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魅力的で忘れ難い女性的なセンスが光るプロジェクト大山の新作『みんなしってる』

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

プロジェクト大山

古家優里 構成・演出・振付『みんなしってる』

ダンサー全員がお茶の水女子大学卒業のキャリアを持ち、独特の水着とキャップを冠った衣裳で踊ることで知られるダンス・グループ、プロジェクト大山の新作『みんなしってる』を観た。構成・演出・振付はこのグループの主宰者、古家優里。
プロジェクト大山の特徴は、その奇妙で強烈な衣裳と少し絡みつくように音を捉えて動くちょっと挑発的というか蠱惑的な踊りとのコントラストが醸すとぼけたニュアンスだろうか。この女性的な味がなかなか魅力的で忘れ難く、プロジェクト大山の公演、と聞くと思わず知らず劇場へと足が向いている。

あまりデビュー当時の舞台は知らないのだけれど、彼女たちのチームカラーはブルーだと思い込んでいた。
ところが今回は、金色のメルヘンチックな衣装にクリスマスによく被る三角帽子を着けた衣装でオープニングが始まった。そのほかにも着替えて踊っていたが、今までに比べてずっと豪華になった。ただなんとなくだが、観客の気持ちとしてはあまり豪華にして欲しくはないのではないだろうか。
タイトル通り、プロジェクト大山というチームとそのダンス表情をつぎつぎとみせていく。ダンスは、音楽のメロディとリズムを輻輳して動きに変換し、ユニークで立体的なフォーメーションを作っていて見応えがあった。

(C)HARU

(C)HARU

これ見よがしなプロフェッショナル風の動きに惑わされることなく、振付家とダンサーの感覚に忠実に舞台を構成している。このなかなか優れたバランス感覚は良い、と思った。
現在を生きる女性たちが感受する様々な事象に、ちょっとした演技とそれをきっかけとしたダンスはそれぞれがおもしろかった。ただ全体的に感じたことは、ダンスの部分と演技的な部分が分けられるとすれば、両方のニュアンスが少々近すぎるというと変だが、もう少しはっきりとしたコントラストがついたほうがよいのではないか。やや優等生的な作りというか、もっといい加減な大胆さ、意外性があってもいいのではないだろうか、などと観客は贅沢なのです。
ともあれ、「しってる」と聞かれたら「うん」と少し笑顔で答えられる状態となって劇場を後にすることができたことは間違いない。
(2012年6月24日 スパイラルホール)

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