クラシッカルな感覚とコンポラリーのセンスが素敵なバランスをみせた、IBC主宰「Gala 2013」

ワールドレポート/東京

関口 紘一
text by Koichi Sekiguchi

Ballet Gala 2013/Iwaki Ballet Company

『チャイコフスキー・スウィート』西島千博:振付、『Wings to Fly』小尻健太:振付、『リベルタンゴ』Karina Sarkissova、『海賊』より マリウス・プティパ:振付、『眠れる森の美女』より マリウス・プティパ:振付、『Doctor Doctor!』高橋竜太:振付、『Lilly』+81 青木尚哉・柳本雅寛:振付、『Home』篠原聖一:振付、『ドン・キホーテ』より マリウス・プティパ:振付、「フィナーレ」

昨年設立し、12月には旗揚げ公演の『ジゼル』を上演したIwaki Ballet Company。今年は「Ballet Gala 2013」を企画上演した。ガラ公演らしく多彩なダンサーが集い興味深い作品が上演された。

第一部はオープニングとして西島千博が振付けた『チャイコフスキー・スウィート』。『白鳥の湖』のためにチャイコフスキーが作曲したが、実際の上演では使用されなかった曲の黒鳥のパ・ド・ドゥのアダージョ部分とディヴェルテスマンとして踊られるチャールダッシュを構成して振付けている。まず、新国立劇場バレエ団やK-Ballet Compnyで踊った柴田有紀と牧阿佐美バレヱ団時代にはローラン・プティ作品などを踊った正木亮のペアが中心となり、6組のペアが踊った。アダージョ部分は井脇幸江と西島千博が踊り、続いてコーダとなって全員が揃った。音楽が素晴らしく、クラシック・バレエらしい典雅な雰囲気が盛り上がった。ただ振付が目指すヴォリュームには曲の長さが少し不足気味だったのは残念だった。

『チャイコフスキー・スィート』井脇幸江/西島千博 撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

二曲目は小尻健太のソロで『Wings to Fly』。次はピアソラの曲に振付けた『リベルタンゴ』Karina Sarkissovaの振付。針山愛美とベルリン国立バレエ団のライナー・クレンシュテッターが踊った。タンゴをサラリと、しかしなかなか瀟洒に踊った。抑制を利かせつつ、情感をたっぷりとにじませた踊りだった。『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥを柴田有紀、淺田良和が踊り、『眠れる森の美女』を主宰の井脇幸江と新国立劇バレエ団の菅野英男が踊り、第一部を締めくくった。
第二部はビゼーの『カルメン』とマイケル・シェンカーの曲を使った高橋竜太:振付の『Doctor Doctor!』。LadyとGentlman、DoctorとNurseが登場して、有名なビゼーのオペラ『カルメン」の名曲のさわりを編成して踊った。カルメンとホセの愛に治療を施す、ということなのだろうか。テンポのいい演出、振付だった。続いて針山愛美とライナーがマラーホフ振付の『シンデレラ』一幕よりパ・ド・ドゥを踊った。マラーホフの振付は愛らしく優しい。シンデレラの奇跡を見つめる視線が感じられるような振付だった。次の『Lily』の振付は、+81、青木尚哉、柳本雅寛。強そうな身体のダンサーと小柄で弱そうなダンサー二人が、特徴を生かして様々な「芸」をみせて観客を楽しませる。大いに受けていた。ダンスの楽しみのひとつを強調してクローズアップしてみせるものだが、意外におもしろく知らず知らずのうちに入り込んでしまう。予想外の動きに意外な反応が観客を楽しませていた。

『Home』井脇幸江/菅野英男 撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

篠原聖一が新しく振付けた『Home』は ガブリエル・フォーレとクリント・マンセルの曲を使ったパ・ド・ドゥ。井脇幸江と菅野英男が踊った。冒頭は客席に二人が仲良く並んで坐っているところから始まる。そしてクラシカルなパ・ド・ドゥを踊るのだが、さすが井脇と菅野は完璧の踊り。スタイルもしっかりとして揺るぎない。大人の雰囲気が闊達で魅力的な舞台だった。
最後は『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥ。アントレとヴァリエーション付きで、米沢唯と厚地康雄が踊った。米沢唯は新国立劇場バレエ団のファースト・ソリストでビントレーも押すダンサーの一人だ。近年の上達ふりは目を見張るものがある。この日も堂々として、悠揚迫らざる踊りだった。厚地も米沢と組む時は身長のバランスもいいので余裕をみせ、二人で華やかな舞台を創った。これから楽しみな二人である。

一人のダンサーが人脈を活かして、ガラ公演を見事に立ち上げた。普段からバレエについて良く考え、他のダンサーや振付家などとの出会いを大切にして積み上げた結果だろう。ダンサーが積極的に企画を考え、振付けを試み、プロデュースして舞台を創ることは、じつに素晴らしいことである。ぜひこれからも可能な限り継続発展させていってほしい。
(2013年3月2日 新宿文化センター)

『リベルタンゴ』針山愛美/ライナー・クレンシュテッター 撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

『シンデレラ』針山愛美/ライナー・クレンシュテッター 撮影/中岡良敬(スタッフ・テス

撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

『ドン・キホーテ』より 米沢唯/厚地康雄 他IBC 撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

撮影/中岡良敬(スタッフ・テス)

お詫び
一部、表記に誤りあり修正させていただきました。ご覧いただいた皆様、関係者の皆様には大変ご迷惑をお掛けいたしました。
※修正箇所:本文「新国立劇場プリンシパル」を「新国立劇場ファーストソリスト」

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