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勅使川原の造形力により劇場空間にドドの塑像が刻み込まれた

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

KARAS

『ドドと気違いたち』勅使川原三郎:振付

勅使川原三郎がポーランドの作家ブルーノ・シュルツの小説に基づいた新作『ドドと気違いたち』と『春、一夜にして』(再演)を、最近しばしば上演しているシアターX(カイ)で連続上演した。シュルツはポーランド出身のユダヤ人作家、画家で、第2次世界大戦中に偶然遭遇したゲシュタポの無差別殺戮により、命を落とした、という。勅使川原は最近、シュルツとの「劇的接近」によるダンスを試みている。秋にはまた、シュルツの『第2の秋』を踊る予定になっている。

『ドドと気違いたち』は、シュルツの短編集に収められていた『ドド』という作品に基づいて振付けられ、勅使川原三郎、佐藤利穂子、川村美恵、ジイフが踊った。
ドドというひとりの男を中心にその父親と母親の日常の行動を極めてシンプルに描いている。シンプルだがそれはもちろん、孤独を象徴するもので、そのテキストに寄り添って踊るダンサーたちの動きもまた一定の深度をもって、テキストの喚起する象徴性と共振している。見方によれば、ドドの行動が奇矯に見えれば見えるほど、その孤独の深度は深い。さらに言えば、ほとんど家の中の食堂と自分の小部屋の中でしか行動しない父親の孤独はいっそう深いと言えるかもしれない。

KARAS『ドドと気違いたち』 撮影/吉田泰子

撮影/吉田泰子

実際、ドドは父親を見て、その珍妙さに呆れ、じつは密かに尊敬しているのではないか、とも推察される。母親=女性についてはあまり多くは描かれていないが、劇中に踊られた佐藤利穂子のソロに、そのすべてを語らせているのだろう。
テキストをナレーションとして流しながら踊ったが、勅使川原三郎の造形力が、見事に刻んだ人間のひとつの塑像が舞台に浮かびあがり、7月の宵、「孤独という開かれた扉の中」に消えて行った・・・・・。しかし、観客の心にはドドの塑像が刻み込まれており、再び消えることはないだろう。
(2013年6月17日 シアターX(カイ))

KARAS『ドドと気違いたち』 撮影/阿部章仁

撮影/阿部章仁

KARAS『ドドと気違いたち』 撮影/小熊栄

撮影/小熊栄

KARAS『ドドと気違いたち』 撮影/吉田泰子

撮影/吉田泰子

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