ヴァーチャルな映像を駆使したシュールな舞台

ワールドレポート/東京

佐々木 三重子
text by Mieko Sasaki

Systeme Castafiore "Stand Alone Zone"

システム カスタフィオール『スタンド・アローン・ゾーン』

精巧なCG映像と舞台上のパフォーマンスを巧みに交錯させたファンタスティックな作品で知られる、フランスの実験的なカンパンニー「システム カスタフィオール」が初来日。行き過ぎた産業開発や環境破壊への警告を込めた代表作『スタンド・アローン・ゾーン』(2009年初演)を上演した。システム カスタフィオールは、ブラジル出身の振付家、マルシア・バルセロスと、作曲家・演出家のカール・ビスキュイが1989年に設立したもので、ダンスや映像、音楽、照明を巧みにリンクさせた斬新な舞台作品で注目されている。

『スタンド・アローン・ゾーン』は、文明が終焉を迎えた2813年秋に設定されている。冒頭、巨大なスクリーンに映し出されたのは、汚染された地上を離れた空中の未来都市。コンクリートの迷路が走り、鉄骨の建造物が並ぶ都市はまるで廃墟のようだ。描かれるのは、子供の脳の奇病を治すため、「ゾーン」と呼ばれる立ち入り禁止区域の中心にある秘密の部屋へと向かう旅である。そこに行き着くには、地下の世界に下り、9つの秘密の部屋を通り抜けなければならない。登場するのは、キューピーのような頭をした子供や、くちばしの長い鳥の頭をした医者ら、珍奇な容姿の人間たちと奇っ怪な動物たちだ。演じたのは4人の男女で、次々に衣裳を変えて人間にも動物にもなり、映像の中のパフォーマーと連携もすれば、映像から脱け出たように舞台に現れる場面もあり、自在な活躍を見せた。

急降下するエレベーターから見える外の映像を投影しながら、エレベーター内の男女を真上から見下ろす構図をステージで現前させるトリックには幻惑された。ただ、断片的な短いシーンを連ねるように展開していくだけに、突飛な登場人物の容姿や演出の面白さばかりに関心が向いてしまい、背後にこめられた寓意はかすんでしまった。ともあれ、精度の高いCGを駆使した、極めてリアルなヴァーチャルな世界に遊んだ1時間10分だった。
(2012年6月23日 彩の国さいたま芸術劇場)

システム カスタフィオール『スタンド・アローン・ゾーン』 (c) Matron

(c) Matron

システム カスタフィオール『スタンド・アローン・ゾーン』 (c) Matron

(c) Matron

システム カスタフィオール『スタンド・アローン・ゾーン』 (c) Matron

(c) Matron

ページの先頭へ戻る