3人のフランス印象派の音楽とともにダンサーの身体が交錯して、鮮烈な印象を残した
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掲載
ワールドレポート/東京
- 関口 紘一
- text by Koichi Sekiguchi
新国立劇場バレエ団
「Trip Triptych フランス印象派ダンス」平山素子:演出・振付
平山素子の演出・振付による「Trip Triptych フランス印象派ダンス」を観た。エリック・サティ、モーリス・ラヴェル、クロード・ドビュッシーの音楽を編成して、10人のダンサーとともに平山自身が踊った。
「Trip Triptych」は、三連画の旅というほどの意味だと言う。三人のフランス印象派の音楽家の音楽とダンサーたちの身体が描く様々なシーンを旅するわけだ。
第一部はこれら作曲家たちの比較的初期の作品を編成している(音楽の監修は笠松泰洋)。サティの「サラバンド」「喫茶店の音楽」「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」「県知事の私室の壁紙」、ドビュッシーの「弦楽四重奏曲」、ラヴェルの「5つのギリシャの民謡」が使われた。音楽にインスパイアされて、美術・文学(詩)といった芸術ジャンルへの想いも込められているのだろう。センスの良い色(グレーと淡いオレンジ)の衣裳を着けたダンサーたちが、キャリーバッグを活用しながらダンスは進行した。ダンサーたちの身体が交錯して様々な印象が発露し、音楽の音色が絵の具のように彩色を施す。
撮影/鹿摩隆司
撮影/鹿摩隆司
第二部になると、くっきりとしたイメージが現れる。ドビュッシーの「牧神の午後」が流れる中、舞台奥に据えられていた大きなガラス面に水が勢いよく放射され、激しく流れ落ちる、というパフォーマンス。
闊達で魅力的なソロを踊った小尻健太のシャツを絞ると水が舞台床に滴り落ちた。ここでは身体が水と関わり、濡れた衣裳で踊る感覚、あまりダンスから感じられないはずの感覚が提示されている。圧巻は平山自身が踊ったラヴェルの『ボレロ』。時折、ストップモーションを入れながら、腕、上半身、ステップ、頭、肩なとを自在に動かしてリズムをとり、メロディを表現してゆっくりと次第に音のステージを登って行く。
クライマックスに達するとなんと舞台からスッと消えた。そしてマックスに明るくした照明のみが舞台を照らす。意外性の中に清潔な印象を舞台に残したダンスだった。
そのほかのダンサーは、高原伸子、西山友貴、福谷葉子、原田みのる、鈴木竜、宝満尚哉、アレッシオ・シルヴェストリン、青木尚哉、平原慎太郎が踊った。
(2013年6月7日 新国立劇場 中劇場)
撮影/鹿摩隆司
撮影/鹿摩隆司