均整のとれたバランスの良い身体と美貌、美しかったハミルトンのカナヤ

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

牧阿佐美バレヱ団

牧阿佐美、ドミニク・ウォルッシシュ、三谷恭三『時の彼方に〜ア・ビアント〜』

『時の彼方に〜ア・ビアント〜』は今回は、故高円宮殿下の十年式年祭にあたって再演された。
原作:島田雅彦、音楽:三枝成彰、そして演出・振付を牧阿佐美、ドミニク・ウォルシュ、三谷恭三が分担して担当するという、複雑な制作の過程を経て創られた作品である。前回は新国立劇場 オペラパレスに会場を移し、大友直人指揮、新日本フィルハーモニック管弦楽団を迎えて上演された。今回も三回目の上演にあたって、タイトルを改め、新演出を加え振付も一部改訂されている。
今回の上演は、初演当時から比べて演出的にはすっきりとまとまった印象を受けた。ただ初演時は「高円宮殿下という人物をここにどうしても刻印しなくてはならい」という切実な思いがあった。もちろん今回の上演も、舞踊界にとって掛け替えのない人物を惜しむ気持ちはいささかも弱まっていないが、時とともに変化する面はあるだろう。

カナヤは英国ロイヤル・バレエのソリスト、メリッサ・ハミルトン。コンテンポラリー・ダンスでは、ウェイン・マクレガー作品をよく踊っており、クリストファー・ウィールドンも踊っているという。リヤムはドミニク・ウォルシュ・ダンスシアターのドメニコ・ルチアーノ。彼はイタリア出身でサンカルロ劇場バレエやドイツのライン・オペラ座などで踊ったキャリアも持つ。
ハミルトンは均整のとれた身体と美貌の持ち主で、清楚な雰囲気の似合うダンサーだ。しかしもうひとつ大きな特徴が感じられなかった。外国人のペアが踊ったことで、少々印象が変わった。やはり、自然や環境といった考え方に違いが感じられるのではないだろうか。

撮影:山廣康夫

撮影:山廣康夫

原作者が言うように、現代の英雄とはなにか。現代の英雄が戦うものは何だろうか。といった問題が、かなり切実な問題として追求され、その答えの試みがなされている。そしうした問題は、常々問い続けていかなければならないのである。

撮影:山廣康夫

撮影:山廣康夫

撮影:山廣康

撮影:山廣康夫

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