世界中で踊る日本人ダンサーが帰国して、日頃の成果を競う「バレエ・アステラス」開催

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

バレエ・アステラス 2013〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜

新国立劇場バレエ研修所

海外で活躍するバレエダンサーが夏期休暇で帰国するこの時期に開催される「バレエ・アステラス」は、今年で早くも4回目を迎えた。新国立劇場バレエ研修所の研修生と海外で踊る日本人ダンサー、そして今回はバレエ教育機関の国際交流として、カザフスタン共和国国立A.V.セレズニョフ記念アルマティ舞踊学校がゲストに迎えられた。(アルマティは1997年までカザフスタン共和国の首都で旧称アルマ・アタ。現在の首都はアナスタ)

第1部では小島章司の演出・構成・振付によるフラメンコ『FANDANGOS Y BULERIAS』を第6期から第10期までの研修所修了生と研修中の生徒が踊った。
続いてカザフスタン共和国国立のアルマティ舞踊学校による『アントレ』(振付G.アダモワ、音楽ヴィヴァルディ)『ハイオト-人生』(振付Z.アクヒロワ、ウズベスク民謡)『エル・トゥラン-闘いの荒野-』(振付A.サイディコワ、音楽フォークロア・アンサンブル「トゥラン」)が踊られた。
第2部は、まずはカザフスタン共和国国立のアルマティ舞踊学校の『くるみ割り人形』のアダージォ。カップルの踊りを4人の男性ダンサーが支える。みんな身長が大きく黒髪。それだけで独特のムードが生まれた。オーソドックスなワガノワ・スタイルでしっかり踊った。

「海賊」パ・ド・ドゥ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

以後は『白鳥の湖』のアダージォ以外はすべてパ・ド・ドゥだった。まずは『ゼンツァーノの花祭り』をアメリカ南部の都市メンフィスのバレエ・メンフィスの唐沢秀子と黒人のケンドル・ブリトが踊った。軽快なステップは見る人を幸せにする、と感じさせる楽し踊り。
続いてドレスデン・ゼンパーオーパー・バレエ団の小笠原由紀とクラウディオ・カンジアローシが『海賊』。小笠原はワシントンのキーロフアカデミー出身、アメリカユースグランプリ(YAGP)1位入賞。新国立劇場バレエ団からは研修所2期修了生の堀口純が貝川鐵夫と『白鳥の湖』第2幕のアダージォを踊った。時に少し頼りなげに見えることもあるが、全体に一心に踊っているのが感じられて好感のもてる舞台だった。第2部の最後はウクライナ国立オデッサ歌劇場バレエ団のプリンシパル同士の寺田翠と大川航矢が『ダイアナとアクティオン』を踊った。ワガノワの振付らしく、全身を使い切って踊った。大川はジャンプも高く会場を沸かせた。

「サタネラ」 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

第3部は『サタネラ』を寺田亜沙子と奥村康祐。女性としては大柄の寺田とそれほど長身ではない奥村のペアがこの曲を引き立てた。奥村のしっかり身に付いた演技力と踊りを融合させる天性の力には感心。寺田は素晴らしいプロポーシヨンを生かして、チャーミングなキャラクターを作った。続いて日本の岸辺光代の下でバレエを始めて、オーストラリア・バレエスクールに入学、2009年のローザンヌ国際バレエコンクールトップ、2010年YAGPシニア1位で2011年よりパリ・オペラ座バレエ団に入団したオニール八菜とフロロン・メラックが『眠れる森の美女』第3幕のパ・ド・ドゥを踊った。

八菜は、素晴らしい美貌の持ち主で、舞台に立っただけでオーラを感じさせる。プロポーシヨンも完璧。8歳まで日本にいたということで、メンタルは日本的なところがあって控え目だったが、外見的には西欧人の美女。日本語で会話を交わすのが不思議な気さえする。振付家志望というメラックは端正な印象のダンサーで、この二人の『眠れる森の美女』はたいへん豪華な舞台を創った。ポーランド国立バレエ団の海老原由佳とウラジミール・ヤロシェンコは『トリスタン』よりパ・ド・ドゥ。日本でもお馴染みなった英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル同士の佐久間奈緒とツァオ・チーは『タランテラ』。さすがプリンシパル・ペアには手慣れた踊りだった。締めくくりは最近はタマラ・ロホが芸術監督に就任したイングリッシュ・ナショナル・バレエのスクールに(ENBS)からENBに入団し、プリンシパルを務める高橋絵里奈と、やはりキューバ出身のプリンシパルのアリオネル・ヴァーガスが『白鳥の湖』の黒鳥のパ・ド・ドゥ。プロポーションの整った高橋の演技力も兼ね備えた素敵な踊りに目を惹かれた。
海外で踊る日本人はとても多くなった。いまやどこの国に行っても日本人バレエダンサーがいるのではないか、と思われるくらいだ。それぞの地域のバレエ団で踊り、多くの成果をあげ、やがて日本に帰国することがあれば、ぜひ後進にもそれを伝えていって欲しい。
(2013年7月21日 新国立劇場 オペラパレス)

「ダイアナとアクティオン」グラン・パ・ド・ドゥ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「眠れる森の美女」第3幕パ・ド・ドゥ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「トリスタン」よりパ・ド・ドゥ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「タランテラ」 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「白鳥の湖」より

撮影:瀬戸秀美

「くるみ割り人形」よりアダージオ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「ジェンツァーノの花祭り」パ・ド・ドゥ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

「白鳥の湖」第2幕アダージオ 撮影:瀬戸秀美

撮影:瀬戸秀美

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