エロスという生命の始源のエネルギーを求めたソロダンス『f』
- ワールドレポート
- 東京
掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
MOKK -solo-
『f』 村本すみれ 演出・振付
村本すみれが振付けたソロダンス「f」を観た。村本は日大芸術楽部出身で、中村信夫、加藤みや子に学んだのち、ダンスプロジェクトMOKKを立ち上げ、劇場空間にとらわれず、駐車場やコンテナボックスといった小空間でパフォーマンス行ってきた。『f』は、今年新たに始めたソロダンスの新シリーズ『Humming』に続く作品である。
『f』はひとつのソロ作品を3人で交代で踊る、という企画だった。オールスタンディングで移動自由という空間体験型の鑑賞スタイルで、なおかつちょっとした観客とダンサーのコンタクトもあるという。観客もダンサーと直接かかわる緊張感を味わう、なかなか思い切った試みの公演イベントである。
暗闇空間のなかに宙吊りの箱舟ようなものがあり、女性ダンサーが一人横たわっている。間遠な間隔で雫が滴り落ちる。その滴があたかも命を甦られさせるかのように、口で受け止めようと身体をよじるダンサー。闇の中に、原初のというかすべてを削ぎ落とされた世界。身体は苦しみ、悦び、痛みと様々な体験を重ね、混沌とした生命の始原のエネルギーをもって、次第に姿を現す生命としてエロス。そうしたものを表す演出の工夫と、ダンサーの動きだった。
出演者は、上村なおか、寺杣彩、松尾恵美が交代で踊る。私の観た日は寺杣彩が踊った。彼女は加藤みや子のダンスグループのメンバーで、2008年にはブラジル公演にも加わっている。
閉鎖的空間の中で厳しい姿勢はだが。スローな動きもしっかりとしていて、力強い表現力があり、生命の動悸が伝わってくるようであった。
(2012年9月12日 こまばアゴラ劇場)
撮影/和知明
撮影/和知明
撮影/和知明
撮影/和知明
撮影/和知明