解説者による舞台中継。公演中の舞台裏を紹介するという手法で実況と解説のふたりのトークも「TVっぽく」なっていて観客の笑いを誘う。
舞台監督のインカムの声も聞こえる。キューだしとともに舞台上部にいる打楽器奏者の演奏が始まり、ようやくメンバーが舞台上に現れた。メンバーはゼッケンのような番号のついたジャージの衣装(色はエンジ。いわゆる「芋ジャー」のアレンジ衣装)で床をごろごろと転がったり、コミカルで単純な動き。メンバーが思い思いにうごいてウォームアップをしているような振付になっている。

続いて舞台裏スタッフの登場。場面の転換に照明のスタッフが舞台上に現れ、上から降りてきた照明のゼラを交換してみせる。カメラマンと実況、解説のスタッフも舞台上に現れて、映像ではないのにすっかりTV番組を見ているような感覚になった。

まことクラヴ『re・re・re』 (C)427FOTO

ダンスの合間にこの実況中継が入る。時には楽屋の様子を中継し、これから舞台に上がるダンサーにインタビューを行ったり、逆に踊り終えて楽屋に戻ったダンサーの様子を映し出したり。調光室に潜入し、実際照明を操作してもらったり、音響の説明をしてもらったり。スタッフの協力で面白おかしく裏方の仕事を本番をこなしながら伝える面白い演出だった。

音楽は打楽器に途中バイオリンが加わり、だんだんとメロディアスなものになっていった。
ダンスは椅子をつかって、椅子取りゲームが始まる。衣装はエンジのジャージからグレー系のスーツに変わっている。平静を装ったメンバーたちがちょっとしたきっかけで椅子を取り合う。半ば強引な者、さりげなく割り込む者など言葉を発せずともキャラクターが現れていて面白い。ついには舞台上中央で全員が椅子を囲んで、まことクラブについてのミーティングが始まる。タイトルの『re・re・re』って何? このクラブの活動はそもそも・・・と論議は白熱する。
言葉遊びの演劇的要素もありつつ、紙飛行機を使って子供が遊んでいるような流れるダンス・ハイハイで赤ん坊のようなコミカルさを見せるダンス・大きな風船をつかって遊ぶようなダンスなどを見せてくれた。 日常でよく見かける動きの一部を抜き出して見せることによって、コミカルで自然と笑顔になってしまうような身体の面白さを感じさせてくれた。動きと言葉のコラージュのような公演は最後にメトロノームが登場。メンバーの動きもメトロノームの針ように左右に揺れて、だんだんと終焉を迎えた。
ダンスという言葉だけでは表現できない身体パフォーマンスは演出の面白さもあって、飽きることなく楽しむことができる公演だった。次はどんな面白いことを考えてくるのか、とても楽しみだ。
(2009年12月23日 青山スパイラルホールにて)

まことクラヴ『re・re・re』 (C)427FOTO

まことクラヴ『re・re・re』 (C)427FOTO

撮影:(C)427FOTO

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