震災からの復興を希求する "コッペリア" の物語が熱く踊られた

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

松山バレエ団

『コッペリア』または『Festival de la Renaissance』清水哲太郎:構想・構成・演出・台本振付

松山バレエ団が<『コッペリア』または『Festival de la Renaissance』>新制作し初演した。レオ・ドリーブの『コッペリア』に基づいて、清水哲太郎が換骨奪胎。設定を原典のポーランド、ガルシア地方からフランス革命の前年の地中海に面した小さな街としている。

そこは昨年、大災害に襲われた地で、未だ火山が鳴動している。その中で復旧復興に一生懸命に励む人びとの物語となっている。この街のリーダーだったコッペリアは、災害の最中に被災者を助けようとして犠牲になり、未だに行方不明である。コッペリアを失って科学者の父コッペリウス・スピノザは激しく消沈して、かつてのような街の人々との接触を絶っている。スワニルダはコッペリアを慕い大いに尊敬していた。フランツは優れた石工でやはり、やはりコッペリアを慕いともに街のために尽くそうとしていた。コッペリアがいなくなった街は、被災一年目の復興祭を開催しようと準備を整えている。第2幕ではコッペリウス・スピノザの部屋で、原典と同じような騒動があり、スワニルダはコッペリアに乗り移り、フランツは薬を飲まされて眠ってしまう・・・・といった展開の物語が作られている。
ただ舞台を観ていると、大災害を被った街の深刻さはあまり強調されていないように見えた。初演ということもあり、ストーリー的にはスムーズな展開とは少々言いにくいが、人々が一丸となって街の復興を願う強い気持ちは感じられた。非常に数多くの登場人物が舞台上にいることが多く、装置もいろいろと置かれている。また群舞はスタッカートな跳ねるようなステップが多くなっていたと思う。客席から見た印象は、変化がなかなか感じとりにくく、人々が喜び溢れていることが多く印象に残ってしまった。しかしそのエネルギーにはとても感心した。

松山バレエ団『コッペリア』または『Festival de la Renaissance』 (C)エー・アイ 撮影:檜山貴司

(C)エー・アイ 撮影:檜山貴司

ただ、時にはソロヴァリエーションやしっとりとした語りかけるようなパ・ド・ドゥが見たくなることもある。『くるみ割り人形』で踊られるクララと王子の別れのパ・ド・ドゥなどは良い振付として、いつも心に残っている。
鄭一鳴が演じたコッペリウス・スピノザが重要な役どころで、愛娘を災害で失った父親像を上手く表わしていた。そして、森下洋子の踊りはまるでバレエに殉じることを願っているのではないか、とさえ思えるほど情熱的だった。
(2013年5月3日 Bunkamura オーチャードホール)

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