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踊る喜びに溢れるアメリカのバレエの楽しさを教えてくれたNBAバレエの「ショート・ストーリーズ 9」

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

NBAバレエ団

「Short Stories 9 ー BALLET INCREDIBLE」『La Vita』佐藤圭:振付、『ケルツ』ライラ・ヨーク:振付、『11匹わんちゃん』宝満直也:振付、『ブルッフ ヴァイオリン交響曲第1番』クラーク・ティペット:振付 他

NBA バレエ団の『ショート・ストーリズ 9 ー バレエ インクレアブル』は、団員が振付けた新作2本と、久保綋一が芸術監督に就任して以降に上演した作品から選んだ7作品のハイライト集だ。振付家名だけを見ても、バランシンを始めリン・テイラー・コーベット、ライラ・ヨーク、マーティン・フリードマン、アルヴィン・エイリー、クラーク・ティペットとアメリカで活躍した人たちが中心となっており、今日の日本のバレエの舞台の中では比較的珍しい名前が多い。

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「ヴァイオリン協奏曲第1番」佐藤圭/三船元維 

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「ヴァイオリン協奏曲第1番」

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「ヴァイオリン協奏曲第1番」新井悠汰(15日昼) 

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「ヴァイオリン協奏曲第1番」清水勇志レイ(15日昼) 

全体はACT 01、ACT 02、ACT 03という3部構成だったが、私は、最後のACT 03に踊られたクラーク・ティペット振付の『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番』に感心した。かつてはベルリン国立バレエ団の「マラーホフ・ガラ」などで上演されたこともあり、ABTの人気演目のひとつである。アクア、レッド、ブルー、ピンクの4組のペアとコール・ド・バレエ16人が踊った。とりわけコール・ド・バレエが美しく見えた。衣裳の薄い黄色のチュチュと刺繍のような模様を織り込んだゴールドのトップが絶妙な色合いで素敵。フォーメーションも良く調えられていて、様々な魅惑的な形を描いた。天才バズビー・バークリーのミュージカル映画の振付を彷彿させる華麗さだった。美しいラインと形象の変幻の中に、4色があしらわれたソリストのペアが蝶の如く飛来し、まさに薔薇の花園、天国の花畠が眼前に出現したかのよう。前半のスローな踊りも良かったが、後半の軽快なテンポの踊りで盛り上がり、大きな喝采を浴びた。

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「ケルツ」浅井杏里/古道貴大 

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「ケルツ」清水勇志レイ 

ACT 01で踊られたアイルランド民謡にライラ・ヨークが振付けた『ケルツ』は、上半身は脱力させて下半身中心のアイリッシュ・ダンスで構成されたもの。バグパイプが響く音楽とともにリズミカルに独特のダンスの世界を築いて、観客を魅了した。ACT 02はそれぞれにバラエティがあり楽しかった。『海賊』のパ・ド・トロワは今年NBAバレエ団が初演した久保版ではなく、プティパ版だったが抜粋して踊られる場合はトロワのほうがダイナミックであり、見栄えがする。その久保版の全幕『海賊』の上演に参加した宝満直也振付の『11匹わんちゃん』は、竹田仁美の一匹のねこちゃんとわんちゃんたちのやりとりというか、じゃれあいをダンスにしたもの。猫らしさと犬らしさが絡んでなかなか楽しかった。できればここに留まらず、なにかもうひとつ上の目指す創作も試みてほしい。楽しいと同時に、次に進むヴィジョンをも示してもらえればさらに嬉しい。

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「海賊」前沢零 

日本ではバレエはどうしてもヨーロッパの作品に片寄り勝ちだが、NBA バレエが上演するプログラムは、時にわれわれがあまり良く知らない作品世界を垣間見せてくれる。これがなかなか楽しめるのだ。アメリカのバレエには、観念から解放されたフィジカルな踊ることの喜びが脈打っていて楽しく、舞台を観るだけで明るい未来が感じられるような気持ちになってくるからだ。
(2018年6月15日 さいたま芸術劇場)

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「海賊」佐藤圭/三船元維/前沢零 

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「ガチューク賛歌」伊東由希子/鈴木恵里奈/野久保奈央 

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「11匹わんちゃん」竹田仁美
撮影:吉川幸次郎(すべて ※「吉」の字は正しくは「つちよし」)

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